30歳になってしまった鹿児島のセフレを祝う。
谷「あたし30歳になったよ!お祝いして!」
口の悪い鹿児島のセフレから連絡が来たのは数日前のことだ。
「女の30歳は全くめでたくないぞ?・・でも一緒に泣いてやることはできる。」
俺も口の悪さでは負けてはいない。歯に衣着せぬ二人の会話は、はたから見ればケンカをしているように見えるかもしれない。
そんな彼女とセフレになって、早いもので5年目。おかげさまで、言葉も体もぶつけ合えるほど、深い仲になってしまった。
これはもう、セフレというより昔ながらの悪友に近い存在だ。
谷「あたしこの日が空いてるから、鹿児島まで祝いに来てよ。」
セフレから「誕生日会」のおねだりだ。しかも、日程まで向こうの都合とは・・なんて図々しいヤツなのだ。
「え?この日しかダメなの?」
谷「その日は大安だから。」
「ねぇ、キミってやっぱりジャイアン生まれ変わり?」
谷「ジャイアンはまだ死んでねえよ。まあまあ、ウチに泊まってっていいから。」
ひょんなことで彼女の30歳の誕生日を祝うことになったわけである。半ば強制的に。
セフレの誕生日を祝うかどうかの判断基準
YUTAROはこれまでに、セフレの誕生日を何度か祝ってきた。親しい関係を継続するなら、誕生日は祝ったほうが捗るからだ。
ただし、誕生日を祝うかどうかの判断基準もある。
- 恋愛対象である。
- 関係を長く続けたい。
この二つはあくまでYUTAROなりの判断基準だが、説明していこう。
①恋愛対象である。
恋愛対象に入るセフレの誕生日は率先して祝っている。
恋愛対象に入るセフレとは、先にエッチは済ませてしまったけれど、好きになっちゃって、いずれは恋人にしたいと思っているセフレである。
こういう相手は、レストランを予約して、プレゼントも用意して、めっちゃ本気を出して祝う。もちろんデート費用は全額負担。
むしろ、誕生日とか関係なしに、さっさと告白にしたほうが、自分の精神衛生上にも良いと思う。
②関係を長く続けたい。
セフレには純粋に「体だけの関係」も多い。まさに谷山子のようなタイプの女性。
- 「性格にはクセがあるけど顔はカワイイ。」
- 「ブスだけど体の相性がめっちゃ良い」
など、恋人にするにはアレだけど、関係続けていきたいと思っているセフレの誕生日も祝っている。
ただし「いつものデートより少し豪華」にする程度。デート費用は全額負担だが、プレゼントは用意しない。
下手に本気で祝ってしまって、お互いに恋愛感情が産まれてしまうと、セフレ期間の短縮にも繋がることもある。だからアッサリ祝う。
どちらにせよ、せっかくセフレを作ることができたのだから、年に一度の誕生日くらいはお祝いしてあげると、人には言えない二人の関係もいい思い出になるだろう。
最初は「都合のいい女」と思っていても、時間が経つと情が移ってくることもあるしね。
・・さて、物語の続きである。
気が付けば5年。長すぎるセフレ関係。
車はようやく谷山子のテリトリー鹿児島に突入する。朝早く福岡を出たのにもう夕方だ。300キロ近い距離は伊達じゃない。
(鹿児島に来るのは何度目だろう。出会った時は確か・・アイツ25歳だったっけ?)
出会い系の旅は鹿児島へ続く。まぶたが開く。俺はそのまま動かずに、しばらく天井を見つめていた。あれほどだるかった体も、嘘のように軽くなっている。 「ヤッター!カゼ治った!」 一時はリタイ[…]
第一印象は、とにかく「奇妙な女」だった。
あのぶっ飛んだ女と、セフレ関係が5年も続くとは・・出会った頃は思いもよらなかった。
しかも30歳の誕生日を一緒に祝うことになるなんて、誰が想像できただろう。
30代になっても精神年齢は上がらない。
(やっと・・天文館に着いた~・・)
鹿児島の中心地「天文館」へ到着したのは午後6時過ぎ。あたりはもう暗くなっている。
遠距離セフレを作ると、お互いの街を行き来することになる。
新鮮味はあるが、鹿児島までわざわざ会いに行くのはかなり大変だ。
俺は有料パーキングに車を停めると、早速彼女に電話をかける。
「いま着いたぞ!過労死寸前で着いたぞ!ちゃんと天文館に来てる?」
谷「もちろん!昼間から買い物してたわ!セブンでコーヒー飲んでるから来て!」
鹿児島弁のイントネーションにも、ずいぶん耳が慣れてしまった。
(※文字では表現しきれないので標準語で書いてます。実際はすごくなまってます。)
「それで、どこのセブンイレブン?」
谷「秘密~探してみて!」
「運転でイライラしてっから、そういうのやめろ!」
谷「ハァ!?つまらん。あたし誕生日なのに。」
「誕生日の免罪符ってすげえな。」
谷「じゃあヒントあげる。天文館通りの洋服の青山の近くです。グーグルマップに導かれて来いや(笑)」
俺は少ないヒントを頼りに、グーグルマップで目星をつける。
この5年間で携帯はガラケーからスマホへと大きな進化を遂げた。5年経っても全く進化しないのは、俺達の精神年齢だった。
見た目だけはキレイなおばさん。
「たぶん・・ここのセブンやな。」
「あはは!ハゲさんこっちこっち!」
聞き覚えのある笑い声。親しみをこめた暴言。
近視の俺が目を凝らしてみると、谷山子が向かいのビルに立っていた。
谷「ようこそ!鹿児島へ!」
「いやあ・・遠かったわ・・。」
谷「久しぶりやね!てか変わらんね。」
実に一年ぶりの再会だ。だけど、彼女の雰囲気がいつもと違う。黒い服装も相まって、妙に大人びて見える。
(コイツ・・こんなにキレイだったっけ?)
30歳になったから?少しセクシーな服を着ているから?
彼女はおばさんと呼ばれる歳になってしまったけれど、その見た目とエロさはバージョンアップしていた。
(・・この胸の高鳴りは何だろう。)
35歳の俺は不整脈を覚えている。
谷「さて・・本日の頭皮チェックです!」
そう言って谷山子は俺の帽子をはぎ取った。いつもこれだ、腹が立つ。
谷「うわぁ・・横からみるとスカりっぷりがヤバいっすね!」
「・・・泣」
谷「ほら!向こうの景色が透けてみえるよ!大根のカツラむきみたい!」
「・・ハゲだけにカツラむきってか。はは・・。」
わざわざ鹿児島まで来て、なぜ、傷つかなければなければならないのか・・。
俺をあざ笑う谷山子の目尻に「小さなシワ」が一本入っていることに気が付く。去年までこんなシワ無かったのに。
「ふふっ!・・30歳おめでとう。キミもお姉さんだね。」
そう言って俺は意味深な笑顔を浮かべる。言葉に皮肉をこめて。
結婚も恋もあきらめたセフレ。
「んで彼氏はできた?」
谷「できない!正確に言うと、彼氏できたけど半年で別れた。・・誕生日の前に逃げられた。」
「あらまァ・・。別れたばかりなのねぇ。」
だから、俺に連絡してきたという事か。
谷「てか、もう恋とか結婚とかあきらめた!」
「おいおい・・落ち着いてくれよ。俺と違ってまだ30歳じゃない?・・オジサンなんてもっと悲惨だぞ?」
谷「いいの!私には仕事とセックスがあれればいい!」
「・・こっちにセックスする相手はおると?」
谷「いない!おかげでアソコにカビが生えておる。」
「・・キミが結婚できない理由が、なんとなくわかった気がする。」
彼女の将来が心配だ。だけど、心にまでカビを生やしちゃいけないよ。
天文館でセフレの誕生日会
二人は鹿児島の中心地「天文館」を練り歩く。ふと味のある小路にさしかかる。
「ねぇ、ここグルメ通りだって。」
谷「美味いものが集う通りってことですかな?」
「んじゃあ、今日はこの通りで店を探しますか?」
グルメ通りの個室居酒屋「膳蔵」へ
俺たちが入ったのは、「膳蔵」という洒落た居酒屋。カウンターもあるが、個室中心の店のようだ。
オイラのセフレは声が大きく失言も多い。だから、個室で誕生日会をしたほうが落ち着いて飲める。
「ビールでいいかね?」
谷「うん。今日は買い物で動き回ってたから、とにかくお腹になにか入れたい。」
「おぅ!キミの誕生日会だから好きなもん食え!めでたく、おばさんの仲間入りしたんだから。」
谷「いいの?よっしゃ!バームカツと、だし巻き卵と、刺し盛りとー。しゃぶしゃぶと地鶏のお造りと、海老マヨとおむすび下さい!あと唐揚げ!」
「は?おまえそんなに食えるの?・・残すなよ。」
谷「任せとけ!もし残したら心置きなくセックスさせまくってあげる!」
(・・心置きなくセックスってなんだ?)
鹿児島飯はボリュームすごすぎた。
乾杯の後、続々と料理がテーブルに並ぶ。
膳蔵名物のバームカツ。ボリュームが半端ない。
鹿児島流のダシで食べるしゃぶしゃぶ(二人前)\(^o^)/イブクロオワタ
鹿児島料理の旨さに俺たちはハイペースで口に運んでいく。しかし、一時間も経たないうちに二人の箸が止まった。・・ゲフッ!
「おいおい!どーした?バームカツさんがまだ残ってらっしゃるぞ?」
谷「ブフー!ブフー!」
「全部・・食べれるんじゃなかったのか?ゲッフッー!」
谷「ハァハァ、なめるなよ?・・ちょいとトイレ。」
「・・吐くんじゃねーぞ。」
彼女は腹をおさえながら立ち上がり、荒い鼻息を俺の頭皮に吹きかける。
そして、お花を摘みにいったまま、二度と帰ってこなかったとさ。めでたしめでたし。
中年になっても下品なままの女。
谷「めでたしじゃねえ~よ。」
しばらくして、彼女がトイレから帰ってくる。
「・・お腹大丈夫かよ?」
谷「ごめん!もう食えません!」
「・・マジかよ。俺も限界だぞ。もったいない。」
谷「それよりさ、トイレから出たらめっちゃ綺麗な人いた!」
「う、うそ?男連れ?」
俺たちのいた個室は、ガラス張りの窓から店の入り口が見える。
窓をのぞいてみると、ちょうど水商売風のキレイな女性が、社会的地位の高そうなオジ様に、エスコートされて店から出て行くところだった。
年齢は谷山子と同じくらい。クラブのチーママだろうか?
「おぉ、めっちゃ美人や!なんつーか、気品と色気が滲み出てますな。」
谷「・・ねぇ、私もあんな女になりたい!」
「いや・・無理やろ。キミも見た目はまあまあ美人だけど、気品のパラメータがマイナスやん。」
谷「うるさい。ハゲるぞ!」
「そういうとこだよ?口も悪いし・・下品だし。クラブのママってより、ヤンママにしか見えない。」
谷「ヤンママの悪口はやめろ。」
「30歳にもなってこれじゃ・・あの女の人みたいになれませんよ?せめてマナー教室に通いな。」
谷「なれるもん!あたしだって頑張ればなれるもん!」
「その語彙力じゃ無理だな。それに世の中、努力ではどうにもならない事があるのです。」
「うるさい!チ〇コ見せろ!」
「・・ち、チ〇コ?なぜ?」
俺は彼女の唐突な切り返しに戸惑いを隠せない。
谷「ほら!見せてみ?ファスナー下ろして見せてみ?」
いじめっ子の発想だ。
「いや・・個室といえども、ここはお店ですし。」
谷「ええい!もどかしい!」
谷山子が掘りごたつに潜り込む。
「ちょ!え?ああぁ!!」
彼女の突飛な行動を文章にするのは難しい。
ボクのセフレは三十歳になっても、変わらず下品なままだ。
結局、最後はセフレの部屋へ。
谷「いやぁ!食った!ご馳走さま!」
「い、い、16240円!?」
一次会のお会計は・・1万6千円を超えてきた。
(・・食い過ぎだよ。)
福岡から鹿児島までの交通費も含めると、かなり痛い出費だ。しかし、谷山子は長い付き合いのセフレで、俺の大切な存在である。
そんな彼女が30歳の節目を迎えたのだ。このくらいのダメージは屁でもない(泣)
二次会はバーに行った。サーフボードが飾ってあるカジュアルなバーだ。
谷「ねぇ、バーテンのお兄さん。あそこのライト切れてるよ?」
バーテン「すいません、いま電球切らしてるんですよ~。」
谷「この人の頭と取り替えてみてよ。良く光るから。ガハハ!」
彼女は俺のハゲをネタにして酒を飲んでいる。バーテンさんは終始苦笑いを浮かべていた。
このえげつない環境に、俺はすっかり慣れていた。・・それが余計に悲しい。
「そろそろ、谷山子の部屋にいこうぜ。」
谷「はぁ?まだ午後10時だよ?」
「なんか眠くなってきた・・。それに飲みすぎると、エッチに支障がでるかも?」
谷「わかった、スグに向かおう。」
誕生日のお祝いよりも、セックスのクオリティを求める。それがオイラのセフレである。