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もう一つの告白への答え

そしてもう一人・・筑紫女への返答

今日は金曜日。魚女とお付き合いを初めてもうすぐ一週間が経とうとしている。

気がついたことと言えば彼女はあまりメールが好きではないこと。

付き合いたての熱い時期なので電話でのやりとりが繰り返されるが、もちろん電話代がかさむ。

それでもいい。彼女の甘いぶりっ子声を聞くことができれば。幸せな時間はプライスレスなのだ。

明日は二人で角島までドライブをすることになっている。

角島は山口県の下関あたりにある海がクッソ綺麗なスポットだ。

九月ではクラゲにヤラれるので海には入れないが、あの綺麗な海を拝むだけでも充分に楽しめるはずだ。

引きこもりがちで旅行好きな中年は喜々として観光プランを脳内で練っていた。

しかし時折すーっとブラックホールに吸い込まれるように意識が持っていかれる。

その意識の先には筑紫女がいた。

俺はまだ彼女の告白に返事をまだしていない。

「ふ、二股とか・・。」

ご存知の通り俺は根がクズだ。

今までは「自由恋愛」という言葉のもと多くの女性と絡んできた。

だから「二股」をすることに関してはそれほどの抵抗は無い気がする。

一線を踏み越えてしまえば、

「何股まで出来るかな?」と日記のゲスレベルは青天井に上がっていくのかもしれない。

しかし相手が悪い・・筑紫女というのが問題だ。

明るく陽気で、無邪気な彼女。そして結婚適齢期だ。

こんな自分勝手なダメ男とは関わってはいけない。

俺は傍らに置いてある携帯に手を伸ばした。

そしてアドレス帳から彼女の名前を探し出して、耳に当てた。

出る?出ないで。出てよ。

呼び出しのコール音と共に心臓は高鳴った。

筑「もしもし。」

いつもとは違う静かな筑紫女の声。

「あの・・こんばんわ。今電話ちょっといいかな?」

思考が絡まって、おかしな日本語が飛び出す。

筑「はい・・。」

「あの・・その・・この前の返事なんだけど。」

筑「うん・・。」

ゴクリと喉がなり、緊張で声がしゃがれる。

「・・ごめんなさい。お付き合いできません。」

筑「そうですか・・。あはは振られちゃった。」

「本当にごめん。」

筑「あはは・・ずっと返事来ないから諦めてましたw」

「遅くなってごめんね。」

筑「でも今まで通り友達として仲良くしてくださいね!」

筑紫女は断られた理由も聞かずに電話越しに笑う。お、大人や・・。

「うん。ありがとう。」

筑「それじゃあ私・・飲みに行ってくるんで!」

いつも通りの明るい声で彼女は電話を切った。

テレビはついたままなのに、シーンとした空気が広がる。

ソファに倒れこむと口から深い溜息が出た。

体の力が抜けるこれは安堵感なのか、それとも虚しさなのか・・。

とにかく筑紫女の告白はケリがついた。

そんな彼女との再会を果たすのはこの年の暮れ。

俺が名古屋に帰る直前だった。

 

続く➡下関デートのおかもと鮮魚店の海鮮丼と絶景!角島大橋