「あけおめ」今日は衛生女に会う日。
昨日は久しぶりに一人だけの静かな夜を過ごした。
少しの間でも実家で過ごすと、家族の賑やかさというものは体に染み付いて行く。
シーンと静まり帰った一人暮らしの夜はやはり孤独を感じさせる。
それが福岡で過ごした初めての正月だった。
夜が明ける。「三が日」も今日で終わり。俺は何度も携帯を開き時間を確認する。
(まだかな・・まだかな・・。)
人恋しさも募ってか、彼女の到着が待ち遠しい。
ブーブーブー!正午を回って携帯がバイブする。衛生女からだ。
衛「YUくん。博多駅に到着したから。」
「おう!迎えに行くわ!」
久しぶりに車に乗り込んで博多駅へと突っ走る。
平常時に比べると道はまだまだ空いているが、3日ともなるとこの街も人の気配を多く感じる。
博多駅の筑紫口へと到着し、バス停を過ぎたローソンの横に車を停めて彼女を待った。
(そう言えば・・昔・・このローソンでアポの待ち合わせしたっけ?誰だったっけ?)
必死で記憶の糸を手繰るも、顔も名前も思い出せない。
脳内であの頃の情景が靄の掛かったセピア色で映し出されるだけだった。
コンコン・・。
音の場所を見るといつの間にか衛生女が立っていた。
満面の笑みをこちらに向けている。
ウィーン。
衛「あけおめー!」
「ことよろ~。」
衛「ってちゃうちゃう!窓じゃなくてドアの鍵開けて!」
「あ・・ごめん。荷物は後部座席にでも置いといて。」
衛生女は何やら沢山の荷物を手に持っていたが、正月ボケな俺は荷物を載せるのを手伝うのをすっかり忘れていた。
「てか凄い荷物やね・・」
衛「お土産とか野菜とかいろいろ入ってんの。」
荷物を載せ終わると、車は博多駅を発った。
「実家どうだった?ゆっくりできた?」
衛「そらもう食っちゃ寝よ!お正月は親戚一同がウチに集まるから手伝いとか忙しかったけど・・。それより・・。」
「・・・なに?」
衛「ほれ・・久しぶりにちゅして。」
照れながら言う彼女の唇に軽くキスをする。
それから彼女は手を握ってきたり、腕に組み付いたり妙にベタベタしてくる。運転中は危ない。
「っちょ・・危ないって。」
衛「だって久しぶりだったし・・。」
「久しぶりつっても1週間じゃん。いつもと変わらん。」
衛「あ・・よく考えたらホントだ。なんか久しぶりに感じた。」
「なんかわかるわ。実家帰って時間持て余してたのもあるのかも?」
衛「じゃあ久しぶりってことで。」
そんな感じで近所にあるサニー(スーパー。西友と同じ)に到着。
そう今日は彼女の手料理を食うになのだ・・。
出来上がるのはちゃんと食える物だろうか?それとも・・?