「美味いが魚が食いたい!」さてどこで食う?
すっと目の前の女性が振り向く。そして恥ずかしそうに会釈した。
コンビニのガラスを挟んで魚女とご対面。白いワンピースに長く艶やかな黒髪が対照的だ。
猫のような目と、少し低めの愛らしい鼻。ちょっとエキゾチックな顔立ち。
悪くない・・可愛い。俺は急いでコンビニを出た。
「ど、どうもYUTAROです。ごめんね!急に呼んじゃって!」
魚「いえいえw私もちょうどお魚食べたくて・・すごく楽しそうな人だったし。」
「いやーそう言ってもらえるとうれしかとです」
魚「あははw意外と丁寧なんですね。」
「え?イメージと違った?」
魚「なんていうか・・もっとガツガツとした感じかなって。」
「ガツガツしてたほうがよかったですか?ガツガツかもよ?」
魚「ふふふ・・w」
魚女の声は思ったよりも猫なで声だった。
品は感じるものの、女性には「コイツぶりっこやん!」と嫌われてしまいそうなしゃべり方と声だ。
でも俺はそういうの・・嫌いじゃない。
魚「それでお店はもう決まってるんですか?」
「ふふふ・・あそこさ。」
俺はコンビニから向こうを指さした。
清川の魚が美味い店「柳町一刻堂」
魚「ひゃあ!待ち合わせ場所から目と鼻の先なんですね!」
待ち合わせ場所だったファミリーマートから道を挟んで向かいにある店「柳町一刻堂」が今回のアポの舞台だ。
小さな一軒家を改装したようなちょっと渋い店構え。
なぜかヤカンのオブジェ?が飾ってある。
そして友人曰く「魚が美味い店」らしい。
魚女とロクに話もせずに通りを渡り店のドアを開けた。店内は混みあっていた。
「あっ・・今から二人なんですけど・・空いてます?」
店「はい!カウンターで宜しいですか?そちらで履物をお脱ぎください。」
ハキハキと元気のいい店員さん。
店の玄関で靴を脱ぐスタイル。
(やべえ・・サンダルなんかで来るんじゃなかった・・。)
仕方なくサンダルを脱ぐと、ペタペタと足の音を鳴らしてカウンターへと座る。その横に魚女がちょこんと座った。
カウンターの一つ先の席では仕事のできそうな男性が綺麗な女性と笑っている。
店内を見回すと少し狭いが奥行がある。席数はそれなりに多そうだ。(2階もあるよ。)
「今日はお酒飲んでも大丈夫?」
魚「少しだけなら・・。」
初対面でいきなり「ガンガン飲みまっせ♪」と言われても少し困る。
「遠慮しなくていいんから飲んでね。とりあえず乾杯はビールでいい?」
魚「はい♪」んでビールを注文。
「よし!目的の魚を食おう!」
ビールを片手に俺はメニューを開いた。
一刻堂はキレイ目な居酒屋という感じだが、少しお高めの値段設定だった。
ただ俺好みの「酒に合う」メニューが多い。
とりあえず定番の刺し盛りとサラダとおつまみを注文。
なんか知らんけどグルメ力が高そうな彼女
魚「あっそういえばお盆なんで市場休みですね・・」
「え?市場休みだとなんかあるの?」
魚「市場休みだと新鮮な魚が入ってこないから、今日はお刺身美味しくないかもしれませんよ?」
「ほ、ほう・・。」
魚「でもタイとかは昆布で締めたほうが旨味がでるし、他の魚もちょっと置いて熟成させたほうが云々カンヌン・・一概に新しいほうが美味しいとは言えませんけど・・。」
(な、なんやコイツ・・グルメか?それとも食べロガーか?)
「く、詳しいんだね・・全然知らなかった。」
魚「いやいや全然ですよお・・父が魚大好きで、釣りもよく行くので。」
※普通に一刻堂の魚は美味しかったです。後で頼んだアナゴの白焼きが皮がパリっとしてうまかったです。
「あ、お酒は好き?いつもなに飲むと?」
魚「えっと・・好きなのはワインとか日本酒ですかね~。」
「へえ!若いのに日本酒飲めるんだ!苦手な人も多いでしょ?」
魚「最近日本酒の美味しさに目覚めちゃって!」
「冬の燗もいいけど、夏に飲む冷酒もいいよね~!」
魚「うわあ!そんなこと言われたら日本酒飲みたくなってきた!」
「よし二杯目は冷酒でんな!」
話を聞く限りかなりグルメな彼女。
水商売には見えないし、育ちは良さそう。もしかしてお嬢さん?
「そういえば聞いてなかったけど、仕事は何してるの?」
魚「○○してるんですよお。」
彼女の口から出たのは意外な職業だった。