彼女の眉毛が消えて「くつろぎ家モード」で現る
彼女が「猫に餌をやる」と言って自宅へと帰って行ってから1時間近くが経った。そして彼女はようやく現れた。
再会した彼女はさっきまでのヨソ行きの姿とは打って変って、ジャージだった。
・・そして眉毛が消え去っていた。
(これじゃあドンキホーテで見かけるヤンキーじゃねえか・・。)俺は心の中でつぶやいた。
「あれ?さっきと格好が違うね・・。どうしたの?」
彼女の変貌をスルーするのもおかしい気がするので聞いてみる。
カ「なんか家に戻ったら化粧落としたくなっちゃって・・シャワー浴びちゃいました(笑)」
なんともマイペースな話である。こっちは随分待っていたというのに。
「あはは・・その気持ちわかるわ。」
とりあえず同意しておく。もしかして俺は彼女に『男』として見られていないのだろうか?
それともお泊まりOK的な意味でもあるのだろうか?
とにかく待たせたことに申し訳なさを微塵も感じさせないカス美。
下がったテンションとは逆に沸き出すストレスに「このまま帰ったろうか・・」と一瞬思ったが、
手提げ袋の中にある酒とつまみがもったい無い。
「さて、カス美ちゃんもくつろぎモードになったことだし飲み直しますか?」
俺は自分に言い聞かせるかのように少し大きな声で言った。
カ「YUさんち初めてだあ!ゲームしたいな!」
綺麗に整った白い歯を見せながら笑う彼女を見て俺は誓った。
(ウイイレでコテンパンにした挙句にベッドでもコテンパンにしてやるぜ!)
彼女の住む警固から、俺の住む美野島まではタクシーで1000円弱だ。
福岡は街が凝縮しているおかげで移動が楽だ。タクシーの数も無駄に多い。(名古屋だとタクシーを捕まえるのも大変)
タクシーに乗っている間は彼女の指をこねくり回して時間を潰す。
「さあ入って!ここがおれの部屋やで〜」
カ「お邪魔しまーす!」
「何もないから殺風景でごめんね!」
それでも新しく2.5人がけのソファが増えている。
カ「男性の一人暮らしならこんなもんですよ♪」
今まで彼女はどれだけ男性の家に上がり込んだのだろうか?
緊張感を感じさせないカス美の言動に男性経験値の高さを感じさせる。
「いつでも遊びに来てくれていいから。まあ・・くつろいでくれ。」
コンビニの袋からビールとポテチを取り出して乾杯。
早速2.5人掛けのソファに座り、二人でウイイレを始める。
・・・がカス美が下手すぎて即終了。深夜番組に切り替える。
カ「サッカーゲームは難しいやw ・・そう言えば聞きました?」
「え?何を?」
カ「ゲス女とイケ男くんなかなか上手くいってるみたい。」
ゲス女は最初のアポでコンパをセッティングしてくれたメル友である。篠田麻里子似の美人さんであるが・・性格はおそらくゲス。
イケ男といい感じになってコンパの後に二人でハプニングバーに行ったことは知っているが、その歴史を彼女に伝えていいものだろうか・・。
「もしかして付き合ってるの?」
カ「それはまだみたいだけど二人でよく会ってるみたいだよ。」
「へ、へえ。付き合えばいいのにね・・。」
おそらく人はそれを『セフレ』と言う。
カ「美男、美女だしお似合いだよね。」
カス美が失った眉毛のあたりを掻きながら言う。
「そうだねえ・・今度イケ男と会った時に詳しく聞いてみるわw でも俺たちもなんだかんだで会ってるよねw」
カ「まだ二回だけだけどねw」
「よし今度みんなで集まって家飲みしようぜ!」
ダブルデート・・腐った響きだ!
カ「いいですねえwめっちゃ楽しそう!」
無邪気な白い笑顔に心拍数が上がる。
「もうちょっとこっち来てよ」
俺はそう言うと彼女の手を掴んだ。
そしてそっと引き寄せた。距離が0.5人分だけ縮んだ。