諦めたその時、彼女からメールが届いた!
大阪子が「行方不明」になって一週間が経った。
YUTAROはもう彼女を「探す」のを諦めて、ゲームだの漫画だのDVDで、このおかしな環境から現実逃避をするのがやっとだった。
少しでも彼女のことを考えてしばえば、心臓が握り潰されるような気持ちになった。ウチの親にもなんて説明すればいいのか解らない。
急に訪れるストレスから身を守るためには、「何もしない」けど「何かしている」状況が楽だった。
季節はいつの間にか6月になっていた。
あと一週間ほどで「ワールドカップ南アフリカ大会」が始まる。
テレビではどのチームが勝つのか?日本が強豪に勝利して決勝トーナメントに進むにはどうするべきか?なんていう話題でもちきりだった。
そして俺は、今日も「朝の始まり」としてエロ動画をパソコンで拝見しようと思っていた。
「あっいけね・・もうティッシュがないや」
ティッシュ箱をクローゼットに取りにいってくると、携帯がチカチカと点滅をしていた。
「なんだよ・・」
無気力にメールボックスを開く。
・・・大阪子からメールが届いていた。
「???え?大阪子?」
一瞬何が起きたのかわからなかった。連絡が取れないまま音信不通になると思っていたからだ。
大「おはよう!新居はどうかな?」
届いたのは一行あまりの「怪文書」だった。
「当事者」意識が全く感じられない。まるで久しぶりに会った友人のような「オッス」感。
全く意味が解らなかった。・・だれかこの暗号を訳してくれ。
一気に頭に血が上っていく。・・彼女が現場にいなくてよかった。近くによく切れる刃物がなくて本当によかった。
「ふ~ふふう!ふひい!」
とにかく激してはいけない。
大阪子に攻撃をしてしまえば、再び身をくらます可能性が高いからだ。
今は「話し合いの場」を持たなければならない。
でも、なんてメールを返したらいいか解らないっす!
「おはよう!今日はいい朝だね!」
「ふざけんじゃねえ!」
「うんうん!新居はなかなか快適だよ」
・・・・却下。
ということで
「なんでこっちに来ないの?大阪子になんかあったと思って、心配したわ。いろいろ話したいから電話できる?」
という「大人」且つ「ベタ」なメールを返した。
「・・・・・」
「・・・・返事がない。なんなんや・・。」
これでまた音信不通か・・・?
「おはよう!新居はどう?」が彼女との最後のメールでも構わないと思ったが、最後にもう一度電話をかけてみることにした。
プルルルル・・プルルルルル。・・ちゃんとかかった!
プ・・。いつもならここで「電源が・・」のアナウンスが流れるところだ。
「もしもし・・YUちゃん。」
アナウンスの変わりに聞こえたのは久しぶりの彼女の声だった。
俺はこのまま沸騰してしまいそうだ。