「牽制?」様子を伺う俺。妙にご機嫌な彼女。
風呂から上がった苺女は、小さな鏡の前で鼻歌まじり顔に化粧水を顔に塗っている。
もともと化粧っ気があまりないので、すっぴんになってもほとんど変化はない。
ツルンとしたシワの全くない肌は、さすが20代前半と言ったところだ。
(それにしても、さっきの言葉は一体何だったんだ?)
「前の彼女さんとかそういうとこ気が付かなかったのかな?女としてダメだよね。」
ある意味、俺に対しての「牽制」とも取れる言葉である。
現在進行系で二股生活をしているから妙にズシンとハートに響くだけかもしれないが・・。
ただ、彼女が得に不機嫌になっている様子はない。むしろご機嫌なのが逆に怖い。
俺は内心ビクビクしながら、彼女の顔の上で鳴る「ピチャピチャ」という音を聞いていた。
「じゃあ・・俺も風呂に入ってくるね。」
苺「うん。浴槽の掃除してあるから浸かるならお湯ためてね♡」
「お、おう。ありがと。」
こういう所は、さすが家事デキルガールである。
洗面所に行き、服を脱ぐ。そして風呂場のドアを空けた。
目を凝らしてみると風呂場の床は少し湿っていたが、水滴が見当たらない。きっとシャワーを浴びた後にタオルで拭き取ったのだろう。(デキル!)
そして明らかに細かいところがキレイになっている。
うっすらとピンク色(カビ?)になっていた排水溝やホコリとカビが付着していたパッキン部分もピカピカに白くなっていた。
(アイツ・・ここまでとは・・。でも日常的にこのレベルを維持するのはちょっとキツイな・・せめて髪の毛だけでも気をつけなければ・・。)
シャワワワワー!
俺は、頭を冷やすためにも少しぬるめのシャワーを浴びた。
風呂から上がると、彼女がこの前買った『じゃらん』を真剣な顔でマジマジと見ている。
苺「YUちゃん!YUちゃん!」
「え?な、なに?・・どうした?」
俺は、また何かを発見された気がしてドキドキした。
苺「私・・やっぱり鹿児島に行きたい!」
「え?・・でも雲仙は?」
苺「じゃらん見てたら雲仙よりも鹿児島のほうが・・ダメ?」
「いや・・まだちゃんと決めてないから、別に鹿児島でも大丈夫だと思うけど・・。」
苺「じゃあ鹿児島にしていい?誕生日だから旅館代は私がプレゼントする!ね!そうしよ!」
「お!いいの?」
そうしていただけるならありがたい。
苺「うん!じゃあさっそく予約しちゃおう!」
彼女の若い好奇心はあれもこれもとやりたいことが泉のように湧き出してくる。
・・・羨ましい。
苺「でも私の誕生日は雲仙に連れてってほしい~。」
「・・・ごめん誕生日いつだっけ?」
彼女から軽く肩パンを食らう。
苺「もう!忘れたと?4月の○日ばい!」
あと3週間ほどだ。まさか同じ月だったとは・・。
「わかった!んじゃ苺女の誕生日は雲仙で決定やね。」
ということで4月は大忙しである。
数日後には2人で鹿児島に行くことになってしまった。
そして・・その前に衛生女と過ごす俺の誕生日がやって来るのである。