予想外です!赤ちゃん既に産まれてた!
「え?既に産んじゃってたの?」
大阪子は能天気に産んでました。その二日後におめでたい報告を頂いたYUTARO。
俺は、完全に蚊帳の外だった。怒りで子供服の入ったキャリーバックを蹴り飛ばす。
本当にコイツはどんな神経してるんだか・・。
よく考えると大阪子という女はいままで本当に予想外だった。
- 最初のエッチで「ローター」持参
- 大阪ではお店の店長の愛人をしていた
- 「大阪⇒札幌」に移住する
これだけでも充分すぎるほどだが、
- 散歩中に行方不明になる
- 突然に家出する
- 引越し後行方不明になり音信不通
もう「裸の大将」かと・・。おにぎりはそこまで好きじゃないけど。
- 妊娠5ヶ月まで気がつかない
- 占いで結婚を決める
- いつの間にか産んでる。
- 美人だけどサイコパス
あげてみると彼女の「プロフィール」はエラいことになった。俺もよくこんな女と結婚しようと思ったもんだ。
んで赤ちゃんの画像は俺に似てたのか?
過呼吸気味の息を押さえつけ、再びメールを見る。・・というより添付されている画像を見た。
そこには大阪子と一緒に我が子(仮)が写っていた。玉のような可愛い女の子だ。
「うわあ~こりゃ俺に似てるな!もしかしたら一重かもな・・」
「違うもん!私に似てクリクリお目目だよ!」
「いやいや、これはおばあちゃん似だねえ~」
そんな平和な「似てる」合戦を繰り広げるのではなく、俺の場合は「マジなヤツ」だった。とにかく産まれた嬉しさなんかよりも先にそれだった。
「本当に俺の子か?」確かめるべく「似ている」箇所を探してみる。
‥全然わからねえ!
低画質の写メだけで判別なんてつくはずもない。
似ているどうか以前に「赤ん坊」は「赤ん坊」でしかなかった。小さくて可愛くサルっぽい・・それだけだったのだ。
「おめでとう!頑張った!二人とも元気そうで何よりだね。じゃあ10日後くらいに○○(子供の名前)に会いに札幌に行くね。」
怒りと戸惑いを押さえつけながらメールを送り返した。
事後報告であっても、もう大阪子を責めもしない。淡々とやるべきことをやるだけだ。
まさかDNA鑑定するために札幌に帰ってくるとは・・
※この辺りに噂の”占い師”が潜んでいるらしい‥。
3週間後・・俺は3ヶ月ぶりに札幌に帰ってきた。
3ヶ月前はまだ家庭や家族への「夢」を抱いていたと思うと、なんだか「全く違う人の人生」を送っているような気持ちになった。
もう「旅行」でしかこの場所を訪れないと思っていたし、この街で暮らしたことは将来の「いい思い出」になると思っていた。
それが・・今はどうだ?まさか産まれた子供(仮)のDNA親子鑑定のために札幌に帰ってくることになるとは・・・。予想も準備もできない事態だ。人生ってものは一寸先はわからないものだ。
既に疲れていたので、コンビニで弁当とビールを買って、ホテルにチェックインした。
明日の昼に大阪子と赤ん坊はこの部屋にやってくる。俺は彼女たちをどんな顔で迎えればいいのだろうか・・?
「ダメだ・・酔っ払って寝てしまおう・・なるようになるさ。」
500ml缶のビールを立て続けに三本煽って、床に就いた。
・・が2時間後には目が覚める。そこから眠れなかった。
風呂場の換気扇の下でタバコを吸うために何度も往復した。
DNA検査キットを開けて、検査器具をチェックし、説明書を読んだ。何度も。
ベッドに入っては電気を消し、結局、寝れないので灯りをつけた。何度も何度も同じことの繰り返し。
そんなことをしているうちに夜は明け、廊下を行き来する足音や掃除機の音が聞こえるようになった。
もう10時か・・?後2時間くらいで大阪子とその娘はやってくる。
「おはよう!今日はいい天気やね~!なんかあったらアレだからタクシーで来なよ?」
メールを送る。
そもそも彼女は来るのだろうか?その保証はできない。