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ほの暗い部屋

行方不明の元カノが突然会った理由が意味不明。しかもド派手なキャバ嬢になってた。

ほの暗い部屋

久しぶりに帰った部屋。そこには・・。

一ヶ月もの出会いの旅を終えて、YUTAROは札幌の部屋に戻った。

扉を開けると部屋はまるでブラックホールように、圧縮された暗闇が広がっていた。

人の気配がしない。冷え切った部屋からは、淀んだ空気と古い水の臭いがする。

 

「ううう・・。」

この部屋にいると、楽しかった旅の思い出が、ネガティブな思考で埋め尽くされそうだ。

 

耐え切れなくなって、窓を開けて換気する。

恋愛体質な彼女はもういない。

(もしかすると寝てたりして。)

念のために全ての部屋をチェックした。部屋に大阪子はいなかった。当たり前か。

部屋の状況からみても、彼女はほとんど部屋に帰っていないのだろう。もう二ヶ月以上会っていない。

 

「アイツどうやって生きてんだ?他に男でもできたか?」

 

男を惑わし、惑わされる。

そんな恋愛体質な彼女の性格上、男の1人や2人いても不思議ではない。

容姿もスタイルもいいのだから、きっと札幌の男もほってはおかないだろう。

 

とにかく俺たちの恋人関係は自然消滅したと思っていた。でも彼女からかかって来た電話は何だったんだろう。

自然消滅したと思ってた彼女から復縁の電話が怖い

 

俺は低くため息を吐き、「まあいっか。」とつぶやきホコリだらけの部屋の掃除を始めた。

掃除機は、ウィーンと排気音を吐き出しながら暴れまわる。

 

「次は洗濯!風呂そうじ!」

 

そして最後に恐る恐る冷蔵庫を開ける。当たり前だが中身は一ヶ月前と変わらない。

冷蔵庫のキムチは、あたりまえに賞味期限が切れていた。

 

「うえ・・きっと腐ってるよな」冷蔵庫の扉はゴミの日まで封印しよう。

部屋が綺麗になるにつれ、スッキリとした気持ちになる。不思議なものだ。

 

一通り部屋が片付くと、外は随分あかるくなっていた。テレビでは朝のニュース番組が始まっている。

 

(・・まぶたが強烈に重いんですけど~。)

 

俺はフローリングに座りこんだまま、深い夢の世界に誘われていく。

 

出会い旅では会ったたくさんの個性あふれる女の子達。俺は彼女たちを、遠くから眺めている夢を見た。

もう・・会うことはないのかな?きっと。

 

「寒い!体痛い!だるい!」

 

起きたら辺りは暗くなり始めている。布団にも入らず、10時間以上は寝てしまっていた。

その日から旅の疲れで高熱に侵され、数日間寝込んだ。

(誰か助けて・・。)

 

そうしているうちに、今年の残り日数はどんどん減っていった。

「クリスマスはただの平日」と自己洗脳

365日

「もうクリスマスか・・?」

 

イブまであと3日。あれほどヤンチャをした男の年末は暗く悲しい。

「このままじゃ、死ぬ~クリスマス」だ。

クリスマスに天に召される。そんな神聖なエンディングも悪くない。

 

冷静になって考えてみると、クリスマスは1年365日の中のただの1日ということだ。

実はキリストの誕生日でもなんでもない。

 

仕事から帰って、風呂入って、柿の種をつまみにビール飲んで。

いつもの生活をしていたら、劣等感も感じることはない。

このドロドロとした資本主義世界に抗うアンタはカッコイイぜ?

そうやって自分に言い聞かせて洗脳する。

 

(フゥ・・俺は誰と話していたんだ?)

クリスマス前に出会いを探すのは必死すぎて

この季節、出会いを探すのは、必死さが恥ずかしい。

そして出会い系をしまくったことによる、「リバウンド」が出ちゃってる。

HPとMPが絶対的に足らない。もう戦えない。誰にも会いたくない。

 

YUTAROは札幌の冷たい水道水を、ゴクゴクと胃の中に流し込んだ。

再び布団に横たわり、頭まで布団をかぶった。

 

(目が覚めたらクリスマスが終わってますように・・)

 

そう思った刹那、携帯が震えていることに気がついた。

着信の相手は…大阪子だ。

2ヶ月間行方不明で音信不通だった彼女のお誘い

大阪子は二か月もの間、行方不明だった。

失踪と行ったほうがしっくり来るかもしれない。

途中からYUTAROの日記を読んでくれた人のためにも、まず彼女の紹介をしておこう。

 

大阪子とは、俺が大阪から札幌に呼びだして、一緒に同棲生活を送っていた、大阪の元キャバ嬢。

身長が高く、モデル体型でスタイルがいい。

性格は天真爛漫で掴みどころがない。頭はあまり良くないが、いつも振り回されている。

 

スキがあるタイプの美人なので男にはモテる。おかげで街に出るとよくナンパされる。

結婚したい女というより、愛人タイプだ。

 

そしていま、札幌すすきの界に足を踏み入れて、キャバ嬢(ニュークラ嬢)へと変貌を遂げた。

俺の浮気が発覚して行方不明となり現在に至る

とにかく二人の生活は波乱に満ちたものだった。

 

音信不通の時間が長すぎて、二人の恋人関係は破綻しているに等しい。

元カノから「会おうよ」の意味は?

通話ボタンを押すべきか?

ふたたび夢の世界に逃げ込むか?それとも現実と向き合うか?

 

「もしもし?」

俺はそう言って、ゴクリと唾を飲みこんだ。

 

大「久しぶりやねえ!ねえ帰ってきたの?」

妙に明るい口調が怖い。

 

「うん、札幌に帰ってきてるよ。」

大「帰ってきてるなら連絡してや~!寂しかったんやで。ずいぶん会ってないけど元気なん?」

・・本当に大阪子か?オレオレ詐欺?まるで彼女が俺の部屋を出る前の頃の喋り方だ。

 

俺は身構えていた分、ひょうし抜けした。放置しまくったのだから、もっと辛辣な言葉で罵られると思ったのだが。

・・いや放置していたのは彼女の方か。

 

「いまちょっと風邪引いてて、体調不良。」

大「大丈夫?いるもんあったら持ってくで?」

「いいよ。大分回復してるし、熱はもうほとんど下がってたし。」

今の体調で大阪子と会う精神力はない。

 

大「・・そっか安静にしてね。」

大阪子はこのまま締めようとしている。

 

「なんか用事があって連絡してきたんじゃないの?」

大「あっ、そうや。明後日のクリスマスイブ空いてる?」

「・・予定はないけど?」

 

 

大「ちょっと会えへん?体調良かったらでええから♪」

「・・え?」

こりゃどういうことだ?

クリスマスといえば、お水業界も繁盛期じゃないか?一年の集大成的な一日じゃないのか?

同伴とかお客からのプレゼント回収とか。常連さんとアフターしてゴニョゴニョとか。

 

大「渡したいものがあるんだー。えへへ♪」

 

「・・そっか。せっかくだからご飯でも行こうか?久しぶりに顔見てみたいし。」

大「わかった!ほな狸小路のドンキに6時半集合でどう?」

「オッケー!」

大「それまでに体調治しといてな!声聞けて良かったわ。ほなね!」

「うん、じゃあ明後日」

・・・・・。

 

「ふー!緊張した!」

 

明るく穏やかな声で話す彼女に驚いた。まるで二ヶ月の空白など無かったかのようだ。

ただ、しばらく会わない間、ずいぶん関西弁が薄れているように思える。札幌に染まってきているのだろうか?

 

クリスマスイブの予定は埋まった。

渡したいものってなんだ?プレゼント?・・まさかな。

合鍵の返却だろうか?混乱で脳みそがかき混ぜられる。

 

いまさら、なにを話したらいいのだ。どう接したらいいのだ。

言葉にできない緊張が、俺を呑み込んでいく。

クリスマスイブがやって来た。人が怖い。

性なる夜

いよいよクリスマスイブがやってきた。

この前夜祭も日本では恋人達の性なる夜だ。

サンタクロースの存在を信じていたのはいつの頃までだっただろうか。そんな純粋な気持ちはもう忘れてしまった。

 

「うおっう!流石に人が多いな。」

札幌大通りあたりにある狸小路は人で溢れている。特にカップルたちの勝ち誇った表情が憎い(妄想)

 

このプラスとマイナスのオーラが漂うという1日は、一年365日の中でもそうそうあるわけではない。

札幌に帰ってきてからほとんど寝てばかりで、たった一回だけ住んでいる部屋の近くのコンビニに簡単な食料を買いに行っただけ。しかもジャージ姿で。

 

なんか、人が多くて怖いよおお!

全国出会い旅のおかげであれだけ社交的なモードだった僕ちゃんは、ちょっと人と会わないうちにすっかり対人恐怖症である。

 

(・・人ってこうもアッサリ変わるのね。こりゃ・・リハビリしないとちょっとマズイな。)

緊張!彼女との再会

札幌ドンキホーテ

大阪子が指定した待ち合わせ場所は狸小路にあるドン・キホーテ。二人でよく行った場所だ。

人が多く、ナンパ目的やホスト的な人の客引きもいるというなんとも落ち着かない場所である。

 

外で待つのは、かなり寒い。俺は地下街の入り口を経由してドン・キホーテに入った。

札幌人は冬になるとできるだけ寒くないルートを選ぶ。

札幌中心部の場合はこの地下街で、今では札幌駅からすすきのまでつながり、冬でもあたたかく、安全雪や氷で滑らない。

 

おかげで冬季は外を歩く人が減り、俺の頭皮のようにスッカスカ状態、反対に地下街が異様なほどに混んでお祭り状態なのである。

もし冬に札幌に訪れる予定のある人は、この地下街の存在は暖をとるのにかなり重宝するので覚えておいて欲しい。

 

ドン・キホーテで待つこと10分。電話がかかってくる。彼女からだ。

 

「もしもし。」

大「もう着いた?」

「うん着いてるよ。ドンキの中にいるよ」

大「私は狸小路商店街側の入り口にいるから。来て~♪」

「わかった、すぐ行くよ。」

 

手に取っていた育毛シャンプーを棚に戻すと、YUTAROは入り口に向かった。

心臓がドクドクと高鳴る、彼女に会うのが怖いのか?

別人?ゴージャスなキャバ嬢に変身してた。

「お、あれだ。」

一目で分かるスタイルのいい女性。

大阪子。細身の服を着ていても、そのスタイルはなかなかのものだ。

 

(あれ?こんなに派手な女だったか?)

派手女に変身!短期間で髪の毛が伸びて巻き髪へ

キャバ嬢巻き髪

久しぶりにYUTAROの視界に入った彼女はまるで変わってしまっていた。

整形したとかそういうのじゃない。

大阪で出会った時(元々キャバ嬢として働いていた。)のあのすっきりと小綺麗な感じとは違う。

 

二ヶ月ぶりに見る彼女は、かなり派手になっていた。

外見が変わっただけでも、まるで別人のように感じる。

 

ススキノでふたたび水商売を始めた2ヶ月前とも違う。だが目の前に立っているのは紛れもなく大阪子だ。

 

(たった2ヶ月で髪の毛ってこんなに伸びるの?)

見た目の変化といえばミディアムボブだった、髪が急激に長くなっている。

 

しかも金髪に近い、かなり明るい色だ。

ウェーブのかかったその髪はいかにも「水商売の女」だった。

 

ススキノに染まってしまったのだろうか?

それとも二人の心の距離がそうさせているのか?

 

「なんか雰囲気とか変わったね。髪もすげえ伸びてるし・・」

大「あーこれ?これはエクステンションだよ。」

「え、エクスキューズ?」

大「ミーっておい!つけ毛のこと!エロい私でもさすがにここまでは伸びないよ!」

 

「え?ズラとは違うの?」

大「んん?近いけどエクステは髪の毛に直接つけるのだよ~」

「そうなんだ・・じゃあ今度やってみようかな?」

大「それほぼスカスカのエクステンションになっちゃうやん!ヅラのほうがいいんじゃない?」

 

つば迫り合いは始まっている。・・やりおる。さすがの突込みだ。関西の血か、それともこっちのお水界で鍛えられたのか?

 

(でも・・うう、なんか怖い。電話の口調もやけに明るかったし。)

失踪や二ヶ月間の空白期間にも、何か裏があるのではないか?

 

彼女が実は策士だった。俺は手のひらで踊っていただけだった・・。なんてこともあるかもしれない。

元彼女と会うのにこれほど恐れを抱くとは思わなかった。

 

(ダメだ!深呼吸するのだ。吐いて吸って揉んで!)

何を話したらいいのかわからない?

大「YUちゃん久しぶりだね!」

ハツラツとした声で大阪子が言う。

「お、おお・・久しぶり。」

 

いやあ、いままでどこいってたのさ?

オラあ、君がいなくなってびっくりしたんだよ~。なんで出ていったのさ?

綺麗になって!こんなかわいい子と男がほっとかねえべ?

 

できるだけ明るく、自然に・・この日までに練習した言葉も緊張でのみこまれてしまう。

水商売の女へ変貌遂げた彼女。二人で歩いてたら同伴ですよ!

道中、ショーウインドーに映る自分達を振り返ると彼氏、彼女というよりもどう見てもキャバクラの同伴ですわ。

歩くこと5分ほど、道に迷うことなく、イタリアンレストランに到着した。

少し高価そうな店構えだ。

 

(大丈夫か?こんな店に入って。)

寂しい財布の中身が気になるが、覚悟を決めて店内に入る。やはりクリスマスイブだけあって、早い時間からたくさんの男女で賑わっていた。

 

この中のどのくらいが恋人なんだろう?

男性一人できているような強者はいなかった。女性一人の客はいるがテーブルの大きさから考えると連れの男性を待っているのだろう。

 

大「予約したものですけど」

店に入ると大阪子が予約名を告げる。うっかり源氏名じゃなくてよかった・・。

メニューを見ると、やはりお高め。結局コースメニューとビールを頼む。

 

大「YUちゃんお久しぶりです。乾杯♪」

「え?ああ・・乾杯。」

カチッとグラスが重なる。

 

大「あっさっそくだけど忘れないうちに、渡したいものがあって。」

「え?ああ・・」

大阪子がバッグをごそごそと漁る。彼女からYUTAROに手渡されたものと彼女から投げかけられる言葉は意外なものだった。

別れの言葉?彼女から手渡されたものとは?

パンドラの箱

気づかないようにしていたが、彼女のバッグはいままでの使っていた安物のフェイクレザーのものとは違う。

日本人の大好きな高級ブランドバッグ、「Louis Vuitton」に変わっていた。

 

(うぬぬ・・。この短期間で何が起こっているのだ。)

出てくるのが「パンドラの箱」だったらどうしよう。

 

大「はい!これ!」

勢いよく、テーブルの上に飛び出してきたのは小さな紙袋。それも厚紙でできた高級感のあるものだった。

「ん?こ、これって・・?ボッテガ・ヴェネタ?」

ボッテガヴェネタ財布

ブランド物には知識が薄っぺらいYUTAROでも知ってる最近男性に人気の高級ブランドだ。

大「うん!じゃ次いくよ!」

稼いでる?キャバ嬢のプレゼント。

大「はい!ジャーン!」

「・・え?ええ!」

大阪子のバッグからもう一つ何かが顔を出した。その袋にはグッチと書いてある。もちろん裕三ではない。

 

大「んじゃもういっちょ!」

「なん・・だとぉ・・?」

現れたのは、「バレンシアガ」さんであった。

 

(これはどういうことだ。)

俺は、この状況が全く読めず放心状態の幽体離脱状態だ。

 

夢か?きっと夢なんだろう。こんなことが現実で起こるはずがない。

きっと俺は病院の集中治療室にいて、生死の境を彷徨っているに違いない。

 

(喉が乾く・・。カラカラだ。)

グラスを手に取り、ゴクゴクとビールを流し込む。

喉がきゅっと締められるような冷たい感覚。グラスのビールもちゃんと減っている。

 

(こりゃ紛れもなく現実だ。そして異常事態だ。)

 

だって三つもクリスマスプレゼントが出てくるなんて人生始めてなんだもの。

しかも別れた彼女からプレゼントをもらう理由がわからない。

 

ユニクロ万歳の俺としてはブランド物の値段はよくわからんが、並べられたプレゼントの総額はおそらく20万円近く。(後でネット調べた)

それをポンポンと惜しげもなくテーブルの上に載せたのだ。金と酒と欲望の渦巻く夜の世界にいるとこうなってしまうのだろうか?

なぜか、歌舞伎町のホストがシャンパンでワッショイ言っているのが脳裏に浮かんだ。

 

ススキノのキャバ嬢となった大阪子は間違いなく稼いでいる。

いくら札幌市が200万の大都市とはいえ、こんなに稼げるものなのか?

 

ニュークラじゃなくて、実はソープや風俗で働いているんじゃなかろうか?

よく知っているはずの彼女の存在が、グラグラと揺れて見える。

ヒモ日記に変更ですかね?

ヒモお金

「YUちゃん・・?」

大「YUちゃん?」

「はっ!これ俺にくれるの?てか全部財布じゃん。」

てか、このままだと「YUTAROのヒモ日記」になってしまう。

そんな結末は・・・悪くない。ヒモ生活万歳!

三つの財布を満タンにするくらい稼いでこいという日本古来の習わしかもしれない。

三つのうち二つは「常連のお客様用」

大「いやいやさすがに全部じゃないよ・・残り二つはお世話になってるお客さんに挙げるから、このプレゼントの中から一つ選んで。」

「だ、だよねえ~」

大「YUちゃん財布ボロかったからちょっと奮発したんだ。」

確かに俺の財布はボロい。10年前に友人に5,000円で譲ってもらったヴィトンの財布。

 

本物か偽物か怖くて確かめられない。友情が壊れてしまうから・・そんな話はどうでもいい。

お客さんに高級な財布をあげるってことは、かなりお金を使ってくれる常連客ができたんですな。

キャバ嬢で稼げるというのは男心をつかむのがうまいのだろう。

 

(もうすっかりキャバ嬢なんですね・・。)

もしかすると枕営業で下半身のお世話とかもしてるんだろうか?

元々キャバ嬢としての経験値も高いし、愛人だった過去もある。異性の心をつかむのは、YUTAROとは比べ物にならない巧さを持っているのだ。

 

「ごめん俺、大阪子にプレゼント買ってないわ。」

大「ええよ。YUちゃんにもお世話になったんだから。私ももうこっちに来て一年になるしね。今までいろいろありがとう。」

お世話になった?今までありがとう?彼女の言葉が引っ掛かる。

(いやいや・・こんな高いものもらえないよ・・気持ちだけで充分だ。だって君が一生懸命稼いだお金だろう?)

汗水たらして・・いや汗水は垂らしてないけど、水割りを作って、オヤジのセクハラを我慢して、飲みたくないお酒も我慢して飲んで・・アフターに付き合って美味しい焼肉を食べて。

たまには同伴で回っていない高級なお寿司を食べたりもして。お金をくれるパトロンがいれば尚良しですね、わかります。

あれ?なんか・・ちょっとキャバ嬢が羨ましいぞ。

そして僕はちゃっかりボッテガべネタの財布をいただくのだった。

彼女にもらったボッテガ財布

(ちなみに今も使ってます。もうボロボロだけど・・)

 

コース料理もメインに差し掛かる。

「すごいね大阪子!あなたお金持ちなんですね。」

大「いやいや・・必死でやってますわよ。最近やっとお金に余裕ができたってゆうか、でも今月はイベント事で出ていく分もおっきいからカツカツだけど。」

彼女の言葉のワケが意味不明。彼氏なの?別れてるの?

「そうなんだ~今どこで住んでるの?」

大「あれ?言ってなかったっけ?大通りのちょっと東だよ。」

「っていうと〇〇のほう?」

大「えっとまあそのへん?そうだ今度遊びにおいでよ。メールで住所教えとくから。」

「へ?ああ・・うんじゃ今度お邪魔するね。」

 

大阪子のしゃべり方は彼女の頃とあまり変わらず近い。でも時々ものすごく遠く感じてしまう。

ただ、2か月もの間何をしていたのかを詳しくは聞かなかった。・・てか怖くて聞けんかった。

 

それはまだ俺が彼女に未練がある証拠だろうか?

でも、さすがに二人の関係はもう彼女と彼氏では無い気がする。彼女もYUTAROの二ヶ月間の行動に興味はなさそうだった。

もう俺たちは相手の「余計なプライベート」を知って、あれこれ考える段階じゃないのかもしれない。

メインを食べ終わりデザートが運ばれてくる。

 

大「あっ!もう時間だ!そろそろはお店行かなきゃ」

「え?まだ20時だよ。今日は休みじゃないの?」

大「当たり前やん!クリスマスだよ!お客さんにプレゼントも渡さなきゃだし!」

「そっか~!すっかりお店の戦力ですな~!」

きっとこの後、同伴の約束もあるのだろう。

このままクリスマスに一人でこの恋人だらけの店にいるのも泣ける。俺たちは一緒に店を出た。

 

大「じゃあ行ってくるね。」

「うん、仕事頑張って!プレゼントありがとうね。」

大「あっそうだ!1月はお店暇だから二人で温泉でも行こうよ!」

「え?うん。うん?」

大「じゃあまた連絡するね。」

どういうことだ?意外な旅行の誘いであった。

プレゼントの財布をもらったばかりで、社交辞令とも思えない。

 

俺たちはまだ彼氏彼女なのだろうか?そもそも会った理由がわからない。

その意味を考えるほど、俺は混乱していく。

 

そして氷の路面を歩くシンデレラは、今宵の舞踏会のために夜の城へと消えていった。

0時じゃ帰らないんでしょうけどね。きっと。

 

続く➡一人でバーに行ったらヤクザっぽいオッサンに絡まれたinススキノ