もう時間がない!筑紫女と再会の2時間前・・
「はあ・・はあ・・」
枕に汗がにじむ。なんだか熱が上がって来ている気がする。
だが、もう少しであの子に会わねばなるまいて!
俺にとって福岡という地は特別だ。
あの頃の俺はまだ純粋で、その頃の彼女に惹かれて、約半年間住んだ場所だ。
結果的に振られて、札幌という街に住むきっかけになった。思い返すとなんとも無茶苦茶な人生だわ。
あれからどれだけの月日が経ったろうか?
俺は再び、この西の都に心惹かれている。
ただ、体調は思った以上に回復しなかった。
俺に神様が味方しているのなら、熱は下がって、何気ない顔で酒を飲んでいることだろう。
しかし、現実はそんなに上手くいかないのだ。
ピピッ!体温計から終了の合図が聞こえる。
「ええ?38.5度?」
全然熱が下がってねえ!あのヤ○医者め!
「このまま、名古屋に帰るべきか・・・」
リタイアを考えるほど、体が「NO」を突き出している。
「でも・・会うべき人がいる・・」
しかし気合でどうにかなることじゃない。
ホテルの壁を伝いながらトイレに行くのがやっとだった。
「ここで無理をすることもできる。そうなると翌日はリタイアするかもしれない・・」
まるでアスリートのような意識になってしまっている。
今日は俺の好きな女とのアポなのだ。
死ぬか、生きるか・・?その相手は筑紫女だった。
筑紫女との過去お話⇒今日も晴れなり!
※筑紫女は結構日記に書いているので見たい方は検索フォームから「筑紫女」で検索してね!
筑紫女を簡単に説明すると、可愛くて、明るくて、清楚系。そしてエロい・・・。魅力的な女性だ。顔は本仮屋ユイカに似ている。前回の出会い旅のMVPである。
体を重ねている。親しみも深い。まだお互いの時間が短い、百合子とはまた違う福岡の相棒なのだ。
大阪子の妊娠騒動により、一度はアドレス帳から抹消された彼女だが、「バックアップ」という最新技術によって救われた。
「YUTAROさん、また福岡来るんですね!是非飲みにいきましょうよ♪」
彼女は再会することを喜んでくれた。敬語も健在だ。
「ぐぬぬ・・熱よ下がれ・・」
さっきから何度も熱を測っているが、38度を割り込むことはなかった。
会うか会わないか最後の決断
結局アポの1時間前になっても体調が回復することはなかった。
決断をしなければならない。会うか、キャンセルか・・。
俺は携帯を取り出し、霞む目で画面を見つめる。そして指を動かした。
「すいません。高熱が出ちゃってます。今日のデートは難しそうです。すごい残念だけど、次の機会にしてもらってもいいですか?」
送信ボタンを押す・・。・・終わった。ドタキャンしてもうた・・。
すぐに携帯がバイブする。
筑「ええ!大丈夫ですか?風邪ですか?今日は安静にしてください。なんか買っていきましょうか?」
アカン・・ええ子や・・。百合子といい、筑紫女といい。
連日でこんないい子達とのアポができないとは・・。憎い、自分の脆い体が憎い。
俺は力の入らない手でシーツを握った。
「風邪移っちゃうといけないから大丈夫だよ。本当にごめんね。」
筑「いいですよ。部屋の前に置いときますから。ホテルの名前と部屋番号教えてください。」
な、なんや・・この押し付けがましい親切は・・。涙がとまらねえ・・。
少し時間が経った頃、部屋の前に気配を感じた気がした。・・もしかして筑紫女?
ドアスコープから覗くが誰も経っていない。
勘違いかと思ったが一応ドアを開ける。ドサっという音とともに何かが床に落ちた。
こ、これは・・ファミリーマートの袋?
拾い上げると、ポカリとたらみのフルーツゼリーが袋一杯に入っている。
そして折れ曲がったメモが入っていた。
「早く良くなってくださいね。」
ぐうう・・こんなにゼリー食えねえよ・・ちくしょお・・。
優しすぎるぜ・・筑紫女・・。
優しすぎるぜ・・修羅の国・・。
俺はゼリーを口の中にかきこみながら、復活を誓うのだった。