お腹いっぱいだけど食い忘れがあるの。
博多の水炊きでお腹は一杯だ。
普段ならこのままもう少しハシゴをしてアルコールを体内に入れるところだ。
お互いの判断能力を少しでも麻痺させるために。
しかし、俺には前回「いいところ」まで行ったという結果から奢っていた。
「家に行ってもいい? 2次会はカス美の家でw」
俺は下心丸出しのセリフを吐いた。
「・・・・・」
カス「・・・・」
少しの沈黙の時間が訪れる。俺は半笑いの表情で彼女の目を見つめていた。
カ「うーん。今日はダメ・・。散らかってるし。」
いやあ全然構いませんよ・・。
食い下がろうと思ったが、カス美はしつこい男は嫌いかもしれない。
見た目が少しキツいので怒られたらたぶん泣く。
「そ、そうやね。急には無理だよね・・。どうしよっか。」
再び束の間の沈黙。
「じゃあ・・俺んちに来る?ちょっと距離あるけど。」
口に出してから考える。
(自分の部屋はキレイにしていたか?女物のシャツとか化粧品とか置いてなかったっけ・・?)
同じミスを何度も犯すのが男(俺)。
カ「今日のYUちゃんからは下心を感じますよw」
「は・・はは・・いつもどんなだったっけ?」
カ「・・・うーん。そういえばいつも下心出してたねw」
「いやいや・・女の子全員に下心あるわけじゃないから・・。」
カ「うーん。そこら辺はわかんないけどwじゃあ・・帰りのタクシー代出して下さいねw」
「それは全然構わないけど・・泊まっていかないの?」
カ「いやー・・それはさすがに。明日仕事早いし。お泊りの準備もしてないし。」
脈があるのか無いのか・・脳が混乱をきたす。
ただ、目の前にご馳走がぶら下がっていることは確かだった。
「よし!決まり!とりあえずコンビニでお酒でも買っていこうか。」
俺は目に入ったセブンイレブンを指差しながら言った。
カ「あっ・・ごめん。YUちゃんそこのコンビニで買い物して待っててくれません?」
「え・・?なんで?」
カ「ネコにご飯あげなきゃ。」
「あ・・そうね。じゃあコンビニで待ってるわ。」
カ「うん。ちょっと家に戻りますね。」
そういうと彼女は愛猫に会いに消えていった。
「・・こりゃ愛猫に嫌われないようにしないとマズいな。」
コンビニ前でタバコを更かし思う。
遅い・・。彼女が去ってから30分が経っていた。
酒とつまみが入ったコンビニ袋を左腕にぶら下げてながら、
雑誌コーナーで週刊誌を読み漁っていたので腕がしびれて来た。
「おいおい・・なんかあったんかい。」
痺れを切らして携帯を手に取る。そして電話をかけた。
プルルルプルルル。
コールが鳴る。プッ・・
カ「もしもし?」
「あっもしもし?大丈夫?なんかあった?」
カ「ごめん。○○(ネコの名前)にご飯あげてから準備してた。すぐ行くね。」
??・・なんの準備や??
さらに10分ほどするとコンビニの入店音が鳴った。
彼女を待っている間に何度も何度も聞いては入り口を確認したせいかウンザリしてくる。
でも・・今回は違った。
カ「ごめんなさい!お待たせしました!」
そう言って笑顔で近づいてくる彼女の眉毛が、消しゴムで消したようになっている。
Tシャツに、下はアディダスのジャージ。
カス美はさっきまでの「よそ行きの姿」から完全に変貌を遂げていた。
(そこはもう少し・・待ってくれよ。)
散々に待った俺は、頭の中でそうつぶやいた。