もう一つの好意。
2回目に苺女と会ったのは、デートではなく彼氏の相談だった。
一見おしとやかに見える彼女が、彼氏にフラれ、怒り狂い、泥酔し・・ゲロまで吐いた。
あの日はとても疲れたけれど、彼女の激しい一面が見れたことは、いい収穫になったと思う。
そして、あの日から苺女の俺に対する態度が大きく変わった。
苺「何してます?」
苺「今週はいつが暇ですか?」
苺「一緒にご飯に行きたいな。」
そんなメールが頻繁に来るようになった。
これは失態に対してのお詫びとは違う。苺女から明らかな好意を感じる。
こちらとしても、22歳の若い女の子に誘われるのは悪い気がしない。
むしろ、彼女の事を気に入っている。だから酔っぱらってクダを巻いても、ゲロをぶちまけても、紳士的に振る舞ったのだ。
とにかく前回の騒動から一週間が経った。俺は明日の月曜日に苺女と会うことになったわけである。
いつもと同じ日曜日、いつもと違う月曜日。
さて、今日は日曜日だ。
日曜日は恋人の衛生女が泊まりに来る。これが俺たちの決まり事になっていた。
衛生女は勤務先(歯医者さん)のシフト上、日曜日と平日の二日間休みがある。
だから平日もたまにデートしたり、泊まったりするが、日曜日は休みが確定しているので、会わないと不機嫌になる。
俺たちは近くの焼き鳥屋で夕飯を食いながら酒を飲んだ。
衛「いつも来るおじいちゃんの患者さんがさあ・・絶望的に口臭いんよ。」
彼女の口から、一週間の出来事を聞きながら、ビールをガブガブと飲む。
ほろ酔いで家に帰ると、風呂に入りセックスをする。セックスがすめば、布団の中で深夜までテレビを見る。
こんな感じで、いつも通りの日曜日は終わりを告げる。これはこれで楽しい一週間の締めくくりだ。
そして、また新しい月曜日がやってくる。
衛「じゃあ行ってきます!」
「おう!気を付けて。」
いってらっしゃいのキスをして、衛生女は玄関のドアを開ける。
俺は彼女を乗せたエレベーターの扉が閉まるのを手を振って見送った。
いつもと同じ週のスタート。だけど、今日からは変わってしまうかもしれない。
俺は新しい恋の予感を感じながら、夜が来るのをソワソワと待つのだった。
三度目の正直?彼女はあざとい。
午後8時。俺は博多駅へ向かっている。待ち合わせ場所は前回と同じ筑紫口だ。
苺「仕事が少し長引いちゃって・・ごめんなさい。20分くらい遅れそうです。」
そう苺女から連絡があった。俺は彼女の仕事が終わるまで、博多駅前にあるヨドバシカメラで時間を潰すことにした。
待つのは苦手だが、家電を見るのは大好きだ。
冷蔵庫のドアを開け閉めし、洗濯機の蓋を開け閉めしていると、あっという間に20分が過ぎた。
(・・そろそろ待ち合わせ場所に向かってもいい頃かな?)
ちょうど苺女から「業務終了」のメールが届く。グッドタイミングだ。
中国人のカラフルな団体を、さっそうとかき分け、待ち合わせ場所に向かう。
苺女は先週とほとんど同じ場所で突っ立っていた。痩せ形ですらっと細いスタイルは、なかなかに見栄えが良い。
「おっす!」
俺が声をかけると、彼女の白い歯がチラリと見える。
苺「ごめんなさい。お待たせしちゃって。」
「ヨドバシで家電見てたらすぐだったよ。・・てか、あの日大丈夫だった?」
苺「・・え?」
「いや、めっちゃお酒飲んでたから次の日きつかったでしょ?ちゃんと仕事行けた?」
苺「うわあ!思い出させないでくださいよ!死にたいくらい恥ずかしいんで!」
苺「あの・・本当に・・ご迷惑をおかけしました。」
「いや・・気にしてないよ。いろいろあったから、ゲロ吐くのも仕方ないと思う。」
苺「いやぁあ!戻しちゃった事は言わないで!」
(うむ・・いいリアクションだ。)
顔を真っ赤にして戸惑っている苺女に、俺のS心が刺激される。
目ぼしい店を探すべく、二人で筑紫口周辺を歩くことにした。
勘を頼りに適当な店に入るのも、なかなか楽しい。
(・・ん?)
歩いていると、腕の部分に少し違和感を感じる。
そこに目をやってみると、苺女が俺のコートの端っこを、ちょこんとつまんでいた。
(・・えぇ?ナニコレ!?あざとい女珍百景やん!)
キュンキュンが押し寄せてくる。だが、こちらも負けてはいられない。
「・・手つなごっか?」
俺は彼女の手をきゅっと握りしめる。
お詫びの品がちょっとズレてる。
俺たちはちょっとオシャレなイタリアン居酒屋に入った。
焼き鳥や海鮮の人気店もあるが、今日はカップルらしいデートにしようと思う。
苺「YUさんに渡したいものあるの。この前のお詫びに・・。」
席に座るとスグに苺女が言った。そして、彼女はトートバッグからオシャレな紙袋を取り出した。
「え?そんなんいいのに!いいのにぃ!」
苺「あとお借りしたTシャツも入ってます。」
「・・Tシャツは洗った?」
苺「はい。ちゃんと洗いました。ありがとうございます。」
「洗っちゃったかぁ・・。あっ・・袋の中、見てもいい?」
袋の中をのぞくと何やら瓶のようなものが入っている。それは濃いワイン色をしていた。
「ワイン・・かな?」
苺「それ・・バルサミコ酢っす!」
「バルサミコ??・・酢?」
お詫びの品がまさかの酢。まさかのバルサミコ酢。
※苺女からもらったバルサミコ酢。7割以上残っとるけど、どう使ったらええんや。
苺「ほら、YUさん自炊するって言ってたじゃないですか?それお肉料理に使ったり、サラダにかけても美味しいの!」
・・まさかの本格派である。
俺の自炊なんぞ「オラ肉焼く⇒オラ食う」の縄文レベルだと言うのに。
「あ、ありがとう・・。今度バルサミコ酢の使い方教えて。」
お泊りOKの旅行?会話から伝わる手応え。
「飲み物どうする?・・お酒飲める?」
苺「最初の一杯だけ・・しばらくお酒は飲みたくない(笑)」
俺としても、もう日本酒を勧める気はない。
甘酸っぱいのは、このバルサミコ酢と、彼女との時間だけで充分だ。
グラスを合わせて乾杯。
(さて・・何を話そうか。)
ギクシャクした空気の中で、どんな会話を切り出すか迷う。
「あ、この前さ・・ちゃんと帰れた?起きたらいなかったから。」
あえて、この間の出来事を思い出させるのが、俺のダメなところである。でも、気になっている事はついつい聞いてしまう。
苺「ものすごい二日酔いだったけど、お風呂入りたくて帰りました(笑)」
「ウチで入ってけば良かったのに・・。」
苺「さすがにそれは図々しいですよ。・・ずっと布団使わせてもらうのも悪いし。お着替えもしたかったから。」
「ずっと住んでも良いのに・・んで、ちゃんと仕事には行けた?」
苺「さすがに体調悪かったんで、お店に連絡して出勤時間遅らせてもらいました。お酒臭いと店長に怒られるから(笑)」
「うわあ・・散々だったね。俺も二日酔いになるくらいだから、苺女は相当ヤバかったと思う。たくさん日本酒飲ませちゃってごめん。」
苺「私も調子に乗ってごめんなさい。でも凄く親切にしてくれたから・・嬉しかった。」
(・・ボクの優しさの半分は下心です。すいません。)
「あの後、彼氏から連絡あった?」
苺女は別れたと言っていたけれど、あの日は酒の勢いもあった。
お互い冷静になって、元サヤに戻っている可能性も高い。一番悲しいパターンだ。
苺「はい・・連絡ありました。」
俺は内心ドキッとする。
「なんて言ってた?やり直しちゃった?」
苺「キッパリ別れました。だからもう彼氏じゃないという。」
「ほほぉ、そうなんだ・・。」
彼女の恋の結末を聞いて、ホッとしている自分がいる。
気になっていた事とは言え、つまらない会話ばかり振っていることに気づく。軌道修正しなければ。
「だいぶ暖かくなって来たからさ、またどっか行こうよ。ドライブとか。」
苺「私、温泉に行きたい!」
「まだ若いのに渋いチョイスやね(笑)」
苺「長崎の雲仙に行きたいの!実はまだ行ったのことないの。」
「雲仙は福岡から結構遠いぜ?きっとお泊まりになるぜ?」
俺はあえてゲスな顔をして尋ねる。
苺「うん。泊まりで行きましょ。」
な、なんです・・と?
「あのぅ・・俺と一緒の部屋に泊まるんやで?」
苺「あはは、そんなん当たり前ばい(笑)」
「オオカミの檻に入るもんやで?」
苺「じゃあ、あたしはウサギちゃんだね。」
(この手応えはなんだ?・・マルチ商法の勧誘でもあるのか?)
男なら「やったぜ!」と喜ぶ状況なのに、俺は戸惑っていた。
苺女はセフレするタイプの女じゃない。できるなら恋人にしたい。
だけど、付き合ってしまえば二股になってしまう。
恋人と別れる前に、他の男を探す女?
苺女とお泊まりアリで温泉に行く約束をしてしまった。
(ちょ・・待てよ?)
よくよく考えてみれば、彼氏と別れてすぐにそういう約束ができるという事は、なかなか割り切った性格の持ち主である。
「恋人と別れる前に、あらかじめ目ぼしい男を探しておく女の子もいる。」
そう女性誌の特集に書いてあった。
- 彼氏がいるのに出会い系を遊び相手を募集している。
- 彼氏と別れる時も他の男に会っている。(しかも泊まっていく)
- 彼氏と別れてスグに俺と温泉旅行の約束をする。
これまでの彼女の行動を思い返すと、思い当たるふしがありまくり。
(もしや・・この子クズ?)
人は見かけによらない。この清楚そうな顔の裏側には、俺と同じ「ゲスの血」が通っているのかもしれない。
優柔不断な男は強引な女に弱い。
苺「なんか凄く楽しみになってきた!ねぇ!いつ温泉行く?」
苺女はいつの間にかタメ口になっていた。しかも、瞳をキラキラとさせながら日程の調整にかかっていた。
「そうだなあ・・今月はちょっと厳しいから来月とか?」
苺「え?私は来週でもいいのに!来月だと・・まだサクラ残ってるかなあ?」
アクセルフルスロットルだ。
(彼女の背後にうっすらと見えるのは・・パワー系のスタンド?)
その勢いに、俺は少し怖くなってきた。
「いやあ・・4月の始めならわかんないけど・・。」
苺「じゃあ来月の一番最初の週がいいなあ。(オラオラオラァ!)」
「うーん。4月となると誕生日があるから・・。」
苺「誰の?」
「・・ボクチンの。」
さすがに誕生日は衛生女と過ごさなければならない。
苺「そうなの?じゃあ尚更祝わないと!」
「いやぁ・・当日はちょっと・・仕事が休みじゃないし。」
苺「じゃあ、YUくんのお休みの日にお祝いしよ♪」
タメ口になったと思ったら、「YUさん」➡「YUくん」へ名前の呼び方も変わっている。
そして、彼女は思ったよりも強引な性格をしていた。
俺は童貞歴が長かったせいもあって、肝心な所が受け身で優柔不断だ。
だから女子から強引に来られると・・濡れてしまう。
「もしかすると温泉・・行けるかも?」
俺はもう、彼女の提案に、ずいぶん心がなびいていた。むしろ断る理由が見当たらない。
苺「わ!ホントに?」
「まだ確定じゃないけど・・。」
苺「ねぇねぇ・・今からYUくんのお家に行っていい?」
「!!?」
突然のセリフに焼酎を吹き出しそうになる。
「な、なんで?・・まだピザとアヒージョしか食ってないよ?」
苺「もうお腹一杯。今からじゃらん買ってさ、YUくんちで一緒に見ようよ。」
「それは・・わりとマジで?」
苺「うん!雲仙で泊まるお宿とか、オススメの観光スポットも探したいな。」
(・・連れて帰っても大丈夫・・?)
昨日は彼女が泊まりに来ている。俺は自分の部屋の最新画像を思い描いた。
ティッシュよし。歯ブラシよし。風呂よし。トイレよし。コンドームよし!
予定とは大分状況は違うが、俺も百戦錬磨である。
女の子と会う日は、前もって部屋の片づけくらいしている。
「・・別にウチに来てもいいけど。」
苺「やったぁ!じゃあさっそく行こ!」
彼女は子供っぽく無邪気に喜んで見せる。
カワイイけれど、もう、あざとさしか感じない。
日向小次郎ばりの強引なドリブルに、俺の理性はあっさりと吹き飛ばされたのだ。
先週に引き続き、俺たちは家に向かうことになった。
初対面の女の子を家に連れ帰るのはなかなか難しいが、一度でも部屋に入ると二度目のハードルはぐっと下がる。
それに前回、紳士的な対応をしたおかげで、苺女から「警戒心」というものをほとんど感じない。
筑紫口の父。
俺たちはイタリアンバルを出て、近くにあるローソンで「じゃらん」と「九州ウォーカー」を買うことになった。
コンビニまでの道中で、路上に座っている男性を発見。
苺「あっ!占い師さんだ!YUくんも一緒に占ってもらおうよ。」
天神の母ならぬ、筑紫口の父だろうか?
「・・え?占いとか信じる系?」
苺「うん。やっぱり仕事運とか恋愛運とか気になっちゃう。だって女の子だもん。」
「そっか・・ほいじゃ、占って貰おう。」
一人2,000円の所を値切って1,500円にしていただく。
まずは苺からだ。彼女はほとんど恋愛に関して占ってもらっている。
俺も横で聞いてはいたが、人の占いまではっきり覚えられないので省略。
けっこう良い結果が出たようで、苺女は喜んでいた。
この占い師、たぶん俺の事嫌い。
さて、次は俺の番。
名前と生年月日、手相などの情報を、筑紫口の父にインストールする。
占「あなたは自己主張が下手で、チャンスも人に譲ってしまうタイプですねぇ。」
(・・いきなりテンション下がるわ。)
確かに一理ある。自己主張が下手なあまり、このブログでちびちびと自己表現しているわけだ・・。
「えっと・・うまくチャンスをものにできるには、どうしたらいいですか?」
占「もっと他人の目を気にせずに、自己主張して行ってください。」
(雑!解決策が雑ぅ!)
せめて自分探しの旅に出るとか、自己啓発本を読み漁るとか・・もっとあるだろうが!
「僕・・何歳まで生きられます?」
占「健康に気をつけてもらえば、70代後半までは大丈夫です。」
(健康に気をつけてようやく平均寿命レベルかよ・・てかコイツ当たり前の事しか言わねえな。)
「はぁ・・。ちなみに僕らって、恋愛の相性どうなんでしょうかね?」
占い師のオッサンは、俺と苺女の情報を書いた紙を、神妙な顔で見比べている。
占「2人の相性は・・うん。凄くいいと思いますよ。」
苺「ウフフ♡だって!YUくん。」
「おお・・良かったばい。」
占「ただし・・。」
「え?」
占「あなたが主導権を握るより・・彼女さんの尻に敷かれたほうが、きっと上手く行くと思いますよ。」
さっきの「他人を気にせず自己主張しろ」は何だったのか・・?
(この占い師、きっと俺のこと嫌いなんだろうなぁ・・)
妙な気持ちになりながら、セブンイレブンでじゃらんとお酒を買う。そこから俺の家まで歩くことにした。
「ほら・・手つなご。」
苺「うん・・。」
そう言って俺は彼女の手を取った。
春の夜風はまだ少し肌寒い。だけど右手から彼女の温もりが全身に伝わってくる。
今日は押されっぱなしだ。少しぐらい主導権を握ってもいいじゃない。
女子力グイグイアピール。
「ごめん、微妙に遠かったかも・・歩き疲れた?」
苺「ううん。仕事でいつも歩き回ってるから全然気にならないよ。風が気持ちいいし。」
博多駅(筑紫口)から、俺の住む美野島までの距離は、彼女の歩くペースに合わせても20分程度。
タクシーを使うにしては微妙な距離だが、歩くとなると地味にしんどい。
新幹線の高架をくぐると東領公園(とうりょうこうえん)が見えてくる。俺の家までもう少しだ。
「お!サクラがもうすぐ咲きそうだね。」
俺たちは立ち止まり、公園に植えてある桜の木を見上げる。
苺「来週から、再来週にかけてが見頃っぽいよ。」
「・・そういえばお花見とか随分してないなぁ・・。」
苺「じゃあ、一緒にお花見する?わたしね。桜がすっごいキレイな場所知ってるんだ。」
「いいねぇ。」
苺「じゃあ。お弁当作ってきてあげる。」
なんだこの女子力グイグイアピールは。
(俺・・明日死ぬかも?)
ありったけの「運」を今日という日に使っている気がする。
苺「ねぇ、お花見いつがいい?」
「ら、来週の平日なら。」
苺女の誘導によって、俺のスケジュールはどんどん埋まっていく。このまま流されっぱなしで大丈夫なのか?
「3分の2」の純情なセックス理論
「やっと着いた!結局30分くらいかかったね。」
苺「手つないで歩いてたから・・。」
ようやく家に到着する。苺女と会うのは三回目。彼女が俺の家に上がるのは二回目。
(数字にすると3分の2。・・これもう、エッチしちゃっていいよね?)
苺「ねぇ、YUくん。早くじゃらん見よぉ~」
ビールとチューハイで軽く乾杯を済ませ、二人でじゃらんをのぞく。
苺「YUさんここ行ってみたい!」
ページをめくる度に苺女がはしゃぐ。編集部冥利に尽きるというものだ。
苺「長崎って行ったら、軍艦島だよね。」
「・・そうなの?聞いたことはあるけど。」
苺「船でね渡るんだって!軍艦島にも行ってみたい。」
「でも、雲仙と長崎って結構離れてるやん。せっかく雲仙に行くなら、周辺の観光地巡りが良いなぁ。」
この年になると移動が多いのは疲れる。
オッサンのだらしなさと、体力のなさを見せるわけにはいかない。
苺「じゃあ雲仙の観光スポットについて、あたし色々調べてくる!」
いつの間にか、二人は肩がぶつかるほど近づいている。
若くてカワイイ子がいたら性欲には抗えない。
(んあぁ・・いい匂い。)
プルンと張りのある肌。可愛らしい耳たぶ。
血色のいい唇。うっすらと赤いほっぺた。綺麗な眼差し。
悶々悶々悶々悶々悶々!
(あ・・モンモン来てる。くるぞ!備えよ!勃起に!)
俺は苺女の肩に手を置くと、ゆっくりと引き寄せる。
彼女の瞳は一瞬大きく開いたが、やがてゆっくりと閉じていく。
(・・モンモンモン!)
俺の頭の中は、モンモン(性欲)に征服されてしまった。あっけなく。
初めてのキスはゼリーのように柔らかい。
俺は彼女の唇めがけ、一直線に接近していく。ブチュリ。
(なにこれ!すんげぇ柔らかい唇!)
その、キスの感触はまるで、こんにゃくを入れ忘れた、こんにゃくゼリーのようだ。
(これなら、お年寄りでも、お子様でも安心だ。)
キスは激しさを増していく。
柔らかい唇を舌でこじ開け、舌と舌を絡ませる。ねっとりと濃厚な体温が伝わってくる。
キスに満足すると、俺は唇を耳から首筋へと移動させていく。
苺女は身をよじらせながらも、じっと目を閉じたままだ。
(めんこい!めんこいぞ!)
魔手は彼女の胸へ進んでいく。そこで、ようやく彼女は目を開いた。
絶対的Aカップ。だけど下着に春を感じる。
苺「ダメ・・。私おっぱい小さいから・・恥ずかしい。」
(その恥じらいの言葉だけで、白飯三杯はいける。)
「大丈夫!俺はちっぱいのほうが好きです!(嘘)」
ゆっくりと彼女の手をのけ、 シャツの中に手を入れる。そして苺女の胸に触れる。
(やっべえ・・マジで小さい。)
ブラジャーと胸の間に感じる「余り」。
そして実力よりも少し大きめのブラをつけている「見栄」。
(こ、これはBカップを夢見るAカップだ!)
「夢見る少女じゃいられない・・。」
苺「え?・・どういう意味?」
さっそく現物の乳を見ようと、彼女のシャツを脱がしていく。
苺女は再び目を閉じたまま、頬を真っ赤にしている。このまえの泥酔時よりも赤い。だけど、仕草がとても可愛い。
やがて可愛い花柄のブラが顔を出した。
(あぁ・・春だ。)
ブラジャーを外すと、2つの小さな山が現れる。
山と言っても天保山(大阪で一番小さな山。標高4.53m。)だ。
その山から生えている、二つの小さな芽を舌先で舐めあげる。
(こんな所に・・春の息吹、感じます。)
苺女から控えめな声が漏れ出す。その愛しい音を、俺は鼓膜で熱心に堪能する。
(いざマ〇コへ・・。)
苺「せめて・・せめてお布団へ移動してくだせえ。」
「あ、ごめん。ここじゃ寒いし、明るかったね。」
お布団へと移動すると、気を取り直して愛撫を再開する。
彼女の着ているのは、ピッタリフィットのスキニージーンズ。
うっかりパンツごと脱げそうになるのを、職人さながらの丁寧な仕事で、慎重に脱がしていく。
彼女のパンティは、ブラとセット花柄だった。
ブラジャアと パンティの花に 春うらら
気が付けば一句呼んでる俺がいる。
そんな春が、彼女の細い太ももを滑っていく。
ようやく、苺女は一糸まとわぬ姿に。
俺は彼女のふくらはぎを掴み、観音開きのように大きく開く。
想像よりも、濃い陰毛を蓄え、ヌラヌラと輝いた観音様が顔を出す。
(これはクリ?・・いやクリは秋だ。)
もう・・春だとか秋だとかどうでも良い。
初めてのセックス。恥じらいもスパイス。
俺は再び苺女の太ももを押し開いた。
苺「ジロジロ見ないでぇ・・恥ずかしいからお布団かけて。」
「オジサン・・明るいのも好きなんだぜ?」
苺「ダメ!いろいろ処理してないもん!」
彼女の声はマジなトーンだった。
「わ、わかった。」
とにかく調子に乗ったせいで、掛け布団を被ってセックスに及ぶことになってしまった。
「良い子は部屋を明るくしてみてね!」
ポ○モンパニックから端を発したあの言葉は嘘だったというのか?
俺の目の前に暗黒が広がる。ここからは手探りで愛撫をしなければならない。
布団の端っこを調整すると、隙間からうっすらと光が差し込んだ。
(・・これなら充分に戦える。酸素もOKだ。)
無臭のアソコは男の評価が上がる。
薄明かりを手探りに、彼女のアソコへと到達。
親指でアワビの感触を確かめるようにゆっくりとなぞった。苺女の太ももがピクピクと震える。
驚いたのは、彼女の蜜壺から溢れる愛液の量である。
指でなぞるたび、大量の愛液がネットリまとわりついてくる。ご飯にかけたらどうなるのだろう?
「すっごい・・濡れてる・・。」
俺が小さな声でつぶやくと、
苺「ごめん・・あたし濡れやすいみたい。」
と返事が返ってきた。謝る必要なんてないのに。
俺は舌先をレロレロと素早く動かしながら、クリトリス攻略を開始する。
苺「うん・・んん・・あぁ・・。」
大量の愛液が口の中だけでなく、その周辺にも絡みつく。
うっすら感じる塩気。そしてラブジュース特有の風味。
(一日働いた割に臭くない。合格だ!)
無臭のアソコはそれだけで評価が上がる。
フェラは上手くないけど、贅沢は言えない。
「俺のも・・舐めてくれる?」
俺は布団からひょっこり顔を出し、苺女に問う。彼女はコクリと頷いた。
我が愚息はすでにギンギラギンになっている。
苺女はゆっくり息子をしごき、チロチロと竿の辺りを舐めはじめた。カリのあたりも同様にチロる。
そして、ようやくパクリと口の中に飲み込んでいった。
(うむ?・・あれれ?)
舌の動きを全く感じさせない。ただの直線的運動。
先週まで40過ぎのオッサンと付き合っていた割には、苺女はフェラチオがあまり上手ではない。
(・・だけど、贅沢は言えない。)
衛生女(歯科衛生士)は、「お口でするのは不衛生」という理由で、フェラすらしてくれないからだ。
「あぁ・・やばい・・。気持ちいい。」
一生懸命頑張ってくれる苺女を称えるため、俺もオーバーリアクションで応える。
「ごめん・・そろそろヤバいかも・・。入れていい?」
彼女からOKを頂くと、俺は手際よくゴムを装着した。
その恥じらいは最初だけ。だからしっかり味わえ。
「さぁ!もう掛け布団は必要ないだろ。」
苺「そんなことはない!掛け布団は必要である!」
アホな押し問答はすぐに終わった。
回数を重ねるほど、女の恥じらいというものは薄れていく。
彼女もそのうち、裸で俺の部屋を歩き回るようになるかもしれない。
だから俺は「視覚的に映えるセックス」よりも、「初々しいセックス」を選んだのだ。
掛け布団を背中にかけながら、低姿勢でハメていく。
尋常ではない負担が腰へとのしかかる。それでも俺は腰を振った。
苺「んん・・ああん。」
苺女の控えめな吐息が漏れる。
恥ずかしいのか、俺の顔が見るに堪えないのかわからないが、ずっと顔を横にそむけている。
濡れすぎる女のデメリット。
「ふんふん!ふんふん!」
アソコから湧き出でる大量の愛液。そのせいで無駄におチ〇コの滑りがいい。
これは機械の世界ではとてもいい事だ。より効率的に動くことができ、部品の劣化も防ぐことにつながるからだ。
しかしセックスの世界では、
「滑りが良い」⇨「摩擦が少ない」⇨「チ〇コ入ってんのかわからなくなる。」という現象がおこる。
「摩擦」は快感を生むのに、大事な要素の一つだ。
ガッツリ濡れてくれるのは、男にとって嬉しいことだが、滑りが良すぎるのも考えものだ。
(あれ?・・ゆっくり動いたほうが気持ちいい!)
ようやく、俺は真理にたどり着いた。彼女のマ〇コを理解したのだ。
「んんっ!そろそろイケそう・・じゃなくてイク!」
ラストスパートだ!ゆっくり、深く、突き上げろ!ピュッピュピュ!
一回ヤッたら恋人だった。
(もう・・腰がガクガクだ。)
セックスの余韻にひたりながら、愛を語らう男と女の「ピロートークタイム」が始まる。
これがとっても面倒くさい。楽しみだ。
苺「あたし本当はね。こんなスグにエッチしないから。・・軽い女とか思わないでね。」
苺女は俺の左胸に顔をうずめ、小さくつぶやいた。
「・・うん。わかった。」
苺「別れてから、すぐに付き合ったりしないから・・。それもわかって欲しい。」
「・・うん。わかってる。(言ってる意味が全然わかんない。)」
エッチはしたけど、付き合うつもりは無いってことか?
苺「わかってくれたなら良かった。・・これから仲良くやっていこうね♡」
「うん。・・うん??」
俺たちはどうやら付き合ってしまったようである。
どっちも好き。二股生活が始まった。
そういうわけで、俺にもう一人の彼女ができた。
「付き合う」という面倒くさいルートを選んでしまったのは、俺自身も苺女の事が好きだからだ。
しかし、これは二股である。誰がどう見ても完全な二股。二兎追っちゃってるヤツだ。
いままで多くの女性と関係を結んできたが、二股をするのは生まれて初めての経験である。
苺女のように彼氏と別れてから、新しい恋人を作るのならわかる。でも、俺はそれをしなかった。
だって、どっちも好きなんだもん。スイカバーもメロンバーも食べたいんだもん。
ブログというものは、何でもかんでも好きに書けば良いという訳ではない。
うちは歴史ある出会い系攻略サイトなのだ。(たぶん)
訪問者に媚び、ファンの靴を舐める。失敗談などもってのほかだ。
恋人との幸せライフを延々とつづっていれば、きっと好感度も上がり、売り上げも増えるのだろう。
だけど、俺にはそれができない。アホだから。
(あぁ、ただでさえ少ないファンが、また去っていく・・。)
二股の感想「罪悪感よりウキウキ感」
とにかく、俺はさらに外道になってしまった。一度こうなってしまったら、後戻りの方法がわからない。
衛生女(彼女)に対する罪悪感も確かにある。だけど、今は新しい彼女ができたウキウキ感のほうが勝っている。
俺が優柔不断なゲス野郎なのはわかっているが、この世の中には似たような考えの男性がたくさんいる。
きっとこれは、遥か昔から人間の本能に組み込まれているのかもしれない。
何もかも違う二人の彼女。選べない。
衛生女、苺女、衛生女、苺女・・・。脳内で2人の女性が、忙しくちらついている。
だから、とりあえず、二人の彼女の表にまとめてみた。(まとめるな!)
名前 | 衛生女 | 苺女 |
年齢 | 20代後半 | 22歳 |
職業 | 歯科衛生士 | カフェ店員 |
顔だち | 濃い(ハーフ顔) | 日本風 |
乳 | Eカップ | Aカップ |
住まい | 一人暮らし | 実家暮らし |
女子力 | 低い | 高い |
特徴 |
|
|
こうやって表にしてみると、見た目も性格も全く違う。
どっちも良い女。優柔不断な俺には、とても選ぶことなんてできない。
二股がバレないように・・生きねば。
(オイラの生活はこれからどうなるのだろう・・。とにかく二股がバレないよう立ち回らねば・・。)
バレずにやっていけるのか?スキだらけの俺が?
ウッカリ名前を間違えないか?会う日はどうする?体は一つしかないぞ。
高揚する気持ちとは裏腹に、不安はどんどん湧いてくる。
もし・・もし、バレて刺されたらどうしよう。
いや、このゲス日記のエンディングとしては、それも良いかもしれない。
むしろ、この恋愛日記を呼んでいる人はそれを望んでいるはずだ。
(でも・・生きねば。)
俺はマンションのベランダから夜空を見上げ、缶ビールをぐいっと一気に煽る。
「二股は部屋からバレるぞ!気を付けろ!」
これは、ある先輩の名言である。いまでは星になってしまったけれど。
俺は夜空に光り輝く一番星を見上げると、部屋の掃除を始めるのだった。