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嘘、虚言

ウチの彼女、尋常じゃなく虚言癖があるんですう~

嘘、虚言

彼女が俺に伝えていたことはほとんど嘘だった!

母「ウチにはもうずいぶん帰ってきていません。」

大阪子の母親は確かにそう言った。

「え?本当・・ですか?」

母「はい、もう8年ほど・・。」

「だって・・」

俺は彼女の母親に何か言おうとしたが、全く言葉が出てこない。きっと「パニックの境地」に達していたのだと思う。

「そうですか・・ではよろしくお願いします。」

俺はよくわからないまま一方的に電話を切った。そして、ヘタリと床に崩れ落ちた。

狐につままれた感覚とはこういうことを言うのだろう。大阪子はたしかに実家へ帰ったと言っていた。

縁側での日向ぼっこは?妹との会話の内容は?家族みんなでの食事は?

彼女が実家に帰っているという間、メールや電話で聞いていた内容はなんだったというのか?・・嘘にしては出来すぎている。

そして、大阪子の母親には妊娠、結婚についてはおろか、「YUTAROの存在」すら伝わっていないかったのだ。

結局、伝わっていたのは札幌に住んでいるということだけ・・。

嘘つきだとは思っていたものの、「可愛いレベル」とタカをくくっていた。

大阪子はとてつもない、虚言癖の持ち主だったのだ。

 

「あ・・ア~アア・・」

 

知らぬうちに部屋の片隅で奇声を上げている。そしてなぜか漫画のワンピースを手にとって読んでいた。

人間とは「錯乱」するとおかしな行動に出るらしい。

とにかく俺は、自分の記憶が信用できなくなっていた。

彼女との恋愛、同棲、そして妊娠・・・。

もしかして彼女自体「存在していない」気すらしていた。もしかすると全ては自分の妄想なのかもしれない。彼女の母親と電話で話したことすら本当なのかどうか・・。

 

わからない、わからない・・ワカラナイ。

 

入院する一歩手前の精神状態だったのだと思う。

パンクした頭が少しだけ活動を開始した頃。気がつけば夜になっていた。ずいぶんの間、放心状態だったようだ。

「ONEPIECE」が5つほど机の上に積み重なっている。

 

携帯が点滅している。

「大阪子からか?」

と思ったがメール送信主は実家のオカンだった。

 

オカン「もう引越しは落ち着いた?良かったら明日大阪子ちゃんとご飯食べにおいで、引越し祝いにお寿司取るから。」

そのメールを見た瞬間、堰を切ったように、涙が溢れ出た。そして「それは」しばらくの間流れ続けた。

俺は、確信した。

「大阪子は存在したのだと。」

俺の記憶の糸を辿るため、この六ヶ月間を一つずつ確認していく。

 

1月「大阪子と別れ、ハピメで知り合ったタヌキ女と付き合い始める。」

2月~3月「タヌキ女可愛くてすごくいい子、俺幸せ」

3月下旬「突如大阪子に妊娠が発覚、あなたの子よ!」

3月下旬「俺、責任を取るためタヌキ女と別れ大阪子との結婚を決意、札幌から名古屋に帰ることに」

4月下旬「大阪子を連れて名古屋に帰省、ウチの親に挨拶。ついでに大阪子は大阪の実家に帰る」

4月下旬~5月中旬「大阪子実家から帰ってこない。(後に実家には帰っていないことが発覚)」

5月下旬「俺、とりあえず名古屋へ引越し、大事をとって大阪子は引越しが終わってから名古屋入り」

いまここ⇒「大阪子名古屋に向かう便には乗っておらず、音信不通、行方不明に・・彼女の母親に電話をしたところ嘘が発覚しまくる・・。」

 

自分への記憶をたどる作業と共に、次の感情がふつふつ沸いてくる。

それは彼女の虚言や嘘に対する「怒り」である。

 

続く➡「絶望」よりも「怒り」という感情のほうがよっぽどいい