嫁が新居にやってくる日、空港まで迎えに行く
朝がやってくる。しっかりと布団で寝れたせいか体も軽い。
今日は名古屋に引っ越してきて三日目である。とうとう大阪子がやってくる日だ。
そろそろメールでも来てるかな?携帯をチェックする。
しかし、大阪子からの返事はない。
おかしい・・メールも届いているはずなんだけど・・。
「もしかして携帯なくしたとか・・?あいつは意外とドジなところがあるし・・。」
一抹の不安を抱きながらもトイレ掃除をする。
便器をピカピカにしていると幾分、気持ちも落ち着いてくる。
やっぱりトイレの神様っているんやでえ~。この歌がブレイクしたのもこの年である。
「そろそろか・・。」
窓の拭き掃除を全部終えたあと、YUTAROは車のキーを取り出した。
大阪子を空港まで迎えにいくためだ。
「空港着いたら連絡いれてちょ!そろそろ迎えにいくから。」
大阪子への何度目かのメールも返事がない。まあたぶん飛行機の中だしね。
それでも、不安はどんどん大きくなっていく。
モヤモヤとした気持ちのまま車は走りだした。
久しぶりの名古屋の都市高速と名古屋走りに焦りながらも中部国際空港へ到着する。
埋立地にできただだっ広い敷地は、まだまだ殺風景だ。
駐車場に車をとめると、国内線の到着口に向かって歩く。
途中のコンビニで大阪子用のミネラル麦茶を買った。
一か月前にはあの出口から二人で出てきたんだっけ?早いものだ。
「飛行機ついたら出口で待ってるから連絡して。」
そんなメールも一応送信しておいた。
万が一大阪子が携帯を失くしているとしても出口は一か所だ。
ここで見張っていれば会えないということはない。
そして、大阪子が乗っているはずの飛行機が到着した。ほぼ到着予定時間どおりに着いたと言っていい。
飛行機を降りてからしか携帯の電源は入れられないので、そのタイムラグを計算して電話をかける。
プルルルル、プルルルル。
かかっているにはかかっている。電源は入っているようだ。
・・・が彼女は電話には出ない。
やっぱり携帯失くしたか、もしかしたら故障かしら?
やがて荷物を受け取った乗客たちが出口から吐き出されてくる。
念のため電話をかけ続けながら出口を見張る。
出迎えの人たちも少しづつ消えていく。
「あ、あれえ・・?おかしいなあ~。」
独り言をつぶやきながら30分、一時間と経っていく。そこに大阪子の姿はなかった。
もう新千歳発⇒中部国際着の飛行機ではない乗客がどんどん吐き出されていく。
それでも見逃すまいと目を凝らす俺。
これは、人間ウォッチングなんて生易しいもんじゃねえ・・。
空港は適温に保たれているにも関わらず、額からはとめどなく汗が流れ落ちる。
一体何があったというのだ・・?
おかしい、おかしい、オカシイ・・。
もはや人知のおよばぬ事態があったとしか考えられなかった。
そして・・ついに・・。
「おかけになった番号は現在電源が入っていないか、電波が届かない場所にあります。」
ゴッド・・!俺は天をあおぐのだった。
いつの間にか、外はもう暗くなり始めている。