ワイ、彼氏持ちの女から突然食事に誘われる。
苺「YUさん一緒にご飯に行きません?」
彼女からメールで連絡があったのは、初めて彼女と会ってから2週間後のことだった。
初アポの話➡彼氏持ちの女とデートしてきた結果
皮肉なことに苺女から連絡が入った瞬間、俺はAmazonで彼女(衛生女)にバレンタインのお返しを選んでいた。
(俺から誘うんじゃなくて、相手から誘われたってことは、最初のデートも悪くなかったのかも?)
誘いを断るべきかどうか迷ったが、それはそれ、これはこれ。
「ご飯いいね!・・でも彼氏となんかあったん?」
苺女には彼氏がいる。彼女の倍近くもある40代の彼氏だ。しかも、あまり上手く言っていないらしい。
苺「それは会ってから話します。だから相談に乗ってください。とにかくお酒が飲みたい気分なんです!」
(ほほぉ・・これは。いよいよかしら?)
苺女はあまり酒が強くない。そんな彼女が飲みたいというのだから、何やら大きなストレスを抱えているに違いない。
(女の相談や愚痴は聞き慣れている。むしろ俺のフィールドだ。)
イケメンではない俺がカワイイ子を落とすには、コツコツと信頼を勝ち取らなければならない。
フットワークが命。呼ばれたらスグ駆けつけます。
「そうか・・。よし、お兄さんが話を聞いちゃる。んでいつ会う?」
苺「今日・・じゃダメですか?」
時間は既に午後8時を回っている。まさかのいきなり出勤でござる。
「急だねえw・・別に良いけど。」
苺「やった!・・ワガママ言ってすいません。」
「でもこっちのほうまで、出てきてね。」
彼女の家は遠い。むこうのテリトリーで飲むのはさすがに億劫だ。
苺「職場が博多駅の近くなので、どこでも良いです。」
「あ、そうだったね。もう仕事は終わった?」
苺「はい。終わりました。」
「じゃあ博多駅まで行くわ。時間は・・30分後でいい?筑紫口で待ち合わせしよう。」
苺「ありがとうございます。」
メールを終えると、俺は風呂場に直行しシャワーを浴びる。なぜなら、昨日は風呂に入っていないから。
シャワーを浴びながら歯を磨く。なぜなら、今日は歯を磨いていないから。
わずか5分で身を清め、10分後には「ヨソ行きモード」になっている。ハゲは便利だ。
女と会う時は、部屋の掃除をしておくのがマナー
(ちょ、待てよ?わざわざ俺に会いたいって言ってるわけだし・・今日こそヤレるんでねえの?)
「急いで部屋の掃除や!(見える部分のみ)」
床にクイックルワイパーをかけ、ベッドシーツに掃除機とファブリーズをかける。
まるで早送りで動いているかのように、体がキビキビとよく動く。
「よし!これで泊めれる!連れこめる!」
俺はマンションを飛び出すと、タクシーに飛び乗った。心拍数がアベレージを大幅に上回っている。
5分ほどで筑紫口に到着。時間もジャスト。完璧だ。
俺はタクシーを降りて、駅の入り口をキョロキョロと周りを見渡す。
博多駅の筑紫口は人が多いけれど、慣れれば待ち合わせスポットとしても有用だ。
俺の視界に一人の女が入った。その女はうっすらと光り輝いて見える。
(これは・・運命?)
いや、下心でよく見えているだけだ。でも今日は何かが起こりそうな気がするのだ。
彼氏の相談を他の男にする女は脈アリ?
彼氏の相談を他の男にする女は脈アリなのか?
ケースバイケースではあるが、YUTAROの経験から言えば脈アリなケースが多い。
そういった恋愛相談は女友達に話すのが普通である。女性同士のほうが気軽だし、「結論が出なくても構わない」というスタンスだったりする。
逆に、男性は比較的早く結論を出そうとするので、「いっそ別れちゃえよ」的な過激な意見も出やすい。
もし、相談相手がその女性に好意があるのなら、別れさせる方向に足を引っ張ることもある。
それでも他の男に彼氏の相談をするということは、
- その男を信頼している。
- その男が好きで乗り換えたいと思っている。
- 相談できる女友達がいない。
- 誰でもいいから相談してスッキリしたい。
- ただ単に彼氏の気持ちが知りたい。男性の意見が聞きたい。
- 彼氏と終わりかけている。
- 彼氏以外に男を見つけようしている。(魔性の女)
このどれかだろう。他にもあるかもしれないが、思いつくだけ箇条書きにしておいた。
とりあえず、彼氏持ちの女に相談される男性は、それなりの「好意」や「信頼」を置かれていると思う。
まだ彼女とは会って二回目だが、相談相手に選ばれたということは喜ぶべきことだ。
それに今回は食事もセットだ。口説き落とせる可能性は高い。期待していこう。
彼とケンカした時こそチャンス!相談は親身になって聞くべし。
俺は、すぐに苺女を見つけることができた。
今日もカジュアルな装いだが、女の子ぽくてセンスが良い。
服装にあまり興味がない衛生女とは大きな差を感じる。
「おまた!」
俺はそう言って彼女に近づく。
苺女の顔を間近で見ると、目の当たりが少し腫れぼったいのがわかった。
(もしかして・・泣いたのかな?)
今日はちょっと濃い話が聞けそうだ。
苺「ごめんなさい・・なんか無理言って来てもらって。」
「全然、ちょうどお腹も減ってたし、また会えて良かったよ。」
他愛もない話しでジャブを入れつつ、ホテルブロッサムの地下にある「赤坂うまや」という居酒屋へ。なかなか小綺麗なお店である。
「ジャンジャン食べて飲んで、おごるから!」
苺「そんな・・わたしから誘ったんで払いますよ。」
「いーのいーの。ストレス溜まってんでしょ?てか明日は休み?」
苺「休みじゃないですけど、遅番で12時出勤なんで飲めます!いや、今日は飲みます!」
「おし!その意気や!」
(これは・・アルコール度数の高いお酒もアリやな・・。しめしめ。)
本来のゲスが顔を出す。
「それで、何があったの?」
苺「それがですね・・。私、彼氏と別れちゃったっぽい。」
苺女はため息混じりで言った。
「別れちゃった?ほほぉ・・。そうなんだ。」
俺は神妙な顔で答えたが、内心では「でかした!」と笑顔がこぼれそうだった。
「でもさ、なんでそうなったの?ケンカした?」
苺「この前彼氏の家でご飯作ったんですけど、それが原因でケンカになっちゃって。」
「あらら・・。詳しく教えて。」
ケンカした時の状況をあえて言わせることで、彼氏に対する怒りも再び湧いてくるはずだ。
苺「ハンバーグ作ったんですけど・・焦がして失敗しちゃったんです。」
「あはは・・ハンバーグは焦げるよね。」
苺「それでこんなん食えるか!って彼氏に言われて・・グチグチ怒られて・・。」
彼女が目に涙を浮かべながら語る。よし、いいぞもっとやれ。
彼氏の不満をあおりつつ、優しさをアピール。
「え?ハンバーグ焦がしただけで?わざわざ作ってもらって?それは彼氏が悪い。(ゲス顔)」
俺はナチュラルに彼氏の不満をあおってみることにした。
苺「ですよね?私、全然悪くないですよね?」
「俺だったらご飯作ってもらうだけで、感謝感激雨あられ(昭和)ですわ。」
苺「いつも失敗するわけじゃないし、怒られる筋合いないもん。奥さんでも無いのに・・奥さんでも嫌だけど。」
「そっか・・今まで我慢してきたんだね。」
ここで優しい言葉カケーノ。彼女泣き出シーノ。
「ほれ、これで涙を拭キーノ。」
俺はそっとおしぼりを差し出す。
苺「ぐずぐず・・ありがと。ごめんなさい。」
「彼氏さん更年期なのかもね。ほら、年取るとイライラしやすくなるって言うじゃん。あっ!熱燗2合ください。」
この熱燗が苺女に火をつけることになる。
苺「付き合った頃は凄く優しくて・・大人で・・。でも最近はストレスのはけ口にされてるかも?って感じる。」
「うわぁ・・対等な関係だと思わってないのかな?下に見られてるとか?」
苺「うん。それはすごい感じる。すごい上から目線でもの言うし。」
「そっか・・。本性がそういう人なら付き合っていくのは厳しいかもね。」
俺は、少しずつ彼氏の不満や嫌な部分を意識させるキーワードを入れていく。
自分が酔っぱって頭が回らなくなるまでに、上手くこなさなければ。
苺「最近は彼氏とケンカする事が多かったし、もう限界だと思ってそのまま帰ったの。」
「ほう・・」
苺「それから、もうやっていけないって・・あの人にメール送ったの。」
「んでその後は?彼氏から連絡来た?」
苺「来まくりだけど、ガン無視してます。」
お酒こそ感情を引き出す最強の武器。
ここでようやく熱燗が到着する。お酒は口説くための最強の武器である。
「まあまあ・・とりあえず一献。」
苺「私、日本酒はちょっと・・。味が苦手で。」
「じゃあ・・一杯だけ。」
彼女の徳利に熱いのを注ぐ。乾杯。
苺「ファー!めっちゃお酒だぁ!アレ?・・でも、美味しいかも。」
「それはね、ストレスで体がアルコールを欲してるんやで。」
杯を一献、二献、そして三献と傾けていくうちに、苺女の顔は真っ赤になっていく。心なしか目も座ってきている。
そして、異変は起こるのだった。
酔っぱらって感情を爆発させろ。
苺「ほぉお~なんか熱くなってきたばぁい。顔がぽっぽする~。」
苺女は熱燗を数杯を短時間で飲み干した。
酒豪が多い福岡といえど、彼女はまだ22歳だ。
俺に敬語を話していたさっきまでの彼女はいない。なんだか精神年齢もずいぶん下がって来ている。
(飲まさないほうが良かったかも・・?)
戸惑いと罪悪感にかられながらも、徳利を傾けて酒を注ぐ。
空になった酒をもう2合ほど追加しておく。
※ここからあえて博多弁も交えてお送りします。
苺「なんかぁ!ムカつくばい!」
「・・え?すいません。」
苺女が凶暴化している。
さっきまで「あはは、日本酒って美味しいですね!」なんて言ってたのに・・。
苺「違う!YUさんの事じゃないと!彼氏のことばい!オッサンのクセに偉そうに!」
思い出し笑いじゃない・・これは思い出し怒りだ。
こうなると下手に刺激しないほうがいい。
「・・彼氏の事はもう忘れなよ。別れたんでしょ?」
苺「ん?んん?あーし別れたんでしたっけ?」
「さっきそう言ったような・・w」
(なにこの子・・酒飲むとオモシロイじゃない。)
でも、次回からは日本酒は与えないことにしよう。
苺「あれぇ?ちゃんと別れとるとかいなぁ?ウチら。」
「・・当事者にわかんないなら、俺にはもっとわからんけど・・。」
苺「なんか腹立つ!ハラタツノリ!」
「・・え?」
まさかここで昭和なダジャレが飛び出すとは。
苺「ちょっと電話してくるばい!アイツに言いたいこと全部言ってくる!」
「・・ん?今から?誰に?彼氏?」
苺「うん!ぶちまけてくる!YUさんごめん!ここで待ってて!」
「・・はい。」
苺女は自らの携帯をつかむと店の外へと出て行った。
今から決着を付けてくるとは・・そこら辺の男よりも、よっぽど男らしい。
酔っぱらうと、感情の制御が効かなくなる人がいる。
ある意味パルプンテ的要素だが、これによって女の子との距離を一気に縮めることもある。
ポツーン・・。
テーブル席には俺だけになった。はたから見れば、ケンカしたように見えるかもしれない。居心地が悪い。
店員「お、お待たせしました。熱燗二合です。」
店員さんが恐る恐る、熱燗を持ってきてくれる。
俺はそれをお猪口に注ぎ、光り輝く水面をまじまじと眺めた。
(・・日本酒って怖えなぁ・・。)
彼女を待つこと15分。そろそろ新手の食い逃げを疑い始めた頃だった。
苺「うぅ!寒かぁ!」
彼氏との電話を終えた苺女が帰ってきた。
15分前よりも頬の赤身が薄くなっている。きっと少しは酔いも覚めているはずだ。
「・・大丈夫?どうなった?」
放置された側としては、ホッとした反面、会話の内容に興味深々である。
苺「私ね。冷え性なんです。」
「うん知ってる!いちご狩りの時にそれ聞いたからね!彼氏との電話のこと聞いただよ。」
会話がかみ合わない。これから、ちょっと苦労しそうだ。
「んで?彼氏に言いたいこと言えた?ホントは仲直りしちゃったりして笑」
俺は早口で畳み掛ける。
彼女は浮かない顔でフッと短いため息をついて、お猪口に残っていた日本酒を飲み干すと、また短いため息をついた。
そして、自ら落ち込みおかわりを注いだ。
「こ、これ以上飲むのはやめといたほうが・・。」
俺は彼女の表情と行動で「いい結果」にならなかったことを悟った。
マジで彼氏と別れちゃった。
苺「・・聞きます?」
「いや、そこは聞くでしょう。あんなに躍起になって飛び出して行ったんだから。ずっと待ってたし。」
苺「まずね。最初にめっちゃ怒られた。なんで連絡とれんと?って。」
苺「俺がどれだけ心配したかわかっとるとか?キサン!・・とかなんとか。」
(うわぁ・・彼氏さん北九州とか筑豊の人やん。)
苺「あぁもう!電話ごしに怒鳴るから耳が痛か!」
最初に会った頃の癒やし系はもういない。
「それで?なんて返したの?」
苺「こっちも怒られてカチーンきたったい。私になんか言うことないと?謝ることないとね?って言った。」
「そしたら?彼氏なんて言ったの?謝った?」
苺「んでヤツはなんのこと?ってシラ切ったんよ。酷くない?」
(徐々に口が悪くなってきてんな・・)
「あらら。謝らなかったんだ。」
苺「ちゃんと謝れたら許してあげようと思ったのに・・。いいオッサンなのに謝ることもできないなんて、アイツ脳になんかあるばい!」
「はは・・謝るの苦手な人って結構いるよね。とりあえずオッサンを代表して俺が謝るわ。ごめんなさい。」
苺「私もプッツン切れて、この前のこととか、ムカついとぉこととかも全部言ったんよ。」
俺のギャグはあっさりスルー。・・悲しい。
「それで?」
苺「彼氏に逆ギレされたっちゃん。お前みたいな、女の風上にも置けないヤツとは付き合えないって言われた。」
「風上」とか付けるだけでそれっぽく聞こえるのはなぜだろう・・。
「え?ってことは?」
苺「こっちから別れるつもりで・・最後に文句言おうと思って電話かけたのに・・先にフラれたと。」
そこで俺は吹き出してしまった。こんな時に笑ってはいけない。だけど無理だった。
苺「笑わんで!すっごく悔しいんだから!」
「ごめんごめん!・・まぁ結果は同じなんだし。」
苺「なにがよ?」
「彼氏と別れるって言う結果。」
苺「確かにそうっちゃけど、余計にストレス溜まったばい。・・ジーザス!」
「でも、嫌いになったほうがスッパリ忘れられるって・・言うやん?」
苺「うん。それはそうだけど・・。」
ジェットコースターのように、激しい感情を出したせいで、苺女の顔には疲労の色が見える。
「とにかく彼氏と別れてフリーになれたね。さぁ乾杯しよう♪」
お持ち帰り?家に呼んだら来るらしい。
「まあ今日はとことん飲もうぜ!なんならウチで飲み直す?」
まだ午後10時過ぎ。誘うにはちょっと早いかもしれないが一か八かだ。
苺「YUさんち・・ここから近いと?」
「美野島だから、近いっちゃ近いかな?」
苺「じゃあ、お邪魔しよっかな?でも、エッチなことしちゃダメだよ。」
「ファー!下心見抜いちゃって!」
しっかりとクギを刺されるが、女性にとってこのセリフは社交辞令みたいなもんだ。
どうにでもなる・・はず。
「よし!コンビニでお酒買って行こう。うちに美味いチーカマがあるんよ。」
とにかく今日は人の別れにリアルタイムで立ち会うという、とても珍しい経験をした日だった。
今日、彼女は彼氏の相談したいだけだったはずだ。
ウッカリ別れたのは、俺が不満をあおったせいかもしれない。(あと酒)
だから、責任をもって略奪愛させていただこう。まだ暖かいうちに。