個性じゃすまされない彼女の料理センスに唖然・・!
彼女が家にやってきた。キャベツ丸ごとと栄養ドリンクを持って。
「あっ・・栄養ドリンク?」
筑「うん、YUさん一人暮らしだから栄養偏っていると思って!」
「あ・・ありがと。」
栄養ドリンクで栄養を取るという彼女の発想に若干の「嫌な予感」を覚える。
さて、これから日本を代表するB級グルメ「たこ焼き」を作ります。
たこ焼きというのはとても準備が簡単な食べ物。
スーパーで売っているたこ焼き粉に水と卵を入れてかき混ぜ、キャベツやネギとかもぶち込んで焼くという「ぶっこみ」系の食べ物。
タコの代わりに肉を入れたり、チーズを入れたりと工夫次第で味は無限に広がります。
まずは準備をしながらビールで乾杯。
筑「えへへ・・マイエプロン持ってきちゃいましたよ♪」
おお!ということは家でも料理を嗜んでいるということだろうか?
俺の嫌な予感は杞憂だったようだ。
「じゃあ・・準備任せちゃっていい?」
昭和生まれの男である、料理は女性に作って欲しい。
それにいつもはある程度「自炊」しているのでたまには誰かに甘えたい。
筑「もちろんです!YUさんはテレビでも見てて飲んでてください!」
彼女のハツラツとした自信に安心して、俺は言う通りにした。
「ありがとう。じゃあ何か手伝うことがあったら言ってね!」
あらかじめ、包丁やボウル、材料などを台所の上に準備しておいた不足はないだろう。
俺はTVをつけて、絶好調のホークス戦を見る。発泡酒を傾けながら・・。
台所では包丁の声が聞こえてくる。絵に描いたような幸せな光景だ。
「トン・・トン・・・トトン・・トン」
ナイターの実況の声に交じって、包丁の声が・・・え?トントンの間が長くね?
たこ焼きなのだ。キャベツはみじん切りなのだ。
「ステテティーン!!」くらいの音が聞こえないとおかしい。
少し不安になったものの、可愛い彼女が作ってくれるのだ、ここで男が台所に入るのは「失礼」にあたる。
俺は「おせっかい」な気持ちを押さえつけTVに目をやった。
台所を放置した結果、大変なことに・・
さて、たこ焼き器の準備をしますかね・・。
俺はドンキで買ったたこ焼き器と延長コードを取りにキッチンへと向かった。
ようやく女の城である「台所」へと入る口実ができたのだ。
「そろそろ準備するね!えっとたこ焼き器は・・?」
俺は思春期の息子を持つ母親が部屋に入る時のように若干オーバー気味な声でキッチンへと侵入した。
そして横目でたこ焼きの生地が入っているであろうボウルの中を確認した。
「な、なんじゃこりゃあ!(心の声)」
銀色のボウルの中はなぜか緑色に変色していた。
生地は基本「ホワイト」なはずだ!
「も、もしかしてなんか入れた?」
筑「うん!ちょっと青のり入れてアレンジしちゃった♪(テヘペロ)」
筑紫女は「HUNTERXHUNTER」でいう具現化系だったのだ。
「あの・・青のりって・・後でかけたりするんじゃないの?」
たこ焼き粉の袋の裏に書いてある説明には青のりをぶち込むなんてことは書いていない。
筑「大丈夫ですよ!きっと美味しいですから。」
「きっと」とか「たぶん」などの感覚でアレンジ創作系のタイプは暴走をはじめるのだ。
・・それはみじん切りじゃない
そしてボウルの中にはもう一つのおかしな点があった。
キャベツがみじん切りではなく、ざく切りになって入っている。
※注 たこ焼きの生地です。なぜか写メとってたみたいなんで載せときます。
「ごま油と塩をかけて食うと美味しいよね♪」レベルの大きさだ。
・・NO。
あのいびつな包丁音の答えはこれだったのか・・。
これではたこ焼きがちゃんとした球体になるか不安だ。
しかしキャベツはすでにボウルの中に入っている。再び取り出して細かく切るのは不可能だった。
さらに生地の水分が異常に少ない。おいおい・・お好み焼きじゃねえんだぞ!?
そこはさすがに「取返しが付かない」ので俺はこっそりと水を足した。
「あの・・たこ焼き作ったことあるんだよね?」
筑「大学時代によくみんなでたこ焼きパーティしてましたよ♪」
「そ、そうなんだ・・(お好み焼きじゃなくて?)」
筑「心配しないでくださいよ!絶対美味しいですから!」
この現状を見せられて心配しないほうがおかしい。
実家暮らし女の料理の地雷率の高さよ・・
実家暮らしが長い、もしくは実家から出たことがないという女性はおっとりしていて性格がいい子が多い。筑紫女のように・・。
しかし残念なことに料理下手が多い気がするのだ。(あくまで個人的経験に基づく感想です。)
やはりマッマの料理がオートマチックに出てくるという恵まれすぎた環境が大きいと思われる。
フライパンを持ったり包丁を握る機械が圧倒的に少ないので、素材の切り方や火加減がわからない。そしていろいろ遅い。
豊かになりすぎた現代日本の悪い点だ。
さらに筑紫女のような「アレンジ系」だと毎日がスリル満点だ。
しかし実家暮らしでも料理ができる子も稀に存在する。
実家暮らしなのに料理ができる子は、マッマの家事をしっかり手伝う「いい子でしっかり者」だったりする可能性が高いので、希少価値が高い。
・・百合子は料理が得意なメンヘラだったけど・・。
ということで、メシの事で泣かないために、嫁にするなら「一人暮らしの自炊派」か、「実家暮らしの料理好き」をお勧めします!
「じゃ、じゃあこれ・・焼きますか・・?」
鉄板にティッシュで油を引いて、細かくきったタコを穴に入れていく。そして生地を流し込む。
ジュワアアア!という音とともに香ばしい匂いが広がっていく。
それでも、大きすぎるキャベツは穴の中から歪にはみ出していた。
クルクル・・クルクル・・何度も何度もひっくり返して、なんとかたこ焼きっぽい形に・・。
「よし、焼きあがったよ!」
彼女のおかげで青のりをかける手間は省けた。
筑「うわあ!美味しそう!いただきます!」
アツアツのそれを口の中に放り込む。
「はふはふ・・・・・!!!」
筑「はふはふ・・・・!!!」
「美味しい・・おかしいな?」
筑「青のりが香ばしいですね。」
「キャベツもシャキシャキ感があって・・悪くない。」
意外にもアレンジが効いていてうまい。そしてたこ焼きは失敗しにくい・・ということが分かった。
さて、これを食ったらデザートだ。