次は住吉の居酒屋へ、恐怖のオカマ三人衆
うなぎで腹は膨れたが、いかんせんまだ飲み足りない。
「もうちょっと付き合っていただけるかな?」
魚「いいですよ♪」
芋焼酎でもう少し酔って、勢いをつけて彼女を家に連れ込みたいところだ。
柳川屋のある博多駅前からぶらぶらと二人で歩いて移動する。
稲川淳二が怖い話をしにやってくるという住吉神社(めっちゃ神様祀ってあって結構由緒あります)を越えるとこのあたりは住吉地区。
博多区と中央区の境に位置し、ぎりぎり博多区だ。
「おお!あの居酒屋よさそう。小ぢんまりしてて。」
魚「じゃああそこにしましょ♪」
二人が吸い込まれるように入ったのはカウンターとテーブルが少々の小さな居酒屋さん(今回は都合上名前伏せときます)。10名も入れば満席になりそうな店だ。
「おお!雰囲気いいねえ。」
魚「私もこういうお店落ち着く。」
言葉の端々に「いいこちゃん」臭がする魚女。
店員さん「いらっしゃいませ!お好きなお席どうそ!」
店には先客の3人の男性がいた。結構盛り上がっているようで、少しうるさい。
彼らの隣のテーブルは避けて、俺たちはカウンターに座る。
とりあえずビールときゅうりの漬物、その他つまみになりそうなものを注文した。
再び今日見た映画や魚女の仕事の話を聞きながら、手持ち無沙汰にメニューを見たり。
うん好みの店だ。そして乾杯。
酒も二杯目になり芋焼酎のロックへと切り替える。
アルコールもまわり店の雰囲気に溶け込んでくると、余裕が出たせいか他のお客の声が聞き取れるようになってくる。
それにしてもうるさい奴らだ。
「・・・あんたどこから見てもブスよねえ。」
「なによ!せっかく福岡まで来て言うことないじゃない!」
「もう!お前たちうるさい〜他のお客様に迷惑でしょ〜」
・・・??オネエ言葉だと?
もしかしてオカマ?ゲイ?(とりあえずオカマで統一しておきます)
俺はチラリと後ろを振り返った。
太った中年男が二人。
一人はマツコ・デラックスの男版。もう一人はオタク系の装いだった。
二人の間に挟まるようにスリムでダンディな男が一人。こちらは「東京スカパラダイス」とか「ゴスペラーズ」にいそうな雰囲気だ。イケメンである。
よく使うワクワクなんかでも掲示板を見るとニューハーフや女装っ子はよく見かけるし、同性愛系のジャンルも存在するが手を出していない、そちら側には行ってはいけない気がして避けてきた。
(珍しいこともあるもんだ。)
堂々とオカマ達は大声で談笑している。
何も珍しいことではない。
ここは住吉。裏の顔は「オカマズハッテンバ」なのだ。
マンションが多く、天神や博多駅へのアクセスもいい都心の住宅街という印象だが、同性愛者向けの会員制バーが密かに点在する。(正確には隣の春吉、清川の一部にもあるとか。)
「朝方、ここらへんを通ったらオカマが酔っ払ってそこら辺に寝転がってた。」そう恐怖体験を語るのは住吉に住む仲のいい友人だ。(クリスマスだったか4月4日のオカマの日だったかは忘れた)
その他にもスーパー銭湯で妙な視線を感じまくったとか。
ちなみに俺も昼間には仲良く手をつなぐ男男を見かけたことがある。
一人は痩せ、一人がパワー系のガチムチだった。痩せが「ネコ」でガチが「タチ」なのだろう。
そんな夜の住吉に俺たちはうっかり足を踏み入れていたのである。
魚女も彼らが「そっち系」ということに気がついたらしく好奇心を感じる顔をしている。たぶん聞き耳を立てているのだろう。
(騒がしいけど普通に飲んでいる分には何もなさそうだし・・。)
「ねえねえ」
「ちょっとちょっと!」
「もう〜あんた達やめなさいよ。」
んん?
オカマ「ちょっとちょっと!そこのカップルだよ!」
周りを見渡してもカップルらしい存在は俺たちだけだ。
(もしかして・・俺たち?)
俺はチラリと後ろを伺った。
オカマ「そうそう!お兄さん!あんたよ。」
やばい・・冷や汗が湧き出す。
「ぼ、僕達ですか?」
マツコオカマ「一杯おごるからちょっと話しましょうよ♪」
ダンディオカマ「ちょっと迷惑でしょ〜ねえ?」
「い、いやそんなことは・・。」
マ「私達東京から遊びに来たの。でもこいつらの話退屈でさあ・・。」
オタク系オカマ「ちょっと!」
ダ「失礼ねえ!あんたばっかり喋ってんじゃない。ってことはあんたが退屈なのよ。」
な、なんやこのハイペースなやり取りは・・。
俺たちは住吉という底なし沼に吸い込まれようとしている。