津軽海峡は何景色?1ヶ月の旅を終え北海道へ帰る
久しぶりの仙台だったけれど、観光もせず北へ向かう。
東北は縦に長い。宮城県を出たのは昼過ぎで、そこからまだまだ北へ向かうことになる。
ちらほらと道端に雪が目立つようになってくる。
「こりゃ北海道に入ったら完全に雪道になっているな。」
岩手県は本当に長かった。さすが全国で二番目に広い県だ。
フェリー乗り場のある、青森市へは山越えルート(たしか八甲田山沿い)がある。
しかし長旅でスタッドレスタイヤが磨り減っているかもしれない。一応タイヤチェーンも用意してあるが付け方がわからない。
たぶん一人で付けるのは無理だろう。
ということで、雪が振ってそうな、山側ルートを避けて海側ルートの奥州街道(4号線)を走ることにした。
(以前は浅虫温泉で働いている女の子とアポしたっけ・・。かわいかったなあ・・。)
結局性感・・いや青函フェリーが出ている青森市に着いたのは夜の7時だった。
正直青森で一泊したかったが、
海さえ渡ってしまえば、札幌までは数時間の距離。フェリーで仮眠も取ることもできる。
やっぱり一番落ち着くのは自分の部屋だ。そして自分の布団だ。
札幌の自宅に帰ったら思いっきり眠ればいい。
青函フェリーは24時間営業。正確には2~3時間ペースに一本出航して青森~函館間を結んでいる。
「8時半の便に間に合うな・・。」
YUTAROはフェリーのりばに向かい、手続きを済ませる。
あとは車の中でフェリーの時間を待つのみ・・。
函館へ渡るべく、俺が選んだのは青函フェリー。
次第に陸が離れていく。これから4時間程度船に揺られる旅に出るのだ。
本州に渡るときや北海道に帰るときにだいたいいつも乗るのがこれ。青函フェリーである。
つーことでいつもお世話になってる青函フェリーの特徴を上げて行きたい。
青函フェリーの特徴。たまらない庶民感
乗る船には「はやぶさ」「あさかぜ」などいくつか種類がある。一番新しい「はやぶさ」以外はどれに乗ってもそれほど違いは感じない。
船内はどちらかというと少し質素で、利用者は大部屋を利用する。
青函フェリーには家族連れやツーリング目的の若いバイカー、チャリ男(冬はいないですが)、そしてトラックの運ちゃんがよく乗っている。
豪華フェリーにはない、庶民感がたまらない。
自販機ではカップ麺なんかが販売されているが、道中は退屈なのでコンビニで「芸能界の黒い噂」的な雑誌でも買っておくことを勧める。
テレビも設置されているが港から離れると基本映らないor映りが悪い。
ちなみにトラックの運ちゃんがカップ麺を「ハフハフ」言いながらすすっているのを見ると、妙に食欲が湧いてくるから不思議だ。
大部屋のカーペットでゴロゴロしながらマンガを読むのもよし。寝るのもよし。テレビを見るもよし。
しかし、人がたくさん乗っている状態だと客室内の人口密度が高くなって圧迫感があるので結構キツい。
そして、床からエンジンの振動が結構伝わって来るので腰が痛くなったり、船に弱い人は気持ち悪くなったりするかも?
料金は燃油の調整料を入れても2,000円もかからずに津軽海峡を超えて函館に行けるので非常にお得だ。
リーズナブルかつ庶民感を味わうなら間違いなく青函フェリーだ。
キレイな船がいいならダントツで津軽海峡フェリー
そして、もう一つ青函フェリーと双璧を成すのが「津軽海峡フェリー」。
ルートも青森~函館間で被っていて、運行ペースも似たようなものがある。
津軽海峡フェリーには何度か乗ったことがあるが、こちらはとにかく船がでかい!
シャワー付き個室もある。特別感がハンパねえ!
そして船内がすこぶるキレイなのである。ここらへんは青函フェリーと比べてかなりの格差がある気がする。カップ麺じゃなくワイングラスを傾けよう。
個室(シャワー付き、ベッド付きの部屋もある。)やリクライニングの席もあるなどセレブな気分を味わったり、愛する彼女にいい顔をしたいなら断然津軽海峡フェリーだ。
でもお高いんでしょう?料金は?
大部屋なら青函フェリーより数百円程度しか差がない。しかもそんなに混んでいないので息苦しくなることはほとんどない。
しかも個室やリクライニングのビューシートなどいろいろなプランが選べるのでその日のお財布事情で決めるのもアリ。サービス感や特別感は青函フェリーの比ではない。
彼女と津軽海峡フェリーに乗るなら個室を予約してみてもいいかもしれない。約3時間半二人でホテル替わりに使って盛り上がることだろう。
ということでなんか津軽海峡フェリーよりの話になってしまったが、僕はどっちも好きです。
ちなみに一番料金が高いのが電車だ!コノヤロー!JR!
どちらの船も車を載せると料金が跳ね上がります。
車をフェリーに乗せると普通車で15,000円以上の料金が発生する。
往復で利用すると30,000円以上と馬鹿にならない。
ただし、本土~北海道へ車を運んでくる手段がたぶんこれしかないので、この料金を飲むしかないのが泣ける。
北海道へ2~3日の滞在だけというのなら、車を青森に置いて、北海道はレンタカーという手がオススメ。
ということでたまにはお役立ち情報でした。
本州へ別れを告げ、北海道へ
一ヶ月間の全国出会い旅の記憶がよみがえる。あの子やこの子。こんな場所、あんな場所。
とうとう現実に戻る時がきたのだ。
出航の時間が近づいてくると、船の前にはズラッと車が並ぶ。
なんだかこの光景も懐かしい。
一台一台、船の中に吸い込まれていく。
そしてYUTAROの車も収納された。
(もうしばらくは、本州には戻れないのだな。)
窓の外から青森の夜景が見える。粉雪がちらついていた。
電波が届かなくなる前に。最後の悪あがき。
携帯のアンテナが不安定になってきた。もう少しで携帯の電波が届かなくなる・・。
船が進むに連れて、青森の町の光がほとんど見えなくなってくる。
「あーあ・・寂しいなあ~。函館に着いたら誰か遊んでくれる子いないかなあ~。」
「ん?いたよ!函館の女子が・・。」
最後の締めくくりに会ってみたら面白いかも?
携帯を開くと光速でボタンを押す。アンテナは一本。届け!届け!
フェリーが沖に出て行く。携帯の電波が届かなくなる前に、YUTAROは急いでメールを作成する。
「いま函館なんだけど今日会えますか?」
届け!届け!
「…送信しました。」
メールは電波に乗り、送信を完了した。
そして10分もたたないうちに電波のアンテナは消えうせ、圏外の文字が表示される。
最後の悪あがきで函館のスナック嬢にメール。
メールを送った相手はスナ子。
函館のスナックで働いているちょいポチャの女だ。
函館に近づくまではたとえ相手がYUTAROにメールを返したとしてもわからない。
結果はどうなることやら・・ フェリーはじわりじわりと台風のように北上していく。
その間、船内はとても退屈で、大部屋でキャーキャーと騒がしかった子供たちも、遊び疲れたのか借りてきたネコのようになる。
「うーん。」
目を閉じて無理矢理眠りにつこうした。 しかし結局眠れない。
そうこうしているうちに船内にアナウンスが流れる。
まもなく函館へ到着することを知らせ為だ。
気がつけばどうやら三時間余りが過ぎていたようだ。
こういう、フェリーの中のような海ばかりの退屈な空間では時計を頻繁に見がち。
しかし、この行動は余計に時間を意識させるだけで時間の経過を遅く感じさせてしまうのでオススメしない。
電波のアンテナが一本、二本と立っていく。
メールの返事は?
さっそくスナ子から返事が届いていないかメールセンターに問い合わせた。
果たして返事は来ているのだろうか? ・・結果はNOだった。
さすがにこの時間はスナ子にとって稼ぎ時だ。スナックでの接客が忙しくて返事をする暇がないかもしれない。
もしかするとどうでもよくて返事をする気にもならないのかもしれない。
ちょっと寂しい気持ちになりながら、急いで荷物をまとめた。
函館の夜景が遠目に見える頃、周りがいそいそと下船にそなえて動き始める。
YUTAROも車に乗りこんで目の前の扉が開くのを待った。
周りにはエンジン音が響いている。
ギギギと金属的な音が響くとゆっくりと扉が開いていく。
YUTAROの相棒も約一ヶ月ぶりに愛車のタイヤを北海道に接地させた。
小雪がパラついている、車は神経質に札幌を目指して走り出した。
YUTAROは深夜の函館市内を抜け、札幌に向けて走りだす。
函館、森、長万部、そして室蘭。
他の車のライトをほとんど見かけることもない、北海道ならではのカーブの少ない直線的な道路が続いている。
「いけない。いけない。」
気がつくとスピードが法定速度を大幅にオーバーしていた。
冬の北海道で怖いのが道路の凍結だ。
一見雪が積もっていないように見えても油断すると、道が凍っていて、「スリップ&ご臨終」ルートをたどることになりかねない。
YUTAROはアクセルを緩めてスピードを落とした。
旅の疲れが吹き出してきて、眠気もピーク。 視界がボヤける。
まだここで天に召されるわけにはいかない。
コンビニで買った缶コーヒーを流し込み、カフェインの力で無理矢理、重い瞼をこじ開ける。
それでも登別あたりまで来た時に限界に達した。 ちょっと眠ろう。
最後のアポは未遂で終わる。
北海道物産を販売している大型店舗の駐車場を拝借して仮眠を取ることにした。 車のシートを倒しエンジンをかけたまま眠りにつく。
・・ん? 遠くでなにやら音がする。
じわりじわりと夢の世界から現実に戻される。 横で携帯が鳴っていた。
「もしもし?」
「あっもしもし!私!スナ子だよー」
電話の主は函館のスナック嬢からだ。
ス「ごめんね!仕事で返事できなかった。今終わっよ。YUちゃんまた函館来たの?」
「うん。暇だったからメールしてみた。」
ス「今からなら会うの大丈夫だよー飲もうよー!」
まじか・・もう登別まで来てしまった。急いで函館に戻っても二時間以上はかかるだろう。
「ごめん、もう登別まできちゃった。また会いにいくよー。」
ス「えー!なんだよ。今からもどって来いよ。」
「さすがに無理だわ、朝になっちゃう。」
「明日休みだから、別にいいよ♡」
なんと強引な女だろうか?空気を読みなはれ。
「また、遊びに行くから勘弁してくれー。いま戻ったら事故るわ。」
普段なら100キロ以上の距離を戻る情熱も体力もあるが、一か月全国を回った後だ。
いまは札幌の自宅に一刻も早く戻りたい。そして眠りたい。
ス「わかった。また飲もうね。運転気をつけてね。バイバイ。」
「バイバイ。」
スナ子よ。ありがとう!またな!
そこから苫小牧を経由して、二時間ほど走ると、第二の故郷、札幌に到着。
周りはうっすらと明るくなってきている。
北海道の朝は早い。 長時間、何もない道を走ってきたので、高層ビル群がそびえ立つ札幌の街はとても都会的にうつった。
「久しぶりだ。またお世話になります。」
マンションの駐車場に愛車をとめると、トランクからボロボロになったキャリーケースを引っ張りだす。
「今までご苦労様」と俺は愛車の屋根を叩いた。
「・・なんか入り辛いな。」
部屋までの足取りは重い。まだ大阪子はいるだろうか?
鍵を開けてドアノブを回した。重い扉が開く。そこには真っ暗な世界が広がっていた。