涙を流した後はアルコールを飲むだべ
博多駅の筑紫口に到着すると、すぐに苺女を見つけることができた。
カジュアルな装いだが、女の子ぽくてセンスが良い。
服装にあまり興味がない衛生女とは大きな差を感じる。
「おまた!」
俺はそう言って彼女に近づく。
苺女の顔を間近で見ると、この前より目の当たりが少し腫れぼったくなっているのがわかる。
(もしかして・・泣いたのかな?)
今日は何やら濃い話しが聞けそうだ。
苺「ありがとうございます・・。なんか無理言って来てもらって。」
「いやいやちょうどお腹も減ってたし、誘ってもらって良かったよ。」
他愛もない話しでジャブを入れつつ、ホテルブロッサムの地下にある「赤坂うまや」という居酒屋へ。
以前にアポでも使ったなかなか小綺麗なお店である。
「よしジャンジャン飲みなはれ!てか明日は休み?」
苺「休みじゃないですけど、遅番で12時出勤なんで飲めます!」
「おし!その意気や!」
(これは・・チューハイからのアルコール度数高い系お酒コースやな・・。しめしめ。)
本来のゲスなボクチンがチラリと顔を出す。
「てか突然飲みたいってことはなんかあったの?」
俺が切り出したのはお互い2杯目になって、焼き鳥を何本か腹の中へ入れた頃だった。
苺「それがですね・・。私、彼氏と別れちゃったっぽい。」
彼女がふっとため息混じりで言った。
「ほほお・・。そうなんだ。」
俺は神妙な顔でそう答えたが、内心では「でかした!」と今にも笑顔がこぼれそうだった。
「でもなんでそうなったの?ケンカでもした?」
苺「・・はい。この前彼氏の家でご飯作ったんですけどそれが原因でケンカになっちゃって。」
「あらら・・なぜに?」
苺「ハンバーグ作ったんですけど焦がして失敗しちゃったんです。それで食えるか!ってグチグチ怒られて・・。」
彼女が目に涙を浮かべながら語る。
「せっかく作ったのにそれは酷いねえ・・。ちょっと焦げたくらい全然イケるのに・・。むしろ彼女にご飯作ってもらうとか感謝感激雨あられ(昭和)ですわ。」
料理の出来、不出来で彼女を選んだことのある俺が通ります。
苺「失敗なんていつもするわけじゃないし、怒られる筋合いない・・。奥さんでも無いのに・・奥さんでも嫌だけど。」
「なんも悪くないのにね。怒られても今まで我慢してきたんだね。」
ここで優しい言葉カケーノ。
苺女泣き出シーノ。
「ほれほれこれで涙を拭きーの。」
俺はそっとおしぼりを差し出す。それには焼き鳥のタレが若干付着していたことは秘密である。
苺「ありがと。ごめんなさい。」
「彼氏更年期なのかもね~ほら年取るとイライラしやすくなるって言うじゃん。あっ!すいません熱燗2合ください。」
この熱燗が彼女に火をつけることになる。
苺「なんか最近ストレスのはけ口にされてるかも?って感じちゃって・・。」
「きっと彼氏は対等だと思って無いんじゃない?下に見られてるとか?」
苺「それはすごい感じる。すごい上から目線でもの言うし。」
「あらら・・。んで別れちゃったっぽいってどういうこと?」
苺「私も限界来ちゃってその日そのまま帰っちゃったの。それからもうやってけないってメール送ったの。」
「ほう・・。んでその後に彼氏から連絡来なかったん?」
苺「来まくりだけど無視してますw」
ここでようやく日本酒が到着する。
「まあまあとりあえず一献。」
苺「私、日本酒はちょっと・・。味が苦手で・・。」
「ええからええから。一杯だけ。」
そう言って徳利に熱いのを注ぐ。そして乾杯。
苺「ンファー!お酒だああ!でもちょっと美味しいかも・・。」
「ストレス為の込んだアナタの体がアルコールを欲してるんやで!」
彼女が熱燗を数杯飲み干し、少しだけ大人の階段を登った頃・・異変は起こるのだった。