もっと会いに行けば良かった?悔やんでも時間は巻き戻らない。
8月6日。今日の最高気温も30度後半だ。うだるように暑い日が続いている。
もう少しでお盆に突入だ。もうすぐ苺女も夏休みで福岡に帰ってくるはずだ。
まだ決定事項ではないものの、久しぶりに会えると思うと嬉しいし、待ち遠しい。
衛生女と旅行へ行ったり、福岡の友達との飲みごとも多くて、ここ10日間ほどはスカイプで顔を見ながら話せない事が多い。
そんな時に限って、苺女から「今からスカイプで話せる?」という誘いが多く来てしまう。
その度に「ごめん今日は無理」と断っていた。
「そういえば、お盆は福岡に帰って来れると?」
このLINEを彼女に送って、今日も俺は男友達と飲みにでかけた。
その日は大いに盛り上がり、翌朝まで飲んでしまった。
ベロベロになって、自宅のマンションに帰ってくる。ダルい体と、頭痛のガンガンで、布団へと倒れ込んだ。
スマホを見ると、苺女からLINEが来ていた。
苺「うん来週帰ってくるよ。今日はスカイプで話せる?」
返事が来ていたのは、今から10時間ほど前だ。
「ああ・・やっちまった。」
YUTAROは、人と会っている間は、ほとんどスマホはいじらないので確認が遅れてしまった。
「ごめん!友達と朝まで飲んでた。今から寝るけん、起きたらスカイプしよう。」
二日酔いで頭が回らず、思いやりのないメッセージ内容になってしまう。そこらへんは得意分野なのに台無しだ。
「水、水・・。胃腸薬・・。」
俺はそれらを流し込むと、気絶するかのように眠りについた。
布団で二日酔いと戦いながら、なんとか起きることができたのは夕方ごろだった。さっそくスマホを確認する。
意外にも、彼女からの返事は来ていなかった。
ただ俺が送ったLINEのメッセージには「既読」がついている。
「おかしいな・・。あいつマメだから読んだら返事くれるはずだけど。」
忙しかったのかもしれない。でもなんだか胸騒ぎのようなものを感じる。
もっと会いに行っておけば良かったのかもしれない。
毎日数分間でもスカイプで話しておけば良かった。せめて昨日に戻ったら何か変わっていただろうか?
いまさら悔やんでも時間を巻き戻す事はできない。もう手遅れだったのだ。
急にやって来た別れ話に対応不可。
時間は8月6日午後9時頃だ。
二日酔いの胃のむかつきが少し収まったころ。
ニコチン切れを起こした俺は、キッチンでタバコを吸いながら、近くのコンビニへと食料調達に出かけようかと考えている。
いつもなら声を聞きたがるのに、胸騒ぎが大きくなる
その時LINEの通知が鳴った。苺女からだ。
苺「今、ちょっと良いかな?」
「いいよ。どうしたの?電話かスカイプで話す?」
苺「いやLINEでいいよ。」
いつもならSkypeか電話で話したがる彼女なのだが、今日はちょっとそっけない気がする。
俺は朝の胸騒ぎが、大きくなっていく感覚に襲われた。
「私達もう別れよう」に狼狽
苺「あの・・言いにくいんだけど。」
「いいよ。言ってみて。」
苺「私達もう別れよう。」
「ああ・・やっぱり」というのが感想と、「なんで?」というのが半々だ。
俺の心臓は早く脈打っている。
タバコを持つ手がブルブルと震えて、灰がコンロの上へと落ちた。
俺が彼女に会いに東京へ行ってから一ヶ月ほどしか経っていないのに何故?
あの日はあんなに楽しかったじゃないの?
別れの理由はなに?
「別れたいと思う理由を聞いてもいい?」
電話で話せばもっと詳しく聞けるかもしれない。でも声が震えてしまうかもしれない。
俺たちは淡々とLINEで話を続けることを選んだ。
「最近スカイプできなかったから、もしかして浮気とか疑ってる?」
返事が無かったのでこちらから聞き出すことにした。
苺「そういうわけじゃないの。寂しかったってのもあるけど。」
「他に好きな人が出来たとか?」
苺「出来てないし。あのね。今は勉強に集中したいの。」
「遠距離恋愛でたまにしか会えないんだから、勉強に集中するにはいい環境だと思うけど?本当にそれだけ?」
苺「あとね。YUちゃんってもうオジサンだから。」
俺はキッチンの引き出しを開けて「オブラート」を探そうとしたが、そもそもオブラートなんて買ってなかったことに気づく。
年齢差を承知で付き合っていると思っていただけに、ガツンと意識を刈り取る辛辣な言葉だ。
オッサンだから待たせるのは悪いらしい
苺「学校卒業しても、福岡に帰ってくるとも限らないし。このまま待たせるのも悪いかなって思って・・。ワタシじゃなくて近くのいい人探したほうがいいのかなって思ってたの。だから。」
親切心で別れてあげると言っているのだろうか?
ふつふつと怒りが湧いてくる。
「そっかわかった。別れよう。」
苺「ごめんね・・。本当にごめんね。」
なんやコイツ・・?
ありったけの怒りをLINEに載せて届けたかったが、楽しい時間を共にした女性だ。俺はこみ上げる言葉をグッと抑えた。
「今までありがとうな。東京で頑張るんやで。」
気がつけば震える指が、思っている事とは違うメッセージを送っていた。
苺「うん。ありがとう。YUちゃんも体に気をつけてね。」
「はは・・酒を控えるわ。東京なんて行かせなければ良かったな~w」
もう東京に対して責任転嫁だ。
苺「そうだね。東京なんて行かなかったら私達結婚してたのかもね。」
理不尽に責められる東京さん。ごめんねアナタは悪くないから。でも何かのせいにしないとやってられない。
こうして8月6日。僕達の遠距離恋愛はいともアッサリと消滅するのだった。
遠距離恋愛失敗の原因を考える
「ああ・・俺達もう別れたんだ。終わったんだ。」
ぼーっと働かない頭で繰り返す。
結局、彼女と別れた日も迎え酒で記憶を無くすまで飲んでしまった。
アルコールで現実逃避しないとやってられない気分だったのだ。
付き合っていた頃の思い出が溢れ出す
行きつけの飲み屋では明るく振る舞っても、彼女と過ごした思い出がふいに顔を出す。
出会った場所、付き合い始めたばかりの頃。一緒に行った旅行先、彼女の手料理。ペチャパイで細く折れそうな体。
彼女の夢と決断。東京と福岡の遠距離恋愛。東京まで会いに行ったこと。
一緒に過ごした時間が走馬灯のように脳内に湧いては消える。
もうあの声を聞くことはできない。笑顔を見るもない。それが現実なのだ。
彼女が東京へ行って、遠距離恋愛になりまだ4ヶ月ほどだった。あまりにも早すぎる。
「何が別れの原因なんだ・・。ついこの間まではラブラブだったじゃないか?」
何が悪い?別れの原因を考える。
原因1 10歳以上の年齢差。
「俺がオッサンだから、待たせるのは忍びない」
そんなような事を彼女言っていた。心に突き刺さる言葉だ。
たしかに俺は年齢的にも30代半ばだ。二年後彼女が帰ってくるとしたら30代後半。彼女はまだ20代半ばだ。この年齢差が苺女にとってネックだったのかもしれない。
だって年齢ばかりはどうしようも無いんだもん。
もしかすると彼女の本音なのだろうか?だが先月まではうまく行っていたのだ。他に原因があるようにも思う。
原因2 寂しがり屋な彼女にマメな連絡を怠った。心のメンテナンス不足。
忙しくて10日ほど彼女の顔を見ながらスカイプをすることができなかった。LINEの返事も遅くなりがちだったし。
iPhoneをタクシーに忘れて再契約に手間取ったのもデカイ。
苺女はケンカして一緒に寝ないだけで泣くレベルの寂しがりや。
そんな彼女にとって声のやりとりはとても重要だったのかもしれない。結果YUTAROに対して、浮気などの不信感を抱かせてしまったのが原因かもしれない。
原因3 ガチで勉強に専念したい。
これも彼女が言っていたことだ。美容系の勉強をするために、仕事を辞めて東京まで行ったほどだ、勉学とバイトの両立で余裕が無いのかもしれない。
恋愛よりも勉強を取ったということも充分考えられる。
ただ遠距離恋愛で勉強に集中できる環境にあるのだから、他に原因がある気がする。
原因4 他に好きな男ができた。
時期は夏だ。男女ともに浮ついて積極的になる分、出会いは必然的に多くなる。
若い女性が圧倒的に多い福岡と比べて、付き合いのいい博多女子は東京できっとモテるはず。博多弁は可愛いしね。
福岡の男性と違って、東京の男性の振る舞いは、優しい印象にうつる事だろう。
真面目?な彼女は、付き合っている間に体の関係になることはないと思う。(YUTAROの場合も、苺女は元彼と別れてから、付き合った過去がある。)
苺「アナタの事好きになったから、ちょっとオッサンの彼氏と別れてくるわ。待ってて♡」
これを本当に真面目と言っていいのかわからんが。元彼をバッサリと切り捨てた過去を考えると、これが一番可能性が高いかもしれない。悲しいけれど。
終わったことは仕方ない。上を向いて歩こう!
「ぐぬぬぬ・・。悔しい・・ぐやぢいいい!」
想像だけで口惜しさが頂点に達した頃、俺は考えるのをやめた。
(・・・・。)
ふと、そして頭に中に声が聞こえる。
?「アナタにはまだ他の女がいるじゃない?」
?「この日本では愛知県以外は女の人口が多いんやで。」
悔やんでいてもしかたない。悩んでも終わったことだ。
今は上を向いて歩こう。涙がこぼれないように。
別れたばかりの元カノからLINE?会うの?その意味は?
お盆がやってきた。
彼女(苺女)が東京から帰ってきて久しぶりに会うはずだったので、今年のお盆はYUTAROの地元の名古屋には帰らない事にしていた。・・ご先祖様すいません。
残念ながらお盆が来る直前に彼女とも別れてしまった。もう一人の彼女(衛生女)も実家に帰っている。
福岡は九州各地から人が集まっているため、お盆や正月は帰省してしまって人が少なくなる。
男友達も、北九州、長崎、鹿児島、佐賀、宮崎などなど実家へと帰ってしまっている。
名古屋の男友達は集まって飲んでいるらしい。
わざわざ写メを送って来てくれるあたり優しさと結束を感じるが、今はやめてくれ。余計に寂しい。
「・・暇だ。誰か・・誰か遊んでくれ・・。」
そんな中で突如LINEが届いた。
向こうからフッたはずなのに・・連絡してくるのは、理解不能。
?「ただいま!福岡に帰ってきました。」
見覚えのあるLINEのプロフィール写真だ。
「ま、まじかよ・・苺女?別れたのになんで?」
言いようのない感情が湧き上がる。
「オッサンの彼氏は勉強(夢)の邪魔でしかない。」
簡単に言えば、別れの言葉はこうだ。
だから彼女の中では、LINEだけじゃなく俺の存在ごと消されていると思っていただけに、頭の中は混乱していた。
「おかえりなさい。連絡くるとは思わんかったけどどうしたの?」
とりあえず返事を返してみる。
苺「夏休みで帰ってきたから。一応報告しておこうと思って。一週間くらい福岡にいるよ。」
ただ、これまでのように絵文字やスタンプが多いメッセージではなくなっていた。
元カノからの連絡、どういう意味?
・・これはどういう意味なんだ?
俺はキッチンに走り、タバコを猛スピードで吸いながら考える。
「・・これって会いたがってるってこと?」
「じゃないと連絡して来ないっしょ?一週間という会える時間まで教えて来てるじゃない?」
「でも・・なぜ?」
「別れの原因を詳しく聞くチャンスやん。」
「やめろ・・これ以上傷口に塩を塗るつもりかい?」
「ヨリを戻したいとかそういうのかもよ?この前は勢いで別れちゃったからノーカウントで・・みたいな?」
「とりあえず飯でも誘ってみたら?」
「・・そうだな。」
俺は彼女からの連絡の意味について自問自答を繰り返すのだった。
「無理でしょ?」で無事爆死!女心はわからない。
「せっかく帰って来たから飲みに行く?」
勇気を出して誘ってみる。まだ可能性はあるのかもしれない。
彼女からLINEが来た時、戸惑いながらも少し嬉しかった。
それは俺がまだ彼女が好きという証拠なのかもしれない。
苺「ワタシ達別れてるから、二人きりで会うのは無理でしょ?」
なんなん?なんなのこれ?付き合う前よりも扱いが冷たい。
「おおオオオ!いっそぶっころおおおして!」
俺は、スマホを床に叩きつけそうになるのを必死で抑える。
もうね・・即拒否リスト入りしたったわ。
女って生き物は本当にわからん。理屈で考える事自体、無駄なのかもしれない。
下手すると、自分でもその行動の意味を解ってないのかもしれない。
「What Do You Mean?(どういう意味なんだい?)」
ジャスティン・ビーバーですらわからないんだから間違いない。