男という生き物は一度でもセックスできると、次も簡単にエッチできると思ってしまう。
そして、女性からおあずけを食らって、セックスできなかった時はものすごく残念な気持ちになる。
俺は何度もこの感情を味わってきた。しゃぶり尽くされたスルメのように。
「犬の気持ち、猫の気持ち、アホの気持ち」である。
けれど、エッチができなかったからと言って無理をしていけない。
「なんでセックスさせてくれないの!」とワガママを言ってもいけない。
「キミとはセックスだけじゃないんだよ。」
「キミといる時間のほうが大事なんだ。」
その態度を全面に出し、性欲を抑え、次を信じるしかないのだ。
これは、そんな悲しいサガに支配された男の話である。
筑紫女:出会い系の旅の途中の福岡でハッピーメールを通して出会った、本仮屋ユイカ似のOLさん。福岡県の筑紫野市に住んでいる。
福岡人ながら標準語をたくみに操る。前回のアポで糸島へデートへ行き、勢いでエッチをした。
エッチした後に本命女に会いに行くクズ男。
午後7時。俺はガールズバーの女とラブホテルの入り口で解散する。
(・・はたから見れば、援交終わりのオッサンみたいに見えるかも。)
これから、もう一人の女と会うことになっている。その女こそが今日の本命。一番会いたかった女だ。
俺はラブホテル前のコンビニでタバコを一本くわえた。冬の風が火照った体を冷やしていく。んあぁ心地がいい。
運よく、今日の待ち合わせは天神駅だ。ここからなら、歩いて5分とかからない。
昼間に飲んだ酒もずいぶん醒めた。
(・・まだ呑める。)
それより心配なのが、筑紫女とエッチな状況になったときに、もう一回戦できるかどうかだ。
我ながら思う。俺の思考は腐っていると。
あざとさにヤレられる男。
俺は天神駅の改札前で筑紫女を待っていた。多くの人が改札に吸い込まれ、吐き出されていく。
筑「YUさーん!お待たせしました~♪」
筑紫女が元気ハツラツで、ファイト一発な声を出しながら駆けてくる。
彼女はタイトスカートに、シンプルな黒のパンプス。清潔そうな白いシャツの上に、ひざ上丈のベージュのコートを着ている。
シンプルだけど清潔感も色気もバッチリ。まさに俺好みのかっこうだ。
(・・今日はどんなパンティはいてるんだろう?)
筑紫女は清楚な雰囲気とは裏腹に、ベッドの上ではスケベだった。
筑「ねぇ、YUさん何食べますぅ~?」
彼女は猫なで声で腕を絡めてくる。そのあざとさがとても良い。
筑「あれ~なんかお酒臭い。」
彼女が俺の首元をくんくん・・と嗅いでいる。
くすぐったい気持ちになって、ほくほくと顔がほころぶ。
「あはは・・昼間にビール飲んだからね。」
筑「こらー!いけない大人だ。」
筑紫女に会って1分も経たないうちに、俺は確信した。
(もう一回戦どころか、これは朝まで頑張れちゃうぞ♡)
大名のスペイン料理屋「SANCHO PANZA」へ
「俺、福岡の店とかあんまり知らないからさ、筑紫女のオススメのお店連れてってよ。」
筑「そうですねえ・・スペイン料理とかどうです?大名にね素敵なお店があるの!」
「おっ!シャレオツですな!(おいおい、スペイン料理とか食ったことねえぞ。)」
筑紫女に手を引かれ、お店まで案内してもらう。
入ったのは大名一丁目にある「SANCHO PANZA(サンチョ・パンサ)」というスペイン&中南米料理の店。
広いテラス席もあり洒落た雰囲気だ。
筑「このお店、料理もお酒も美味しくて、最近ハマってるんですよぉ~。」
「へぇ、よく来るの?」
筑「実は、まだ二回目なんです~。」
たった二回でハマっていると言えるのか?
いや、俺は筑紫女に会って二回目だ。だけどハマってしまっている。
スキになるのは会った回数だけではない。それは複雑で、時に単純な理由だったりする。
「筑紫女はオシャレなお店たくさん知ってそうだね。」
筑「ミーハーですから♪」
「ドリンクは何飲む?」
筑紫女がサングリアという謎の飲み物を注文した。
筑「私、サングリア大好きなんです~♡ 今度イビザに行くからお土産に買ってきますね~♪」
(サングリア?イビザ?・・パチンコ屋の話かな?)
ちなみにサングリアはワインにフルーツを漬け込んだカクテルらしい。きっと芋焼酎みたいなものだろう。
俺は安定のビールでスタートを切った。最近、痛風が心配だ。
「へぇ~筑紫女はよく海外に行くんだ。俺、まだ外国に行ったことない・・。」
筑「えー!若いうちに絶対行ったほうが良いですよ。」
「英語が全くダメでして・・。大学で英語の単位貰うのに、先生に土下座したもん。」
筑「わたし、留学してたから日常の英語くらいなら喋れますよ♪いつか二人で行きましょ。」
(海外旅行とか、留学とか・・。この子ホントはお嬢様?エロいのに?)
「一緒なら心強いわ。海外バージン捨てる手伝いしてちょ。」
筑「なんか言い方がやらしい~!」
女の子が下ネタにノってきたらヤレる予感。
ワインのボトルがもうすぐ空になる。楽しすぎる時間は普段の二倍速で過ぎていく。
筑「私ね。留学してる時アメリカ人と付き合ってたの。」
「マジで?・・やっぱりチ〇コ大きかった?」
カリフォルニア人のカリは仮なのか?真正なのか?
筑「うーん。・・YUさんのほうが大きいかな?あはは。」
「嘘付け!そういう配慮は逆に傷つくぞ!」
俺は知っている。30年近く生きていれば気が付く。自分が粗チンであることに。
アクロバティックSEXをするお嬢
「じゃあさ、今までどんな場所でエッチした?変わった場所でとかある?」
筑「そうですねぇ・・海の上とか?」
「う、海の上?わかった!船の上ってこと?」
筑「ブッブー!惜しいけど違います。ジェットスキーで疾走しながら、エッチしました。」
「ちょ・・どんだけアクロバティックなセックスしとんねん。命がけじゃねーか。」
筑「えへへ・・だってアメリカですもん。」
おいおい、アメリカ治安悪すぎだろ・・。
「いや・・さすがに話盛ってる?」
筑「あはは!本当ですって!運転はするのはわたしで、カリフォルニアは後ろで頑張ってました。」
筑紫女はとつぜん席を立ち上がり、腰を突き出して、その時の状況を詳しく説明し始めた。
(この子・・酔うと下ネタの切れ味がスゴイな。)
とにかく俺達はいろいろな話で盛り上がった。てか後半はほとんど下ネタだった。
こんな話ができるのもアルコール様のおかげである。
そして、下ネタが盛り上げる時は、「お持ち帰り」も期待できる。
お互いが脳内でセックスを連想しているからだ。しかし自然な会話を心がけつつ、この状況を作り出すのは案外難しい。
終電タイム。ホテルに誘って食い下がれ。
「いやぁ!飲みすぎた~。」
筑「楽しかったですぅ~♪」
気がつけば、もう午後11時をまわっている。
(もっと一緒にいたい。・・ホテル誘っちゃう?)
このまま筑紫女と一緒にいられたら・・考えるだけで、心の我慢汁が止まらない。
「ねぇ、このあとどうする?」
筑「このあとですか?うーん・・今日はもう帰ります。」
「え?帰っちゃうの?こんなに楽しいのに?」
筑「でも終電の時間近いし。」
終電・・。男を絶望のふちへと叩き落とす、悪魔のフレーズだ。
(何か対抗する方法はないか?)
俺は必死で考えた。
「た、タクシー代出すから。」
筑「そんなの悪いですょ~。しかも筑紫野までタクシーだと、めっちゃ高いんです。」
「ま、まじか・・なんならホテルで一緒に泊まってく?」
俺は食い下がる。彼女とヤリたい。この機会を逃したくない。
筑「もっと一緒にいたかったけど・・明日、出張があるの。だから朝早いんです。」
これ以上しつこく誘えば、嫌われてしまうかもしれない。
むしろ、終電ギリギリまで一緒にいてくれたことに感謝しよう。
明日があるさ。ありがとう。
おあずけされても、希望は次回に繋ぐべし。
「じゃあ・・また会える?」
筑「土曜日はどうですか?今週か、来週。」
「来週なら大丈夫だよ♪」
本当は全然大丈夫じゃない。だけど、好きな女と会えるなら我慢我慢。希望は次回に繋ぐのだ。
筑「じゃあ、ドライブしましょ♪ 私、お弁当作ってきますから!」
「ま、マジで?弁当まで作ってくれるの?」
ああ・・女の子の手料理なんて、どれくらい食べてないだろう。
食べる前からハートがほっかほっか亭だ。いっそ・・このまま福岡に住んだろか?
筑「土曜日だったら次の日休みだし、YUさんとゆっくりできますよ♪」
「ゆ、ゆっくり?」
筑「そう、ゆっくり♡」
また、楽しみがひとつ増えた。あんなこと、こんなこと出来たらいいな。
キスぐらいはさせてください。
俺と筑紫女は警固公園(けごこうえん。福岡の天神のある公園)を横切っている。天神駅まで見送るためだ。
筑「警固公園って、福岡でも有名なナンパスポットなんですよ♪」
「へぇ・・確かに若い男女が座って話しこんでるね。」
筑「えへへ、実はわたしもこの前ナンパされたの。だけどYUさんはナンパしちゃダメだからね!」
「は、はひ。(キュピーン♡)」
警固神社(警固公園の横にある小さな神社。)の中に入ると、人の気配が少なくなる。
ボクちんは筑紫女のかわいさに我慢の限界だった。
俺は急に立ち止まると、筑紫女にキスをしてみた。唇と熱い吐息がぶつかる。
筑「こんなところで・・恥ずかしいよ。あとお口臭い。」
「(ガーン!)ご、ごめん。いこっか。」
まさかの口臭NG。・・フリスクプリーズ。
筑「じゃあ、来週の土曜日で♪」
「うん、気をつけて帰ってね。」
彼女は駅の中へと消えて行く。
(一人で帰るのは寂しいでやんすなあ・・。)
今日もまた車中泊だ。筑紫女とは違って、ボクには帰る家が無い。