我、網タイツを所望する也!
性欲減退。
四十肩。
腱鞘炎。
男性型脱毛症。
それだけじゃない。最近じゃキーボードを叩いているだけで、肩がパコパコと音を立てる。この日記を書いている最中にもだ。
老化著しい時こそ、若いエキスが必要になる。
「・・我、網タイツを所望する也。」
さて、今日はそんな話をしよう。
キャバ嬢の住処、春吉で待ち合わせ
午後8時。YUTAROは春吉の交番横で待ち合わせをしていた。
出会い系で知り合った女の子と待ち合わせる・・もう10年以上も続けている習慣だ。
春吉は福岡の天神と中洲の中間にある街。繁華街に挟まれているので飲食店も多く、使い勝手が良い。
水商売で働いている女性も多く住んでいるため「キャバ嬢の住処」と言われるパワースポットだ。(すいません勝手に言ってます。)
そんな春吉界隈も、ここ数年でずいぶん様変わりした。
最近では桜十字病院につながる道路も開通して、街も明るくなり便利が良くなった。
中洲へと出勤する水商売の嬢たちを眺めながら、YUTAROは今日のデート相手の到着を待った。
(・・おまわりさんから「職務質問」を食らいそうでヒヤヒヤもんだぜ。)
ハッピーメールで出会った白衣の天使
女「こんばんわ♪」
YUTAROに話しかけてくる女が一人。子猫の鳴くような可愛らしい声だ。
(え?天使がいるんですけど??)
ということで、今日の相手のご紹介だ。
名前 | 網子 |
年齢 | 20代半ば |
職業 | 医療系 |
出会ったサイト | ハッピーメール |
福岡の病院で働く女の子。実家の近くで一人暮らしをしている不思議ちゃん。
医療系ということもあって、やや世間ズレしている。
勤務時間や勤務日が不定期なので、たまに変な時間にLINEが届いたりするが、若い子とLINEできるだけでオジサンは嬉しいぞ!
幼い顔立ちに愛らしい笑顔・・。めちゃくちゃカワイイ。
(これは・・ひっさしぶりの大当たりだ!)
不思議だね・・もう君のことが好き。俺の脳内で祝福のスターマインが打ちあがる。
先週はわざわざ西新まで行ったのにドブスが来た。人生のプラスマイナスは良くできている。
はる好し庭へ
俺達は、交番のすぐ近くにある「はる好し庭」というお店に入った。
はる好し庭は、料亭風の高そうな店構えだが、意外とお値段は控え目。
個室や仕切りのある席が多いので、YUTAROはアポで良く利用している。
福岡で知り合った保険会社の人にコンパ組んでもらったら、動物がたくさん来ちゃった。
そんな苦い過去があるのが・・この「はる好し庭」である。
掘りごたつの席に案内され、網子と向い合せで座る。
(・・目がキラキラして吸い込まれそう。)
目の前でにこやかにほほ笑むエンジェル。一重の俺と比べると、二倍ほど目がデカい。
服装はグリーンTシャツにジーパン。地味なかっこうなのに・・天使。
(人はやっぱり見た目なのか?否とよ!人の価値は魂で決まるんだ!)
「網子ちゃん・・お酒は何がいい?」
網子「じゃあビールで♪」
・・人ってやっぱり顔だわ。
「い、いか食う?活き造りにしてもらおう。」
網子「え!食べたいです♪」
「よぉし♪おじさん今日は奮発しちゃう!好きなもん何でも食ってくれ!」
・・人ってやっぱり顔だもん。
オジサンはどんどん注文していく。結果的にパパ活になっちゃってもいい。
これまでかたくなに守り続けてきた自分ルール。それをアッサリと破壊する可愛さが網子にはあった。
進撃の網タイツ
網「え~そうなんですかあ(笑)」
談笑していると、ヤリイカの活作りが運ばれてきた。
網子「うわ・・まだピクピク動いてる!生のイカってすごい♪」
彼女の口から発せられるアホフレーズが、これでもかと俺の鼓膜をくすぐる。
カラーン!
(いけね・・興奮して箸落っことしちゃった!)
網子「あっ、新しいお箸もらいますね♪」
俺は箸を拾うついでに、掘りごたつの隙間から、網子の足を舐めるように眺めた。
ピタッとジーンズに張り付く、肉付きの良い太もも。パンっと張ったふくらはぎ。
その先にはなにがあるのだろう?きっと白く長い指先だ。
(・・どれどれ?)
・・・?
(あ、あ、網タイツだああ!?)
想像の斜め上を行く、進撃の網タイツ。
(ジーンズに網タイツって・・ど、どういう事!?)
(3.1415926…ピーガガガー…)
これまでの常識がガラガラと音を立てて崩れていく・・。
・・地味なTシャツ、ジーンズ、網タイツ。
彼女のファッションセンスが解らない。
網タイツを普段使いする子ってエロい子?
(この子・・実はめっちゃエロい子なのでは?)
そもそも網タイツなんて、これまで彼女や気心の知れたセフレに頼み込んで着てもらったくらいだ。(気心の知れたセフレってなんだ?)
あとは、風俗くらいでしかお目にかかれない。エロシチュエーションの時がほとんどなのだ。
網「YUTAROさん、おはし見つかりました?ほら新しいのです。」
「あ、ごめん。」
俺は顔を上げる。そこにはニコニコと箸を手渡す天使がいた。
(まさかな・・こんな子が網タイツなんて野蛮でエロいものを履くはくわけがない。)
きっと俺の見間違いだ、暗がりだったし。
とにかく冷静になって、酒を楽しむことにしよう。
チャンス!彼女のタイプが俺だった。
「網子ちゃんは、お付き合いしている人はいないの?」
網「それがですねえ・・。実はこの間フラれちゃったんです。」
「え?まさか網子ちゃんがフラれたの?フったんじゃなくて?」
網「実は元カレと遠距離になっちゃって・・。それでアッサリ、フラれました。」
「わかるよぉ~。俺もね、遠距離になったとたんフラれたよぉ~。」
まんまと幸運が舞い込んできた。フラれた直後こそが、ベストタイミングだ!
俺の経験上、出会い系をする女性には「実は彼氏がいるんです」なんて子もいたが、こんなカワイイ子が嘘をつくわけがない。
「その・・彼氏の写メないの?」
網「え~?どうしよ・・見ます?」
網子はスマホを取り出して、俺に画面を見せてくれる。どうせめっちゃイケメンなんだろう?
(おいおい・・元カレ、ブスだぞ?まあまあブサイクだぞ!?)
しかもヒョロい。マッチ棒みたいなヤツだ。
(この男が?こんなカワイイ子をフっただと?)
福岡はどうなってんだ?高島さんよぉ?(※福岡市長)
「や、優しそうな人だね。」
網「そうなんですよ~。私、優しい人に弱くって。」
(おいおい・・優しくて、ブサイクで、クズって俺の事やん。)
今ここに、おめでたいオッサンが誕生した。
チャンスだ!彼女は外見で判断しないキレイな心の持ち主なのだ。
(外見だけで人を判断しちゃいけないよ♪)
俺の後頭部にブーメランが突き刺さる。
もう我慢できなくて・・。
俺のテンションが爆上げし、一次会は大いに盛り上がった。
そのままの勢いでカラオケに行く事に。
「はる好し庭」を出る時には、玄関で靴を履かなければならない。
俺は彼女が靴を履く瞬間を凝視していた。
(うーん。これはどうみても網タイツだよなあ・・。)
それでもまだ疑心暗鬼のままだった。
聞きたい。俺は聞きたい。「それは網タイツですか?」・・と。
そんな俺に絶好のチャンスが訪れた。それは二次会のカラオケだった。
網「わーたしサクランボエ~♪」
(うん。キミはサクランボだ。音痴なサクランボだ。)
網子はめちゃくちゃ音痴だった。
だけどそのギャップが、俺の心を激しく揺り動かす。
それは彼女の汚いビブラートのように。
網子は、ソファの上で飛び跳ねながら、歌うタイプの女だったのだ。(どんなタイプだよ)
つまり靴を脱いでいる。俺はその足先に集中していた。
(もうこれ・・完全に網タイツだよ。)
そして、とうとう我慢できなくなった。
「パチパチパチ!いやぁ良かったよ!ところで、それって網タイツ?」
網「・・え?」
彼女が網タイツを履く理由
ドコドコドコ!バンッ!82点
(・・想像よりも高い点数叩き出しちゃった!)
音痴の彼女にDAMが「忖度」したのか、YUTAROの耳が悪いのか・・。
網「はい。網タイツはいてます。今日は靴下が無かったので。」
(・・この子は真顔でなにを言ってらっしゃるの?)
このご時世、「靴下が無い」というのもツッコミどころ満載だ。
それを理由に網タイツへGOしちゃう流れも、オレには理解できない。
(・・元カレの趣味なのかな?)
「それってさ、元カレの趣味なの?」
ウッカリ言葉に出てしまっていた。
網「違います。ワタシこの肌触りが好きなんですよね~♡」
「網タイツの?」
YUTAROもこれまでの人生で、網タイツを眺めたり、脱がしたり、舐めてみたりした事はあったが、その「肌触り」にまで注目したことはなかった。
それは、どんな肌触りなんだろうか?
俺が想像できるのは、ミカンの入っているアミアミの袋の感触だった。(おばあちゃんとかあの中に石鹸いれてた)
「・・ちょっと触ってみてもよかですか?」
網「だ、ダメですよ!」
「ですよね~。」
ダメと言われると触りたくなる。
だけど無茶をして網子の機嫌を損ねるわけにはいかない。
彼女はなかなか会えない上玉の美人さんだ!
俺は欲望を押さえつけ、必死でその場を盛り上げた。
彼女の「ボエー」を聞きながら。
網「こんなに歌ったの久しぶり☆いつもはあんまり歌う出番がないから・・。だってワタシって音痴でしょ?」
(音痴って知ってた!)
「い、いやそんな事は・・。よし!次は俺の行きつけのバーに行こう!」
網「楽しそう♪どんなお店なんですか?」
「それは着いてからのお楽しみ☆」
網子を連れて行ったのは、俺の友達のバーだ。
そこで俺はとんでもない暴挙に出てしまうのだった。
女の子の網タイツをかぶった結果
ここはYUTAROが通う福岡のバーだ。マスターとも仲がいい。(いきつけすぎるので店名は晒せません。)
カウンターには、常連の男たちが座っている。いつもの風景だ。
「オッスオッス!」
マスター「おお~いらっしゃい♪」
客A「カワイイ子連れてどうしたと~?」
「ふふっ、一緒にカラオケ行って来たばい。」
俺達は空いている席に腰掛ける。まずは、ハイボール。そして日本酒へ。
マスターに一杯飲ませれば、代わりにサービスでつまみが出てくる。
そこからはいつも通りの激しい酒盛りだ。
「この子、靴下が無いからって網タイツはいてんだって(笑)」
網「ちょっと!YUさん!」
カウンターの酔っ払い達は爆笑する。
翌朝になると、頭痛と吐き気を抱えてながら「何があんなに面白かったのか?」解らない時がある。
とにかく、今日のような日は危ない。
客A「どんな網タイツ?」
お調子者Aのイジりが始まった。
マスター「ちょ!やめなさいよ。んでどんな網タイツはいてんの?」
こうなると店全体が流れに飲み込まれていく。
ただ、網子も「これです~♪」と足先を見せながら、楽しそうに網タイツの良さを語っている。
マスター「YUTARO、せっかくだから彼女からタイツ貰えよ~。一万円で。ガハハッ!」
「よ~し!我は網タイツを所望するなり~♪」
網「www」
マスター「網タイツを!」
「所望するなり!ヨッ!」
客A「網タイツを♪」
「所望するなり!ヨイショッ!」
清々しいほどのクズの集まり。
網子「網タイツを♪」
網子もまさかの参加である。
「人間五十年、下天の内を~?」
一同「網タイツ♪」
「盛者必衰の~?」
一同「網タイツ♪」
「アイラビュ~い~まだけは~?」
一同「網タイツ♪」
すごい!新発見だ!後ろに「網タイツ」をつけるだけでこの一体感はなんなのだ。
網子「もう!あげるから引っ張ってください♪」
「ええ?くれるの!?」
福岡の女はマジでどうなってんだ?高島さんよぉ?(※福岡の市長です)
俺は、網子に差し出された左足の先から、網タイツを慎重に引っ張って脱がしていった。
(傷つけないように・・破けないように。)
その光景を、バーのクズ共は固唾を飲んで見守っていた。
彼女の足先は冷たく湿っている。保温性ゼロじゃねえか・・。
俺は「タイツとしての役割」に疑問を感じた。
そして・・無事にその作業を終える。今、俺の手の中にはニーハイの網タイツがあるのだ。
2018年7月。
オイラの人生に「女の子から網タイツをもらった♪」という経験が追加された。
網タイツをかぶってみる
「・・せてもらってもイイ?」
網「え?なに?」
「このタイツ・・顔にかぶせてください。」
網「一回・・しんだほうがいいですよw」
「・・ダメ?」
それは・・本当に純粋で無垢な感情だった。
気が付けば俺は、彼女に網タイツをかぶせてもらっていた。
(すごく良い匂いがする・・年季の入ったワインのような芳醇な香りだ。)
周りから笑いと、スマホのシャッター音が聞こえる。
「引っ張ってみてください。」
網「・・え?」
「網タイツを思いっきり引っ張ってみてください。」
網「こ、こうですか?」
「もっと!もっと強く!」
網子は立ち上がり網タイツを思いっきり引っ張った。
「あだだだだだ♡」
網「どっこい!しょーいち!」
スッポーン!とハゲ頭から網タイツが抜ける。
摩擦による熱と謎の満足感。俺はもう網タイツに夢中になっていた。
ついでに網タイツをはいてみる。
「よし。せっかくなのではいてみます。」
網「ちょ、それはやめて・・。」
心なしか網子がひきつった顔をしている気がした。
しかし、俺は止らなかった。ここでやめておけば良かったのに・・。
(※グロ注意)
皆さんもご存知の通り、俺は変態ではない。
だけど網タイツをかぶったりして、酒を楽しめば四十肩や関節の痛みもすっかり治っていた。
網タイツはホイミであり、ケアルなのかもしれない。
(・・ボカぁ幸せだなぁ。)
網タイツを所望して、本当に良かった。
マスター「YUTARO起きて!閉店!」
気が付くと、俺はカウンターで網タイツ被ったまま眠っていた。
「んあ?網子ちゃんは?」
マスター「もう帰った(笑)楽しかったって伝えてだって。」
「そっか・・残念。」
(顔の網目が消えない。・・まいっか。)
俺はタイツの跡を顔に残したまま、タクシーに乗って家に帰った。
網タイツをかぶると音信不通になる(LINE拒否される)
その日は酷い二日酔いで、俺は布団から出ることができなかった。
頭痛と吐き気が収まったのは、夕方だった。
(あ、網子にLINEしなきゃ・・カワイイ子だったし、週末にでも会えないかな。)
「昨日は楽しかったよ~!酔っぱらって眠ってゴメン。埋め合わせするから、近いうちにまたお酒とかカラオケ行ってワイワイしよ♪」
俺はLINEで網子にメッセージを送った。
あえて網タイツの件には触れないのが、出会い系マスターの流儀だ。
(おかしい・・既読が付かないぞ?)
その後、2件ほどLINEでメッセージを送ってみるが、彼女から一度も既読が付かなかった。
賢い皆さんなら、もうお気づきの事だと思う。
俺は網子の「人間的拒否リスト」にインしてしまったのだ。
「網タイツをかぶるとLINEの拒否リストに入る。」
これは俺が身を持って知った教訓なのである。
酒の席は無礼講だけど礼儀もある。ヤリすぎてはいけない。セクハラなんてもってのほか。
それは網タイツに限った話ではない。
あなたは酔っぱらって女性にウッカリ「セクハラじみた行為」を「セクハラっぽい発言」をしていないだろうか?
最近は「カワイイ」と女子に言うだけで、セクハラ扱いになる恐ろしい時代だ。
気を付けてくれ。YUTAROを反面教師にしてくれ。
この話は「アホ回」と見せかけて、実はすごくためになる話だったのだ。
ジャケットの胸ポケットには、しわくちゃになった網タイツが入っていた。
天使からの最初で最後のプレゼントだ。
俺はそれ見るたびに、苦い顔をしながらティッシュを消費する。
ーーー終わりーーー