ひさかたぶりに「恋人」と過ごすクリスマスイブ
今日はクリスマスイブ、サイレントナイトでホーリーナイトである。
週末のクリスマスイブということで、街はいつも以上に賑わっており、静かな夜とは程遠い。
衛「ねえねえ今日は直接レストランで待ち合わせしようよ。」
彼女からのお願いメールが届く。
今回めでたくダメ男の彼女になってしまった衛生女。
クリスマスはいつもと違う感じで会いたいということだろうか?可愛いこと言うじゃない。
「そろそろ家を出ていい頃かな・・。」
俺は彼女に渡す、プレゼントの入ったバッグを持って家を出た。
バスは混みあっている。混んでいる場所は苦手だ。
予約している店まで歩いて向かうことにした。
寒空の中てくてくと歩いて行く。
道中腕を組んだり、手をつないで歩くカップル達とすれ違う。
今日ばかりは人目を気にしなくていいとばかりにくっついて歩くカップル達を見て、俺は思う。
(邪魔だ・・。ぶっ○ろしてやりてえ・・。)
福岡の道は狭く、カップル達には優しくない。
「ヤバい・・思った以上に遠いな・・間に合うかな?」
30分ほど歩いて、予約した店に到着。
訪れた店は「パセット」という渡辺通にあるイタリアンレストラン。
本当は居酒屋が良かったのだが、「あほか」とさすがに却下された。
クリスマスなんぞ間違いなく混んでいる大名や天神界隈は避けて、少し隠れ家チックな地味目の店をチョイスした。
乱れた呼吸を整え、扉を開ける。
やはりクリスマスイブということもあってか、店内は満席状態。
予約者名を告げると席に案内される。
「お子様連れテーブル」の隣の席で衛生女は一人ポツンと座っていたが、俺を見つけると笑顔で微笑んだ。
「お待たせ~今日はおめかししちゃって!ええやん!」
彼女はいつもなら絶対着ないようなお姉系のファッション。
もともと綺麗な顔立ちをしているのでお姉系の服装な似合う。
衛「ホント?似合う?」
「うん!いい!いつもそういう服だと嬉しいわ。」
衛「YUちゃんも・・ジャケット・・。」
「似合う?」
衛「なんか・・それ昔の漫才師みたいwブフォ!」
「まじか・・芸人か・・。」
俺はZOZOTOWNを恨んだ。
芸人風のジャケットすらかっこよく着こなして、カートに入れさせてしまうモデルさんを恨んだ。
気を取り直して、飲めないシャンパンで乾杯。
コース料理が運ばれてくる。
なんちゃらのパテとか、なんちゃらのポアレ、なんちゃらのローストとか・・。
(美味いけど、箸で食いてえ。)
それでも恋人と呼べる相手と過ごすクリスマスは久しぶり。
付き合ったばかりの一番いい時期に訪れたものだから、お互いテンションが高い。
いつもは声の小さい彼女も今日は少し「張っている」感がある。
デザートが運ばれてくることに俺は鞄をガサゴソとやり始めた。
もともと鞄なんてほとんど持ち歩かないせいで、中に「プレゼント」が入っているのが丸わかりだ。
鞄を漁っている間、照れくささからにやけ笑顔がこぼれる。
「ほら・・これ・・プレゼント。」
そう言って不器用に手渡す。
彼女から満面の笑みがこぼれる。
日頃不愛想な表情をしているから、その差が激しい。
衛生女「実は私も・・用意してあるの。」
そう言って彼女はプレゼントを取り出し、俺に手渡した。
俺が渡したプレゼントに比べて、彼女の渡した袋は何倍も大きかった。
(んん?大きい割りには軽い・・。)
「開けてもいい?」
衛「うん・・一緒に開けよう。」
そして二人はガサゴソとやり始めた。
となりのテーブルに座っているファミリーの視線が気になる。