全身黒ずくめの女、『アラ女』と合流をした。そして春吉の焼き鳥屋へと入る。LINEでやり取りしていた頃の『そっけなさ』はどこへやら。意外にもよく喋る明るい女性だ。
ハスキー声だが、顔もまあまあの美人だ。ただし化粧が濃いめで、彼女の『黒』をより強調していた。
(ふう・・全身黒で来た時は絶対に陰キャだと思ったぜ・・。)
俺はほっと胸を撫で下ろした。
↓前回の話↓
「んごー!暑い!蒸し暑いいい!」7月も後半に差し掛かり、梅雨明けした福岡には、夏が訪れた。福岡に移住して来て、二回目の夏だ。エアコンも古くなったせいか調子が悪く、部屋の中がほとんど冷えない。死んだ毛根が汗腺に変わったのか、頭[…]
年齢を偽るサバ読み女
「そう言えば28歳なんだよね?落ち着いてるって言われない?」
20代のわりに彼女の立ち居振る舞いは落ち着いてみえる。
アラ「よく言われます。見た目よりも年上に見られますね。顔が濃いのと、しゃがれ声なんで。」
「仕事は医療系なんだっけ?仕事でも黒のスーツなの?」
アラ「そうなんですよ~。」
アラ女は思ったよりも良い子で、黒い部分など微塵も感じない。サラダなども取り分けてくれるよく気が利く子だった。
嘘のつきあいバトル
「彼氏とかどのくらいいないんだっけ?」
アラ「もう三年ですかねえ・・。」
「じゃあ25歳から?勿体無いねえ・・。」
アラ「なかなか出会いがなくて。このまま年取ってくと思うと嫌んなっちゃう。」
「美人さんなんだから、すぐにできると思うよ。」
アラ「ですかねえ?でも三年もいないから自信ないなあ。YUTAROさんはなんか落ち着いてますよね?」
「俺が?初めて言われたわ!いつもテンション無駄に高いって(彼女に)言われるし。」
アラ「なんかガツガツしてないっていうか?出会い系の男の人ってガツガツしてるじゃないですか?」
「ふーんそうなんだ。サイトでは男性同士でやりとりすること無いからなあ。」
アラ「すぐに会おうとか、金銭提示してきたりとか・・そんな内容ばっかりで。」
「それはキモいね。だからメールも短文気味だったのかな?」
アラ「文字のやりとりが苦手なんです。サイトだとメールも大量にくるから返すのが億劫になってきて。」
「それは聞く。女の子っていっぱいアプローチされるんでしょ?選び放題じゃん。まあ変なメッセージばっかり来るとウンザリするよね。」
アラ「そうなんです。YUTAROさんは彼女いないんですか?」
「・・い、いないっす。」
アラ「本当に?」
「・・ホントっす。」
今、思い返せばこの会話も「嘘のつきあい」だったのだ。
ほろ酔いになりながら、2次会は近場のたこ焼きバーに行く。店内はキレイとは言い難いが、気軽に立ち寄れるお店だ。もちろんたこ焼きが食える。
「ハイボールとたこ焼き一つ!」上機嫌な俺は饒舌モードになる。このモードに入ると、口説ける率がちょっとだけ上がる。
「ほらたんとお食べ!たんとお飲み!」
アラ「ありがと!グビッ!」
彼女もこの頃にはタメ語になってきている。
アラ「でも明日も仕事なんでそろそろ帰らなきゃ・・。」
確かにもうそろそろ0時になろうとしている。
「マジかあ・・!じゃあ次回また飲もうよ!いつが暇っす?」
アラ「そうだなあ・・なら今週の金曜日は?」
ほほう・・今週と来たか・・こりゃ脈アリだな。そんな感じで次回の予定も立った。次回でキメますとも。
アラ「YUTAROさん、実は・・言い難いんだけど・・謝らないといけない事があって・・。」
「え?何?・・怖い。」
28歳から32歳へ年を四つも偽る
『実は+言い難い事=ロクな事じゃない』
計算式が出来上がっている。不吉な彼女の前置きに、俺の心拍数が跳ね上がる。
アラ「実は私・・28歳じゃないんです。」
「へ?本当は・・?」
アラ「32歳なの・・。サバ読んでてごめんなさい。」
「ファーWWW」
4つ・・はサバ読みすぎだろうが!
年齢をサバ読むのはなぜ?
出会い系をしていると年齢を偽っている人はたくさんいる。その行為は男女の性別関係なしにサバ読みは行われているのだ。
理由は、
- 年齢が高いというだけで対象外になる。
- サバを読むと返事が来やすくなる。
- サバを読んでも一期一会ならバレにくい。
- バレても少しくらいなら許される風潮がある。
女性は30代に入るとモテなくなる。YUTAROの経験で言えば、男性は30代後半から厳しくなってくる。
また出会い系に限って言えば、20代の頃よりも目に見えてメッセージが来なくなる。
だから少しサバを読んで、「年齢という足切り」に合わないようにするわけだ。嘘ついても会えたもん勝ちなのだ。
会って二回目で男の家に来る軽い女。やっぱり地雷。
今日は金曜日。花金でござる。アラ女の年齡は28⇨32へとアップし、俺とたいして変わらない年齡になった。
年齢をサバ読まれていた事に、彼女に対する熱は一瞬スーッと引いたが、いかんせんそこそこな美人である。そんな嘘はたいしたことではないのだ。
「最後の雨にぃ~ふふふんふ~♪」
俺は鼻歌交じりでスーパーで買ってきたひき肉と餃子の皮を冷蔵庫に放り込んだ。
アラ「YUさんちに行ってみたい。」
と彼女が言うので、
「いいよ。鍋でもする?」
アラ「鍋は暑いんで、餃子作ろう!」
ということになった。二回目のアポで男の家に上がり込むとは警戒心の低い女だ。
ということで今日は、俺の家で餃子パーティだ。ビールは冷えている。氷も焼酎もバッチリだ。
よく考えるとこの部屋の彼女以外の女を入れることは危険すぎる。俺はエアコンの不調で、冷静な判断力を失っていた。
男は女が家に来る時ヤル気満々だぞ。
それよりも、「女がウチに来る=ヤレる」というメンズ雑誌『ホットドックプレス』に書いてありそうな構図が俺の脳の大半を占めていた。
ピーンポーン♪換気扇の下でタバコを吸っていると、部屋のインターホンが鳴る。インターホンの画面にはアラ女が写っていた。
「どうぞ~あがって♪」
待ってましたと言わんばかりに俺は玄関のドアを開ける。アラ女は相変わらず全身黒一色だったが、以前よりもラフでTシャツとスカートになっている。
(この女、服は黒一色しか持ってないんじゃ?)
そして俺は興味が沸いた。もしかして下着の色も黒なのか?気になる・・。
「あれ?今日化粧してないの?」
アラ「今日は仕事ないんで薄化粧なの。ごめんなさい。」
濃いめのメイクがナチュラルメイクに変わったのだが、アラ女の地顔がメチャ可愛い事に気がつく。
「絶対そっちのほうが良いって!バリ可愛いやん!」
アラ「本当に?」
「マジでマジで!」
一度クールダウンされたハズの俺の中の熱が上がって行く。
女子力の高い家庭的な女。
「あっ・・これ作ってきたの。良かったら一緒に食べようと思って。」
彼女がバッグから袋を取り出し、俺に渡す。中に入っているタッパーを開けてみると、きんぴらごぼうと肉じゃがだった。少しあざとい『女子力』を見せつけるアラ女。
既に彼女には『年齡サバ読み女』のレッテルを貼っているので、深層心理を探ってしまう。
「じゃあきんぴらでもおつまみにしながら餃子でも作りまっか?」
アラ「そうだね!じゃあレンジで軽くあっためるね。」
ブウウウウウンと電子レンジが音を出している間に、ビールで乾杯。
アラ「YUさんってエプロンとか持ってます?」
「いや・・ない。ごめん。バスタオルでも巻いとく?汚れちゃったら大変だし。」
ということで大きめのバスタオルを腰に巻いてもらう事にした。
二人で餃子を作る
アラ「じゃあまずは餃子のたね作っちゃいますか!」
スタタターン!アラ女は野菜を手際よく刻み、銀色に輝くボウルの中へと投入する。そしてひき肉と混ぜ合わせた。
「めちゃめちゃ手際いいね。自炊とか良くするの?」
アラ「出来るだけ作ろうとは思ってるんだけど、面倒な時はコンビニかなあ・・。」
アラ女はそう言って笑った。それにしても餃子パーティーなんて、超絶久しぶりだ。
アラ「YUさんもう皮に包んじゃって良いよ~」
「はーい。」
俺は彼女が作った種を皮に乗っけて包む。
(あれ・・あれれれ?)
6年前よりも不格好な餃子の端っこの『くねくね』部分。こんなに難しかった?俺があの頃よりも捻くれてしまった証だろうか?
アラ「こうやって・・水をちょっとだけ端っこ付けて・・。くねくねは無理に作らなくていいんで・・ほら端っこを閉じるだけなら簡単でしょ?w」
アラ女は手際よく見本を示してくれる。俺ももう年だ。あっちこっちへと、くねくねしている場合じゃ無いのかもしれない。
料理を作る女の姿はエロい。
アラ「じゃあ餃子焼いてくね!」
ジュウウウウワアアアッ!
フライパンの上に並んだ、餃子達が音を立てると、台所に香ばしい匂いが充満した。二人はフライパンの中の餃子を覗き込む。
(近い近い!距離が近い!デカイデカイ!乳がデカイ!)
シャツの隙間から覗く、アラ女の豊かな胸の膨らみが、俺の食欲と性欲を同時に刺激する。
(・・やべえ・・抱きつきたい。)
アラ「飲みながらご飯作るとすごい酔っ払っちゃうね。失敗したらごめんね。」
彼女は手際よくフライパンの中に水を流しこんだ。フライパンは再び激しく「ジュウウウ!」と音を立て、流しこまれた水分はあっという間に泡立ち始める。
クーラーの冷風が来ない蒸し暑いキッチン。アラ女の首筋からは薄っすらと汗が光っている。
(舐めたらアカン。舐めたらアカン。でも舐めたら・・しょっぱいのかな・・?)
俺は・・彼女の首をペロペロしそうな自分を必死に押さえていた。俺の頭の中も、彼女醸し出すオトナの色気にフツフツと泡立っている。視線はフライパンと彼女を行ったり来たりしていた。
アラ「このくらいの焼き加減で良いかなあ?試しに一つ食べてみて?」
「いただきます。あっつい!あっつうううい!」
皮肉にも現実に引き戻してくれたのは、彼女が焼いた餃子であった。
アラ「あははw一気に頬張るからwどう?上手く焼けてる?」
「・・・パリパリで美味しい。」
アラ「アタシも一つ食べたい。」
「・・・んん?」
アラ「手が空いてないから。食べさせて♡」
これ以上、理性を保つのは無理かもしれない。
理性が吹っ飛び後ろから抱きついてキス
餃子のエキスが彼女の唇にまとわりつきテカテカと光る。
(美味しそうだぜその唇・・。)
アラ「もう一枚焼いたら、とりあえず向こうで食べよう♪」
そう言うと彼女は再びプライパンに餃子を並べる。そしてジュウジュウと音を立て始めた。俺は彼女の斜め後ろから、そのうなじを眺めていた。
(ダメだ・・もう無理ぃ。)
ガバッ!気がつけば、俺はアラ女を、後ろから抱きしめていた。
アラ「なに?ちょっと危ない。」
「ごめん。嫌だったら警察呼んでいいから」
アラ「ふふ・・w何いってんの?」
まるで子供をあやすような、母性を含んだ声で彼女はつぶやく。思ったより拒否反応を示さない。俺は彼女を抱きしたまま、彼女の顎をコチラへと向ける。そして輝く彼女の唇を奪った。
(ンチュ・・ンチュ・・。ペロペロ・・ンチュペロ。)
抵抗を見せることも無く、キスを受け入れる彼女。一気に舌すらも交える。俺の中の性衝動の波が、堰を切ったように押し寄せた。俺は汗ばんだ彼女の胸元へと手を差し入れる。上から覗き込むと、ブラは意外にも薄いピンクである。
黒とピンクのコントラストが俺の脳を刺激し、混乱させる。たわわに実ったアラ女の大きな胸が、手のひらに弾力を伝えてきた。強いハリがあるわけでもなく、弛んでいるわけでもない。
(これがアラサーのおっぱいというヤツか!!)
俺はその弾力を楽しみながら、先端にあるお乳首様を探し出し、コリコリと指で刺激する。
アラ「・・んん・・んあ・・だ・・め。餃子焦げちゃうから・・。」
(もうこのままチョメチョメしたい・・。)
俺は全盛期の山城新伍バリにチョメチョメを連呼していた。
アラ「ダメ!とりあえず落ち着いてw」
そう言ってアラ女は、ビールの缶を手渡してくる。まるでさっきの出来事は無かったかのよう、お互いが振る舞った。
アラ「ちょっと焦げちゃった・・。大丈夫かどうか食べてみて。」
ちゃっちゃと食べて、再試合へとしけこみたいもんである。俺は餃子をぺロリと平らげると、喉を鳴らしながらビールを流し込んだ。
「旨すぎ!プロかよ。」
アラ「でっしょ!餃子は息子ちゃんが好きだから良く作るの。」
・・聞き間違い。聞き間違い。きっと冷えないクセに音ばかりデカイ、壊れかけのエアコンのせいだろう。
彼女がシングルマザーをカミングアウト!
「・・え?今なんて?」
アラ「息子ちゃんが好きだから。」
(んああ!息子がいたあ!!)
「へえ・・w長男?次男?」
俺は平静を装うが、混乱から意味のわからない質問をぶつけてしまう。
バツイチ(息子&娘二人の子持ち)
アラ「えっと・・上にお姉ちゃんがいるから・・長男になるかな。」
(お姉ちゃんもいたああああ!!2児の母!!)
「・・一姫二太郎ってヤツだね。」
アラ「そうなんよ~wでも息子のほうはワガママだから凄い手がかかる。」
「・・今いくつなの?」
アラ「上(お姉ちゃん)が6つで、下が4つだよ~。」
彼女は母親の顔をして嬉しそうに語る。
(まあまあデカイやん!ってか結婚してるとか言ってたっけ?んんん・・?)
もう餃子の味も分からない。ただタレの酸っぱさだけが舌へと伝わってくる。
「そ、そう言えば結婚してたっけ?」
アラ「あれ言ってなかったっけ?」
既婚者はヤバい・・危険牌だ。
「・・ってことは旦那さんいるの?」
アラ「いないよwシングルマザーってやつ。」
「バツイチなの?」
アラ「うん、元旦那の浮気で2年前に離婚したんよね。この前会った時に言ってなかった?」
(・・言ってたっけ?)
「いやあ・・シングルマザーだと大変だね・・。生活とか子供の面倒とか。」
アラ「まあ実家の母も助けてくれるし、養育費も貰ってるから。」
「そっか~んはは。解散!」
シングルマザーは重い。キス友になる。
(この落下スピードは年齢詐称された時以上や・・。)
さっきまでのエロモードはどこへやら・・。親身になって話しを聞くつもりでも、物凄いスピードで熱が引いていく。結局その日はエッチなムードになることは無かった。
その後アラ女は「ヤル気マンマン」で何度かうちに遊びにきた。3ヶ月間ほどチューだけをするという『キス友』を続けたが、ヘタレな俺は結局手を出せないまま・・彼女の中へと入る勇気のないまま・・タダの飲み友になるのだった。
嘘つきよシングルマザーよ結婚おめでとう!旦那に同情。
「いやあ・・あん時の子持ちカミングアウトはマジでうろたえたわ。最初めっちゃ嘘つきだったよねキミ。」
ナッツを口に運びながら、俺は毒づいた。2017年4月。ここは博多駅にあるダイニングバーだ。
アラ「まあ・・アラサーでシングルマザーの女は、嘘ついてでも誤魔化さないと男が釣れないんよ。」
「うわあ~クズだね~女って怖いわ・・。」
アラ「今は本当の事しか言ってないから許して。」
あの頃と変わらない全身真っ黒な装いのまま、彼女は隣でカシスオレンジを飲んでいる。
アラ「それでもYUちゃんのこと結構マジで好きだったんよ。今はハゲ散らかしたタダのオッサンにしか見えんけどね。」
「お前の言葉はあれだな・・ナイフだな(泣)。まあ、訳ありシングルマザー(ババア)と結婚したいって、物好きな男が出てきて良かったやん。その年だとほぼ絶望だからさ。」
アラ女は、今付き合っている同僚の男性と結婚するらしい。今回はその報告もかねての祝賀会である。
アラ「ふふっ!ぶっ○すよ?まあ旦那に女を見る目があったんだろうね。」
「ええ・・。まあ・・結婚おめでとう。」
二人はグラスをカチンを鳴らすと、無言で喉に流し込むのだった。旦那さんカアイソウ。