「んごー!暑い!蒸し暑いいい!」
7月も後半に差し掛かり、梅雨明けした福岡には、夏が訪れた。福岡に移住して来て、二回目の夏だ。
エアコンも古くなったせいか調子が悪く、部屋の中がほとんど冷えない。死んだ毛根が汗腺に変わったのか、頭皮からは大量の汗が吹き出している。
僕はやっぱり出会い系中毒。
俺はそれを右の手のひらで弾き飛ばしながら、左の手でスマホをタップして文字を打ち続けていた。
(もっと色んなボタンを叩きたい・・。女の子の胸のボタンとか。)
相手はワクワクメールで知り合ったアラサーの女
つーことで、凝りもせず出会い系にログインしちゃっているわけである。そんな中、返事をくれたのが、28歳の女性である。
アラサーだが、まだまだ若さのある年齡だ。
名前:アラ女
年齡:28歳
出会ったサイト:ワクワクメール
スマホに慣れるため出会い系を再開して1ヶ月。タップ作業も随分上達した頃に知り合ったのが彼女である。仕事は医療系事務員。相手は出会い系初心者のため、写メは「まだちょっと不安で」とおあずけを食らっている。
「携帯はガラケー?スマホ?」
アラ女「最近スマホにしました!」
「おお!俺も!最近かえたんよ!まるで同士やん!」
アラ女「・・ですね。」
「メール打ちにくくない?もう慣れた?」
アラ「もう大分慣れましたよ。」
「タップ派?フリック派?」
アラ「・・え?」
「文字打つ時に、画面叩くのか、それとも上下左右にシュッシュってやる?」
アラ「あっ・・シュッシュってやるほうです。」
「あー!フリック派かー!俺はタップ派!」
なぜか話し大いに盛り上がり、LINE交換を成功させる。アポまでの道のりはそう遠く無いはずだろう。
暑さで頭のイカれた俺は、なぜか前向きだった。飛び散った汗で画面がギラギラと光る。
出会い系で短文の女は『会えない』『サクラ』と決めつけるは間違い。
ちなみに彼女は非常に『反応が薄いタイプ』である。
出会い系内でやりとりしていた時も、LINE交換してからも、「そうですね。」とか「普通です。」など一行内で収まる返事が多い。
(・・聞いてますかい?俺の話?)
そう脳内で何度もつぶやくことになる。
まるで感情のない機械を相手にしているかのようだ。これはもう『コミュ障レベル』と言ってもいい。だが、『会えない』と簡単に切り捨ててしまうのは、まだ時期尚早である。
文字のやり取りを嫌うタイプの女もいる
こういうタイプの女性は総じて「会えない」とスッパリ切り捨てる男性陣もいるが、俺はそうは思わない。
※女の子とのやりとり。
会う気はあるのにメールやLINEでの文字のやりとりを面倒くさがって嫌う傾向にあるからだ。
文字を一生懸命ポチポチするのが嫌なのだ。連絡手段は電話派だったりもする。
短文で返事する人は増えた。
出会い系を15年以上やってる身として、最近感じるのは『短文返事のヤツが増えた』ということである。
昔はメール形式だったので、長文も許されていた。しかし最近ではLINEなどのメッセージアプリが主流となり、チャット人口がグンと増えたことも考えられる。
相手とのやりとりをいちいちメールBOXから探す時代は終わりを告げ、つまりチャットでの文字量よりもと回数とスピード重視の会話が増えたのだ。
長い文章は『キモい』の時代へ
ガラケー時代に出会い系で俺が送っていたファーストメッセージの文字数は300文字近くだった。
年齡や性格などの自己紹介に始まり、住んでいる場所、仕事の話し、好きなものや趣味の話しetc…そして相手のプロフィールに関しての反応。
そして最後に質問で締める。・・という流れ。以前は結構通用したが今は事情が変わっている。
今300文字もの長文を送ると・・。
『うわっ!長文すぎて本気すぎて怖すぎ!キモすぎ!』となるわけである。
今は長すぎるメッセージは「キモい」と判断されて返事が来ない。
相手にメッセージを送る場合は、多くても100文字程度、長くなりそうな場合は分割するべきである。ここ重要!テストに出ますよ?
短文返事のそっけない女は会えない訳じゃない。
つーことで世の中には短文のやりとりが増えているのである。
「アナタちゃんとメッセ呼んでます?」
そう思うこともあるかも知れない。無感情すぎるほどの短文っての腹が立つ。
「○○さんって凄い反応薄いよね・・。なんか俺ばっかり喋ってる気がする。」
俺はこんなメッセージを送って『反応薄い系の女』に注意したことが何度かある。
でも結果は、
女「こんな感じでしかできないんで他の人探したら?」
的なことを言われて、バッサリ切られるので要注意。短文返事の女は扱いに注意しなければならない。
出会い系は女性の売り手市場なのである。相手と会いたいなら、そこはグッと抑えるべきだ。そこをツッコムと高確率で終わる。
「短文返事のク○女」は世の中に一定数存在し、それは思った以上に多い事を理解しておこう。
『不満でも 口にはするな 会うまでは』
の精神である。
※短文でのやりとりはポイント消費が半端ないんで、早いうちにLINE交換しましょう。じゃないと破産します。
(・・俺は一体誰に熱く語っているんだ?)
そうだ、俺は今から短文を打ち続けた無反応女に会いに行くのだ。
陰キャのコミュ障来たら速攻で帰る
さてそんな短文女と会うことになった。春吉にある焼鳥屋でアポだ。今流行の『居酒屋デート』というヤツだ。ということで、待ち合わせは場所は春吉交番のあたりとアバウトな設定。
「もうすぐ交番に着きますよっ!」
アラ「私はもう着きました。交番の端っこにいますよ。」
俺は状況を伺うため(女子を見定めるため)少し手前にあるコンビニでタクシーを降りる。
(えっと交番は・・交番は・・。)
俺は気づく。交番の横で周りの光を吸収している女が一人いることに。肌色の面積はごく少ない。まるで彼女という存在が黒に侵食されているかのようだ。
午後7時。あたりがもうすぐ暗くなる。その「夜」すらも彼女が呼び寄せているのではなかろうか?
「あんなに黒一色だと暗闇に紛れちゃって交通事故に合いそうで危ない。」俺はそう思った。
意外と明るくて可愛い
「あっ!どもアラ女さんですよね?YUTAROです。」
彼女の黒さに負けないように、俺は出来る限り明るく声をかけた。
一瞬、彼女は驚いた顔をしたが、
すぐに「ど~も~!アラ女です。よろしくお願いします。」と返してきた。
春吉に焼き鳥屋は腐るほどあるので、適当な店に入る。いつもなら前もって準備するのだが、いかんせん彼女は短文女である。こっちも雑な対応になる。
LINEのような返事しかできない「極度のコミュ障」だったら焼き鳥を数本食って帰ろうと思っていた。
しかし、彼女は思いの外よく喋る。そして、彼女は思いの外可愛い顔をしていたのだ。
俺は安堵と期待の気持ちを抱いた。でもそれは彼女の地雷っぷりを知らなかったからだ。