キミは若くて可愛くて性格も良くて動けるデブ。
現れたのはかなり立派な体格をした女の子だ。
身長は160弱ぐらいだが、横幅を見ると体重が70?いや80を超えていそうだ。
キャピ子は俗にいうデブというやつである。
せめてもの救いなのが、顔はかなり可愛い部類。もらった写メのままだった。
きっと痩せれば男性からモテモテになるに違いない。
キ「こんばんは。わざわざ千早まで来てもらってすいません。博多とか天神のほうでもよかったんですけど・・。」
おっ!もしや気を使って頂いている?
これは可愛くて性格のいいデブなんじゃなかろうか?
「いやいや、ちょうど行きたい店がこっちのほうだし、たまには知らない場所で呑むのも楽しそうだもんで。」
社交辞令には社交辞令で返すぜ!
「今から行くお店ここからちょっと歩くけど大丈夫かな?(膝とか。)」
キ「全然大丈夫ですー!」
千早駅の周辺には飲食店が少ない。
俺は携帯を手に取り地図を見ながらふらふらと歩く。
この頃はまだスマホも持っておらず、Googleマップにナビってもらうのは鉄板じゃなかった。地図サイトを更新しながらちょっとずつ進んでいくのがスタンダードだ。
(あれ?こっちでええんかな?)
駅から離れて電灯も少なくなってくる。こんなところに飲食店なんてあるんだろうか?
駅から歩くこと15分。
足も疲れて自信もなくなって来た頃に、目的の店を発見する。
ここは舞松原(まいまつばら)という地域だ。
「ごめんねー。たくさん歩かせちゃって・・。疲れたでしょ?」
キ「全然平気ですよ!いつも仕事で動き回ってますし! 」
「そっかドラッグストアで働いてるんだよね?」
キ「はい。化粧品販売がメインだけどお店が忙しいときは重い荷物も運んだりしてますよ。洗剤とかバリ重いんですよ笑」
若くて可愛くて性格も良くて動けるデブ。いいじゃない。
ただ日頃から仕事で動き回っていて太るということは・・「大食い」の可能性がかなり高い。
(財布の中身大丈夫かな・・?)
俺は自らのケツポケットを触って財布の感触を確かめた。
二人が行ったのは舞松原2丁目にある美乃瑠(みのる)という小料理屋さん。
ドアを開けると平日にもかかわらずたくさんの客で賑わっていた。
駅から離れているのに人気があるというのは常連に愛されるいい店ということだろう。
少し強面の大将(名前はみのるじゃない)と若くて元気な女性の店員さんがいる。
カウンターに座ると「キャピ子の横幅」と「俺の横幅」のせいで、パーソナルスペースはほとんど失われた。
もう肩と肩がくっつくような密着度だ。
(な、なんかいい匂い・・。)
彼女のつけている甘いコロンの匂いが俺の鼻をくすぐった。
「最初は・・ビールでいい?」
キ「あの・・私あんまりお酒飲めなくて・・。最初はウーロン茶でもいいですか?」
酒を飲まないだと?その体で下戸だというのか?
注文した刺し盛りや炒りぎんなん、里芋の揚げ出し(絶品)が運ばれてくる。
若い彼女には申し訳ないが完全におっさんチョイスだ。
想像と反して、彼女の食いっぷりも「カレーは飲みもの。ピザはおやつ。」という感じではなく、ゆっくりしている。
俺のほうが酒をガブガブ飲んでガツガツ食っていた。
もしかして遠慮しているのだろうか?
それとも育ちがいいのか? 今日だけ我慢しているのか?
なぜ彼女がここまで太っているのかわからなくなった。
それでも場は盛り上がりを見せていく。あえて狭い空間がよかったのかもしれない。
彼女の性格はとても明るく、俺が何か冗談を言うとコロコロと良く笑った。
時折触れる肩や太ももへのボディタッチ。
あれ?もしかして・・この子すごく可愛い?
近くにいるせいか体型もあまり気にならない。
・・あり?アリなんじゃないの?
どっちかっていうとこんな感じです。
なんの拍子か高校生時代の話になった。
きっかけは「部活なにやってました?」的な流れだったと思う。
「俺は帰宅部でバイトばっかりしてたなぁー男子校だったし。だから童貞こじらせたわ笑」
キ「えーチェリーだったんですか!笑」
「俺は・・・卒業遅かったからね笑」
「えー見たい!YUさん高校時代の写メないんですか?」
「んなもんないよ笑 もう20年近く前だし。」
「キャピ子はないの?高校の時の写メ。」
キ「えー!見たいです?」
とっても気になる!彼女の昔の姿どうだったのか!
「見たい見たい!あるの?」
キ「ふふっ!実はあるんですよー?見ます?」
俺はコクコクと勢いよく頷いた。
キ「じゃあ探しますからちょっと待っててくださいね。」
彼女は携帯を取り出し画面を見つめながらポチポチやりだした。
キ「あった!これです!私の5年前の写真。」
彼女が画面をこちらに向ける。俺はそれを凝視した。
!!!これは!!!
驚くことに昔の彼女は〇〇だったのだ。