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仏の顔

デート中に3回トイレでウンコしたら、帰れと言われ拒否された話【かご子②】

仏の顔
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宮崎のシングルマザーと熱い一夜を過ごし、次に向かうは鹿児島市。俺は「一期一会」の醍醐味をかみしめながら、野をこえ山をこえる。しかし、都城を過ぎたあたりで、体の異変に気が付いた。鹿児島市で出会い系アポ。どうも腹の調子が悪い[…]

BENI(安良城紅)の似顔絵

「‥あ、漏らす。」ボクの肛門に限界がきた

爆発

(あ、もうダメだ‥漏らすわコレ。)

限界はあっさりやってきた。もうこの波を抑えることはできそうにない。

 

「…ごめん。やっぱトイレ行ってくる。」

俺は彼女にそう言い残して、タカプラのトイレに猛ダッシュした。

運よく一番手前の個室が開いている。

俺は便座に腰掛けると、ありったけの元気玉をぶちまけた。

マヨネーズを勢いよくひり出したような、間の抜けた音が個室に響く。

どこかから「ブッ」と合いの手が入った。

 

「ハァ…お待たせしました。」

かご「大丈夫?なんか顔色悪いよ?」

「オレさ…お腹弱いんだ…。」

ウンコは漏らさなかったが、うっかり本音を漏らしてしまう。設定はオシッコだっただろうが。

 

かご「ぶふっ!あはは!知ってたよ!大きいほうだって。」

どうやら笑いのツボに入ったらしく、彼女はお腹に手を当てて、肩を震わせている。

(…まんざらでもねぇ。)

たとえ笑われても、俺は嬉しかった。彼女の素顔を見れた気がして嬉しかったんだ。

あだ名が「山根くん」になった

山根君

かご「山根…山根ッ!あはは!ヒーヒー!」

「…いやオレ、山根じゃないよ?」

かご「ちび〇る子ちゃんの山根くんみたい。顔が…。」

「え?顔?キャラじゃなくて?」

かご「めっちゃ深刻な表情してた。それがたまらなく山根だったの。」

「そりゃ…漏らすわけにはいかないもん。」

かご「わたし、山根くんのこと一生忘れないと思う。」

「それ…別れの言葉みたいやん。」

かご「からかってごめんね。一緒に大笑いしたらお腹減っちゃったね。ドンマイ!」

(いや、笑ってたのはキミだけだよ。)

 

こうして、俺のあだ名は「山根くん」になった。

一回目のウンコは俺たちの距離をちょっとだけ縮めてくれたのだ。

ようやく俺たちは打ち解ける

俺たちは「とんかつの丸一」で少し遅めのランチを食べて、カフェで食後のコーヒーを飲みながら会話を楽しんでいた。

 

かご「なんで、トンカツ食べちゃったんだろ…ダイエット中なのに。」

「ダイエットなんてする必要ある?痩せて見えるけど?」

かご「去年買ったコートがキツくって…。」

彼女は二の腕を触りながら言った。どう見ても細いじゃないの。

 

かご「でもね。男の人はぽっちゃり体型がいいの。」

「へぇ~意外。てっきり細マッチョが良いと思った。ちなみに理由は?」

かご「頼もしいし安心感があるもん。西郷(せご)どんみたいな体型が好きなの。」

ここで鹿児島の偉人が出てくるとは…。

西郷隆盛と大久保利通

「でもさ、大久保利通のほうがオシャレじゃない?」

かご「大久保はダメ。鹿児島で嫌われてるし。」

「そ、そうなの?立派な人だと思うけどなぁ。」

かご「鹿児島のおじさんにそれ言うと、すっごい嫌な顔されるよ。」

(大久保さんに…何があった?)

とにかく彼女のタイプは「西郷隆盛」で「大久保利通」は嫌いらしい。

 

喫茶店を出ると午後5時前。日もずいぶん傾いている。

かご「ねぇ、ちょっと歩かない?」

ウォーキングがてら、二人で鹿児島中央駅まで歩くことにした。

 

「よ~し!駅まで競争だ。手をつなごう!」

かご「も~!それじゃ競争にならないでしょ~(茶番)」

こうしてようやく俺たちは打ち解けることができた。

一時はどうなるかと思ったが、着実に一歩前進している。

 

(調子が戻ってきた!戦いは始まったばかりだ!)

俺はその柔らかい手を握ると、ゆっくりと歩き出した。

ボクの好意と2度目の便意

天文館から鹿児島中央駅までは歩いて30分程度の距離である。

俺たちは市電の線路と並行するように歩いている。

ゆっくり進んでいく市電を夕日が照らしていて、なかなか絵になる光景だ。

 

かご「ふふふ、ウォーキングにはちょうど良いね。」

耳をくすぐる鹿児島なまり。甘い香水の匂い。

(ずっと一緒に歩いていたい…もっと遠くてもいいのに…。目的地なんて無くなっちゃえ♡)

 

俺はかご子の事を好きになりはじめていた。次に移住するのは…鹿児島かもしれない。

 

ズギュルルルルルルルッ!

(は、はぐうッ!まさかこれは!)

 

うわつく俺に、神は試練を与えたもうた。再びヤツ(便意)が暴走を始めたのだ。

 

かご「ねえ、YU君…なんか歩くの早くない?」

「え?そう?ごめんね。」

かご「YU君?まだ信号赤だって!危ないよ!」

便意に対する恐怖によって、無意識のうちに早足になっている。

 

(目的地は‥まだか?)

好意と便意。勝るのは圧倒的に「便意」だった。

もう彼女に構っている余裕などない。

男のプライドとトイレの条件

俺はいまウンコと戦っている。外肛門括約筋を引き締めて。

少し先にアミュプラザの観覧車(アミュラン)が見える。目的地まであと…500メートルくらいか。

 

(…神様、もう少しだけ。)

 

今、トイレに駆け込めば、このラブラブな雰囲気も台無しになってしまう。

俺は「2回もウンコをした男」のレッテルを貼られ、「恋愛対象外」という名の墓場へ行くことになる。

 

『なにか用事をよそおって、こっそりトイレに行く。』

パニックになった頭では、こんな作戦しか思いつかない。

 

歩道沿いに、セブンイレブンとローソンが見えてくる。

(あのコンビニで用を足すか?…いやダメだ。絶対ウンコしたってバレるもん。)

俺は妥協を許さない。そもそも何と戦っているんだろう。

 

ブギュルルルルルルルッ!

 

腹が鳴るペースが早くなってきている。もう時間がない。

目の前の信号が赤になり、目の前は真っ白になった。

「もう我慢できない!」妥協のコンビニ

ヤツが来る

(もう我慢できない!や、ヤツが来るぅ!)

 

かご「急に無口になったけど…どうかした?」

ようやく彼女は俺の異変に気が付いたらしい。

 

「ちょ…ちょっとコンビニ寄っていいかな?」

かご「もしかして…またお腹痛くなっちゃった?じゃあ、ここで待ってる。」

彼女は苦笑いを浮かべていたが、思ったよりもアッサリしていた。

 

(な~んだ。さっさと行っとけば良かった。)

俺は彼女の白い手を振りほどき、セブンにむかって走った。

 

「す、すいましぇん!トイレ貸してください!」

許可が出る前に、早足でトイレへ向かう。

店員「どうぞー!」

背中から明るい希望の声がする。

絶望の赤

使用中トイレ

ガチャガチャ!…あれ?ドアが開かな…

(あ、赤だ!?使用中の赤だぁ!)

…そこにあるのは絶望の赤色だった。\(^o^)/オワタ

でも俺はトイレのドアをノックできない。小心者のジェントルメンだから。

窓の向こうで、かご子が爆笑している。きっと、俺の行動を見ていたのだろう。

 

(意地を張ったばっかりに、最悪の事態になっちまった。)

(地獄の扉か?トイレのドアか?先に開くのはどっちだ。)

 

もって、あと数分…早ければ30秒。もうすぐ俺は人間としての尊厳を失う。

諦めかけたその時、

 

ガチャリ…。

 

トイレから音がしたのを、俺は聞き逃さなかった。

 

(その便器は俺のもんだ!どけえええ!)

手洗い場では前任者がまだ手を洗っていたが、お構いなしにトイレに飛び込む。

そしてパンツを下すと同時に、猛烈な勢いで下痢が吹き出した。

…ようやく終わった。全てカタはついたのだ。

彼女の態度に異変

「…お待たせ。行こっか…。」

俺はかご子に右手を差し出した。

かご「…今はいいや。寒いし。」

彼女は差し出された俺の手を、ジッとみつめながら答える。

「おめぇ、手洗ってねえだろ?」と言われているみたいだ。

 

(やっぱ二回目のウンコはアカンかったか~。)

 

俺はめでたく「山根くん」⇨「恋愛対象外の汚物」に昇格したわけである。

三度目のトイレで「もう帰れ」

ようやく鹿児島中央駅に到着。思っていたよりキレイな駅だ。

 

「ねぇ、この後どうする?」

かご「うーん。午後8時までなら大丈夫だけど…。」

「え…もう帰る系?」

かご「きのう帰りが遅かったから、今日は早く帰らないと怒られる。」

(帰りたいんだね。めっちゃ伝わる~。)

 

「それじゃ…ちょっと飲み行く?この辺りは交通の便も良いし。」

もう酒の力に頼るしかない。せめて少しでも名誉を回復しなければ。

 

かご「ごめん。わたし車で来ちゃった…。」

「じゃあさ、かご子の車でドライブしようぜ。(絶対、車で来てねえだろ。)」

俺はカマをかけてみた。

 

かご「う~ん。どうしよ…っかな。」

「ダメ…?」

かご「わかったよ。城山公園に夜景見にいく?」

(…ホントに車で来てた。疑ってごめんなさい。)

かご「見たら帰るけど。」

デートの時間が短くなっただけだった。

 

「じゃ、ちょっとトイレ行ってくるわ。ここで待ってて。」

かご「え!またなの~?」

3度目の波はさざ波程度のかわいいヤツだ。

俺はもう、デート中にトイレに行くことを「恥ずかしい」と思わなくなっていた。

美人は3日で飽きる…トイレは3回で慣れるのである。

 

かご「そんなにお腹の調子悪いなら帰りなよ。」

その一言には、彼女の本心がギュっと濃縮されている。

夜景を見ても挽回できない

市電に乗って、再び天文館へ。

かご子の車が停っている駐車場に向かう。

 

かご子「あれが私の車。」

駐車場代をおごってもらいながら、彼女は指をさした。

「あれって…チェイサー?渋い車乗ってんね。セダン好きなの?」

かご「あはは、あの車はお父さんのお下がり。」

 

父から娘へと受け継がれし「チェイサー」に乗って、いざ城山公園へ。

これでしばらく二人だけの空間だ。

かご「着いたよ~。」

「着くの早すぎだろ!」

 

城山公園展望台

城山公園の展望台は、鹿児島市街が一望できる人気スポット。

昼は桜島の雄大な姿、夜は鹿児島市街の夜景を楽しむことができる。

天文館からも近いので、思いつきで行けてしまう…ぐぬぬ。

 

「うおおおぉ!夜景だ!(小並感)」

かご「うん。綺麗だね。」

「キミのほうが綺麗やで!」

かご「…はあ?うるせえぞ。」

オレにはもう挽回できる可能性すらなかったようだ。

そして城山展望台の夜景は思ったよりも普通だった。

 

かご「じゃあ、ここでバイバイね。」

かご子はザビエル公園まで送ってくれた。

 

「…今日はありがとう。楽しかった。」

かご「今度は飲みに行こうね!」

(女神様…まだ…可能性をくれるのかい?)

 

走り去っていくチェイサーに手を振る。爽やかな風が吹いている。

なんか拒否されたみたい

有料駐車場に停めてあるボクの愛車。今日の寝床はここだ(泣)

俺は荷台に乗り込み、薄っぺらい寝袋の中へ入った。

冷たい手でポケットから携帯を取り出し、かご子にメッセージを送る。

そのメールに感謝と好意をのせて。

 

…だけど返事は一度もこなかった。どうやら拒否されてしまったようだ。

(あちゃ~フられちゃった。)

反省はしないけど、下痢止めは飲む。

さて、今回の話を振り返ろう。

  • 一回目のウンコで仲良くなれた。
  • 二回目で手をつないでくれなくなった。
  • 三回目で帰れと言われ、メール拒否される。

(…思い返せばヤバい。)

もちろん原因は他にもあるかもしれない。

だけど今は反省はしない。

俺は今「原因不明のモテキ」に入っている。(と思い込んでる)

成功と失敗は俺の精神状態で大きく左右される。

ノっている時に、下手に反省するとテンションが下がってしまう。

 

(…これからはちゃんと下痢止めを飲もう。)

そう誓う寒い夜だった。

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