物件を見たあとは美味い飯を食いながら筑紫女のプレゼンだ。
不動産屋のAさんの福岡物件紹介が終わった。
二人は薬院駅で車を降りる。
「今日は急なところ本当にありがとうございました。」
A「いえいえこちらこそありがとうございます。今日見た中で気に入った物件がありましたらご連絡ください。」
「はい・・。その時はよろしくお願いします。」
俺はAさんがプリントアウトしてくれた、物件の詳細を折りたたんでポケットにしまった。
A「じゃあ筑紫女ちゃんまたね!」
筑紫女と二人でAさんを見送る。とても親切でいい人だったなあ・・。
「福岡に住む・・か。」
まだ札幌から名古屋の天白に来て1年も経っていない。それでまた福岡に移動するとなるとかなりハードルが高いことだ。
俺は少し困った表情をしていたと思う。
筑「YUさんお腹空きましたね~ご飯食べましょうよ~♪」
「おお!そうだね!今日はいろいろ良くしてもらったから奢るわ!」
筑「ほんとにぃ!私、気になってるお店があるんです~!」
「あの・・あんまり高いお店は・・。」
筑紫女はグルメサイトを開き、店までの道筋を確認すると「さて行きましょ!」と言った。
薬院駅から歩くこと10分。
「なんかどんどん暗いとこ入って行くんだけど・・。」
筑「ここら辺なんですけどねえ~・・。あっ!ありました!」
渡辺通沿いのガソリンスタンドの裏側にあるお店。地区的に言えばここは清川だ。
福岡の美味しい店牛タン串の「たんか」
店の名前は「たんか」という。店構え的にも場所的にも「隠れ家」的。
筑「ここ、美味しい牛タンが食べられるらしいんですよ~♪最近話題で!前から行きたかったんです。」
扉を開けると、まだ早い時間にもかかわらず、店内は賑わっていた。
店員さんにテーブル席に案内される。
「とりあえず生二つで。」
そして乾杯。タン串、サガリ串、餃子を頼む。
筑「YUさん栄養偏りすぎですよ!野菜も食べないと!あとシーザーサラダください!」
おお・・確かに野菜とかあんまり食ってねえや。
サラダを食っていると、店の名前にもなっている牛タン串が届く。分厚くカットされたそいつを一口パクリ。
「なんこれ?何これえ!うま!柔らかあああ!」
筑「ほんと!こんなに美味しいタン初めてええ!」
熟成されたタンはとてつもなく柔らかく、肉のうまみとジューシーさが半端ない。仙台で食ったタン焼きとは全くの別物(あれはあれで美味いけどアゴやられる)。
福岡にお越しになった是非「たんか」に行ってみてね。(お酒もかなり安いです。ビール390円、焼酎400円)
「グビグビ!パクパク・・!ああ幸せ・・今日は本当にありがと!」
筑「早く福岡に来てくださいね~♪待ってるから」
俺はポケットにしまっていた物件情報のコピーを取り出した。
「福岡か・・確かにそれもいいかもね・・でも現実問題なかなか難しいよね。」
以前半年間だけ住んでいた時の反省がある。恋愛に振り回されてはいけない。
筑「そうですよね~・・でもこの高砂(薬院)の物件はいいと思いますよ~駅近いし、部屋もキレイだったし、お風呂はちょっと狭くて古かったけど。」
・・俺の話聞いてる?
筑「でも薬院に住んだらいろんな女の子とか連れ込んじゃうんだろうな~」
「ピク・・そんなことないよ。」
筑「福岡の女の子は彼氏の浮気とかそういうのたんぱくっていうか・・諦めてるっていうか・・遊び人でお酒好きが多いから・・」
「ピクピク・・?俺は一途な日本男児だぜ?」
まさか・・福岡に来ればこんな俺でもモテるのかい?なんと魅力的なプレゼンだ。
筑「男の友達もできやすい環境だし、すっごい楽しいと思いますよ~」
以前住んだ時は、あんまり家から出なかったしなあ・・。九州男子はどこか話しづらい寡黙なイメージ持ってたし・・。
「ふむ・・この物件いいかも。なにより間取りが抜群にいい。」
筑「あはは・・単純。その物件1Kじゃないですか。」
チュッチュしながら筑紫女とサヨナラ
「もう10時かあ・・早いね。明日は仕事?」
筑「うん、明日は普通に仕事です。」
「じゃあ今日はもう一緒にいれないね。」
筑「うん。着替えも持ってきてないし。」
たんかから、薬院駅までの道のりは暗い道を選ぶ。
二人は時折立ち止まりその都度キスをした。道が暗いって危ない。でも素敵。
牛タンを食ったその口で舌と舌を絡ませる。普通なら駅まで10分程度の道のりも30分もかかってしまった。
筑「YUさん口にグロスがついてる。はい!これで大丈夫。」
ティッシュで口を拭ってくれる筑紫女。
筑「じゃあまたね!引っ越し手伝うんで(笑)」
「うん・・気を付けてね。」
そして振り返って薬院駅の階段を上っていく。
俺はずっとそのお尻を眺めていた。ついでに他の女の尻も。ありがとうよ筑紫女。
そして俺はもう一人会わなければならない女性がいる。